この記事の要点
制振ダンパーとは、建物の構造体に組み込んで振動エネルギーを吸収・消費する装置です。地震や風による揺れを小さくするために使われます。
主にオイルダンパー(速度依存型)と鋼材ダンパー(変位依存型)に大別されます。耐震は「抵抗」、免震は「受け流し」、制振は「エネルギー消費」という点で異なります。
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制振ダンパー(せいしんだんぱー)とは、建物の構造体に組み込んで、地震や風による振動エネルギーを吸収・消費する装置です。
制振ダンパーを用いた建物を制振構造といいます。耐震構造が地震力に「抵抗」し、免震構造が地震動を「受け流す」のに対し、制振構造はダンパーによってエネルギーを「消費」することで揺れを低減します。今回は制振ダンパーの種類・特徴、耐震・免震との違いについて説明します。
免震装置の種類については、下記が参考になります。
免震装置の種類とは?1分でわかる積層ゴム・鉛プラグ・オイルダンパーの違い
制振構造とは、建物にダンパーを設置して振動エネルギーを消費させ、建物の揺れを小さくする構造形式です。耐震構造に制振ダンパーを付加することで、応答変形・応答加速度の低減を図ります。
制振構造の主なメリットは以下の通りです。
①繰り返し地震に対する損傷低減:ダンパーがエネルギーを吸収するため、主構造(柱・梁)への損傷が少なくなります。
②層間変位の低減:ダンパーが変形を抑えるため、内外装材の損傷を防げます。
③居住性の向上:風や小地震による振動をダンパーが吸収するため、日常の揺れが小さくなります。
制振ダンパーは、エネルギーを吸収するメカニズムによって大きく2種類に分類されます。ここの分類は試験で問われやすいので、まず2種類の区別を押さえましょう。
速度依存型ダンパーは、振動速度が大きいほど大きな抵抗力を発揮するダンパーです。小さな変形(振動)にも効果があるため、風や小地震による振動低減にも有効です。
オイルダンパー(粘性流体ダンパー):シリコーンオイルなどの粘性流体をシリンダーに封入したダンパーです。ピストンが動くときに流体の粘性抵抗によりエネルギーを吸収します。温度依存性があるため、設計時に温度影響を考慮する必要があります。
粘弾性ダンパー:粘弾性材料(高分子材料)の変形時のエネルギー吸収を利用したダンパーです。速度依存性と変位依存性の両方を持ちます。温度・周波数によって特性が変化するため、設計上の扱いに注意が必要です。
変位依存型ダンパーは、ある変位(降伏変位)を超えると塑性変形によりエネルギーを吸収するダンパーです。速度には依存せず、変形量に応じてエネルギーを吸収します。
鋼材ダンパー(低降伏点鋼ダンパー):降伏点が低い鋼材(低降伏点鋼)の塑性変形を利用してエネルギーを吸収します。シンプルな構造で信頼性が高く、大地震時に安定したエネルギー吸収能力を発揮します。
鉛ダンパー:鉛の塑性変形によりエネルギーを吸収します。降伏点が低く安定した履歴特性を持ちます。免震装置の鉛プラグと同様の原理です。
摩擦ダンパー:金属板同士の摩擦によりエネルギーを吸収します。コストが低く設置が容易ですが、摩擦係数の安定性を確保する必要があります。
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3つの地震対策の特徴を整理します。
| 比較項目 | 耐震構造 | 免震構造 | 制振構造 |
|---|---|---|---|
| 基本概念 | 地震力に抵抗する | 地震動を建物に伝えない | 振動エネルギーを消費する |
| 主な装置 | (なし) | 積層ゴム・鉛プラグ・すべり支承 | オイルダンパー・鋼材ダンパー |
| 層間変位 | 大きい | 非常に小さい | 中程度(耐震より小さい) |
| 建設コスト | 低い | 高い(免震層が必要) | 中程度 |
| 適用建物 | 全般 | 高層・超高層、重要施設 | 中高層建物、既存建物の補強 |
制振構造は耐震構造と組み合わせて使われることが多く、耐震単独に比べて層間変位や建物の損傷を低減します。免震に比べてコストが低く、既存建物への後付け補強にも適用しやすい点が特徴です。
制振ダンパーは、建物の各層に設置します。一般的な設置形式は以下の通りです。
ブレース型:斜め材(ブレース)としてダンパーを組み込む方法です。層間変形に対して効率よくダンパーが働きます。新築・既存建物の両方に適用できます。
壁型:壁の中にダンパーを組み込む方法です。建物の意匠性を損なわず設置できます。RC造の耐震壁の代替として使われることもあります。
ダンパーは、層間変形が大きくなる層に集中して設置することで効果的にエネルギーを吸収できます。設計では各ダンパーの吸収エネルギー量を確認し、建物全体の応答低減効果を解析します。
制振構造の設計では、ダンパーが発揮する等価粘性減衰定数(h)を増加させることで、建物の応答(層間変位・加速度)を低減することが目的です。
エネルギー法による設計では、入力エネルギーをダンパーが吸収する割合を定め、主架構(柱・梁)の損傷を防ぎます。
設計で確認する主なポイントは、次のような内容です。
①各ダンパーの吸収エネルギーの総和が、地震入力エネルギーに対して十分確保されていること。
②ダンパーの耐久性・変形追従性が確保されていること(繰り返し変形に対する性能保持)。
③ダンパーの取付部(接合部)が、ダンパーの最大耐力を上回る耐力を持つこと。
構造特性係数Dsとの関係は、下記が参考になります。
構造特性係数Dsとは?1分でわかる意味、読み方、計算、Fh・Fd・Fesとの関係
混同しやすい用語
速度依存型 と 変位依存型
速度依存型ダンパー(オイルダンパー・粘弾性ダンパーなど)は、速度に比例した抵抗力を発揮します。微小な振動から効果を発揮するのが特徴です。風などの常時微振動にも対応できます。
変位依存型ダンパー(鋼材ダンパー・鉛ダンパー・摩擦ダンパーなど)は、ある一定の変位(降伏変位)を超えてから効果を発揮します。大地震時のエネルギー吸収に優れます。
「速度依存型=小振動から効く、変位依存型=変形してから効く」と覚えましょう。
制振構造 と 免震構造
制振構造は建物の各層(フレーム内)にダンパーを設置して振動エネルギーを吸収する構造です。
免震構造は建物の基礎部分にアイソレータを設置して地震動そのものを建物に伝わりにくくする構造です。
試験では、制振は耐震フレームと組み合わせてエネルギーを吸収する方式、免震は基礎部で地震動の入力そのものを低減する方式として整理しましょう。コストは一般に免震の方が高くなります。
今回は制振ダンパーについて説明しました。制振ダンパーとは、建物の振動エネルギーを吸収・消費する装置で、オイルダンパー(速度依存型)と鋼材ダンパー(変位依存型)が代表的な種類です。
耐震が「抵抗」、免震が「受け流し」、制振が「エネルギー消費」という考え方の違いを整理して覚えましょう。
免震装置の種類とは?1分でわかる積層ゴム・鉛プラグ・オイルダンパーの違い
構造特性係数Dsとは?1分でわかる意味、読み方、計算、Fh・Fd・Fesとの関係
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験で制振・免震・耐震を問う問題では、「耐震=抵抗、免震=受け流し、制振=エネルギー消費」という3つの考え方の違いが核心です。まずこの整理を頭に入れましょう。
ダンパーの種類については、速度依存型と変位依存型の対応を覚えることが重要です。
・速度依存型:オイルダンパー、粘弾性ダンパー
・変位依存型:鋼材ダンパー(低降伏点鋼)、鉛ダンパー、摩擦ダンパー
「制振は耐震と組み合わせて使われることが多い」という点も重要です。試験では、制振は耐震フレームと組み合わせて振動エネルギーを消費する方式、免震は基礎部で地震動の入力そのものを低減する方式として整理すると覚えやすいです。