建築学生が学ぶ構造力学

建築学生が学ぶ構造力学
  1. HOME > 耐震設計の基礎 > 制振ダンパーとは?1分でわかる種類・特徴・免震との違い

制振ダンパーの種類と仕組み|オイル・鋼材・粘弾性の特徴比較

この記事の要点

制振ダンパーは建物内の特定箇所に組み込んで、地震エネルギーを熱や変形として吸収する装置です。

耐震が建物の剛性で揺れに抵抗するのに対し、制振はエネルギーを消費することで揺れ自体を小さくします。

実際の設計では、オイルダンパーは速度依存型・鋼材ダンパーは変位依存型という特性の違いが重要です。

どちらを選ぶかは建物の固有周期や想定する地震動の特性によって変わり、メーカーに解析を依頼して比較するのが一般的な進め方です。

主にオイルダンパー(速度依存型)と鋼材ダンパー(変位依存型)に大別されます。

耐震は「抵抗」、免震は「受け流し」、制振は「エネルギー消費」という点で異なります。

この記事では、制振ダンパーとは何か、どのような種類があるのか、耐震・免震とどう違うのかを整理します。

【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット


制振ダンパー(せいしんだんぱー)とは、建物の構造体に組み込んで、地震や風による振動エネルギーを吸収・消費する装置です。

制振ダンパーを用いた建物を制振構造といいます。

耐震構造が地震力に「抵抗」し、免震構造が地震動を「受け流す」のに対し、制振構造はダンパーによってエネルギーを「消費」することで揺れを低減します。

今回は制振ダンパーの種類・特徴、耐震・免震との違いについて説明します。


免震装置の種類については、下記が参考になります。

免震装置の種類とは?1分でわかる積層ゴム・鉛プラグ・オイルダンパーの違い

耐震構造とは何か?

制振構造とは何か?

制振構造とは、建物にダンパーを設置して振動エネルギーを消費させ、建物の揺れを小さくする構造形式です。耐震構造に制振ダンパーを付加することで、応答変形・応答加速度の低減を図ります。


制振構造の主なメリットは以下の通りです。


繰り返し地震に対する損傷低減:ダンパーがエネルギーを吸収するため、主構造(柱・梁)への損傷が少なくなります。

層間変位の低減:ダンパーが変形を抑えるため、内外装材の損傷を防げます。

居住性の向上:風や小地震による振動をダンパーが吸収するため、日常の揺れが小さくなります。

制振ダンパーの種類

制振ダンパーは、エネルギーを吸収するメカニズムによって大きく2種類に分類されます。ここの分類は試験で問われやすいので、まず2種類の区別を押さえましょう。

速度依存型ダンパー(粘性型)

速度依存型ダンパーは、振動速度が大きいほど大きな抵抗力を発揮するダンパーです。小さな変形(振動)にも効果があるため、風や小地震による振動低減にも有効です。


オイルダンパー(粘性流体ダンパー):シリコーンオイルなどの粘性流体をシリンダーに封入したダンパーです。ピストンが動くときに流体の粘性抵抗によりエネルギーを吸収します。温度依存性があるため、設計時に温度影響を考慮する必要があります。


粘弾性ダンパー:粘弾性材料(高分子材料)の変形時のエネルギー吸収を利用したダンパーです。速度依存性と変位依存性の両方を持ちます。温度・周波数によって特性が変化するため、設計上の扱いに注意が必要です。

変位依存型ダンパー(履歴型)

変位依存型ダンパーは、ある変位(降伏変位)を超えると塑性変形によりエネルギーを吸収するダンパーです。速度には依存せず、変形量に応じてエネルギーを吸収します。


鋼材ダンパー(低降伏点鋼ダンパー):降伏点が低い鋼材(低降伏点鋼)の塑性変形を利用してエネルギーを吸収します。シンプルな構造で信頼性が高く、大地震時に安定したエネルギー吸収能力を発揮します。


鉛ダンパー:鉛の塑性変形によりエネルギーを吸収します。降伏点が低く安定した履歴特性を持ちます。免震装置の鉛プラグと同様の原理です。


摩擦ダンパー:金属板同士の摩擦によりエネルギーを吸収します。コストが低く設置が容易ですが、摩擦係数の安定性を確保する必要があります。

100円から読める!ネット不要!印刷しても読みやすいPDF記事はこちら⇒ いつでもどこでも読める!広告無し!建築学生が学ぶ構造力学のPDF版の学習記事

耐震・免震・制振の比較

3つの地震対策の特徴を整理します。

比較項目耐震構造免震構造制振構造
基本概念地震力に抵抗する地震動を建物に伝えない振動エネルギーを消費する
主な装置(なし)積層ゴム・鉛プラグ・すべり支承オイルダンパー・鋼材ダンパー
層間変位大きい非常に小さい中程度(耐震より小さい)
建設コスト低い高い(免震層が必要)中程度
適用建物全般高層・超高層、重要施設中高層建物、既存建物の補強

制振構造は耐震構造と組み合わせて使われることが多く、耐震単独に比べて層間変位や建物の損傷を低減します。免震に比べてコストが低く、既存建物への後付け補強にも適用しやすい点が特徴です。

制振ダンパーの設置位置

制振ダンパーは、建物の各層に設置します。一般的な設置形式は以下の通りです。


ブレース型:斜め材(ブレース)としてダンパーを組み込む方法です。層間変形に対して効率よくダンパーが働きます。新築・既存建物の両方に適用できます。


壁型:壁の中にダンパーを組み込む方法です。建物の意匠性を損なわず設置できます。RC造の耐震壁の代替として使われることもあります。


ダンパーは、層間変形が大きくなる層に集中して設置することで効果的にエネルギーを吸収できます。設計では各ダンパーの吸収エネルギー量を確認し、建物全体の応答低減効果を解析します。

制振構造の設計上の考え方

制振構造の設計では、ダンパーが発揮する等価粘性減衰定数(h)を増加させることで、建物の応答(層間変位・加速度)を低減することが目的です。


エネルギー法による設計では、入力エネルギーをダンパーが吸収する割合を定め、主架構(柱・梁)の損傷を防ぎます。


設計で確認する主なポイントは、次のような内容です。


①各ダンパーの吸収エネルギーの総和が、地震入力エネルギーに対して十分確保されていること。

②ダンパーの耐久性・変形追従性が確保されていること(繰り返し変形に対する性能保持)。

③ダンパーの取付部(接合部)が、ダンパーの最大耐力を上回る耐力を持つこと。


構造特性係数Dsとの関係は、下記が参考になります。

構造特性係数Dsとは?1分でわかる意味、読み方、計算、Fh・Fd・Fesとの関係

混同しやすい用語

速度依存型 と 変位依存型
速度依存型ダンパー(オイルダンパー・粘弾性ダンパーなど)は、速度に比例した抵抗力を発揮します。

微小な振動から効果を発揮するのが特徴です。

風などの常時微振動にも対応できます。


変位依存型ダンパー(鋼材ダンパー・鉛ダンパー・摩擦ダンパーなど)は、ある一定の変位(降伏変位)を超えてから効果を発揮します。

大地震時のエネルギー吸収に優れます。


「速度依存型=小振動から効く、変位依存型=変形してから効く」と覚えましょう。

制振構造 と 免震構造
制振構造は建物の各層(フレーム内)にダンパーを設置して振動エネルギーを吸収する構造です。


免震構造は建物の基礎部分にアイソレータを設置して地震動そのものを建物に伝わりにくくする構造です。


試験では、制振は耐震フレームと組み合わせてエネルギーを吸収する方式、免震は基礎部で地震動の入力そのものを低減する方式として整理しましょう。

コストは一般に免震の方が高くなります。

まとめ

今回は制振ダンパーについて説明しました。制振ダンパーとは、建物の振動エネルギーを吸収・消費する装置で、オイルダンパー(速度依存型)と鋼材ダンパー(変位依存型)が代表的な種類です。


耐震が「抵抗」、免震が「受け流し」、制振が「エネルギー消費」という考え方の違いを整理して覚えましょう。

免震装置の種類とは?1分でわかる積層ゴム・鉛プラグ・オイルダンパーの違い

構造特性係数Dsとは?1分でわかる意味、読み方、計算、Fh・Fd・Fesとの関係

耐震構造とは何か?

【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット

理解度チェック

Q.

制振ダンパーとは何ですか?

答えを見る

建物の構造体に組み込んで、地震や風による振動エネルギーを吸収・消費する装置です。耐震が剛性で揺れに抵抗するのに対し、制振はエネルギーを消費して揺れ自体を小さくします。

Q.

速度依存型と変位依存型ダンパーの違いは?

答えを見る

速度依存型(オイル・粘弾性)は速度に比例した抵抗力で微小振動から効き、変位依存型(鋼材・鉛・摩擦)は降伏変位を超えてから塑性変形でエネルギーを吸収し大地震時に優れます。

Q.

耐震・免震・制振の考え方の違いは?

答えを見る

耐震は地震力に「抵抗」、免震は地震動を「受け流す」(建物に伝えない)、制振はダンパーで振動エネルギーを「消費」する点が異なります。

ハナダユキヒロ

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務。2010年より「建築学生が学ぶ構造力学」を運営(16年以上)。著書「わかる構造力学」「わかる構造力学(改訂版)」(工学社)。

建築構造がわかる基礎図解集

【無料】ゼロ所長が解説!建築士試験の構造を効率よく学ぶ

・試験に出るポイントをわかりやすく解説

・今すぐnoteで学ぶ ⇒  ゼロから学ぶ建築士試験の構造

わかる1級建築士の計算問題解説書

計算の流れ、解き方がわかる!1級建築士【構造】計算問題解説集

わかる2級建築士の計算問題解説書!

【30%OFF】一級建築士対策も◎!構造がわかるお得な用語集

建築学生が学ぶ「構造力学」の用語集
pdf版の学習記事

プロフィール

建築の本、紹介します。▼

すぐにわかる構造力学の本

同じカテゴリの記事一覧

Topへ >>

  1. HOME > 耐震設計の基礎 > 制振ダンパーとは?1分でわかる種類・特徴・免震との違い
  2. 1級の過去問(計算)解説
  3. わかる建築構造の用語集・図解集
  4. 1頁10円!PDF版の学習記事