この記事の要点
保有水平耐力の意味と算定の考え方を解説します。
保有水平耐力とは「建物が保有する水平方向の耐力」のことで、必要保有水平耐力と比較して建物の安全性を確認します。
※保有水平耐力は建築基準法施行令第82条の3で確認が定められています。法令上の扱いは下記が参考になります。
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保有水平耐力は、建物の安全性を表す値の1つです。今回は保有水平耐力について説明します。
似た用語に、必要保有水平耐力があります。下記が参考になります。
必要保有水平耐力とは?算定式Qun=Ds×Fes×Qud・Ds・Fesの意味
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日本の構造設計は、2段階の計算を行っています。1つは許容応力度計算(1次設計)と呼ばれる、部材の許容応力度に対してOKかNGか確認する作業です。
許容応力度計算 意味 外力 応力度 安全率 構造設計 一次設計
もう1つは保有耐力計算(2次設計)といって、大地震時の水平力に対して、柱や梁の曲げ降伏、せん断破壊を確認し、建物の「保有する耐力」と、「必要とされる耐力」を比較し、保有する耐力が上回っていることを確認します。
※必要とされる耐力は、必要保有水平耐力といいます。必要保有水平耐力は、下記が参考になります。
必要保有水平耐力とは?算定式Qun=Ds×Fes×Qud・Ds・Fesの意味
保有水平耐力とは、前述した「建物が保有する耐力」を意味します。例えば、あなたが住んでいるマンションの必要保有水平耐力が5000kNだとします。このとき、保有水平耐力は5000kN以上でないと、建物は安全とは言えません。よって、
という関係が成り立ちます。
構造計算では、上記を、
として算定し、Qu/Qunが1.00以上であることを確認します。
では、どうやって建物の保有する耐力を求めるのでしょうか。これは裏を返せば、「建物は、どこまで力を作用させれば壊れるのか?」に等しい疑問です。
建物の壊れ方で一番好ましくないのは、『せん断破壊』です。
なぜなら、せん断破壊は『急にグシャッ!』と壊れてしまいます。
100あった耐力が急に0になることをイメージしてください。
一方、曲げ破壊は、どちらかと言えば、じわじわと『ヒンジ』と呼ばれる回転機構を形成して、水平力を保持できなくなります。
※せん断破壊、ヒンジは下記が参考になります。
塑性ヒンジってなに?1分でわかる塑性ヒンジの意味と、建物の靱性
この壊れ方を確認するために、水平力を細かく刻んで、どの部材が先に『降伏』するのか確認します。あるいはせん断破壊を確認します。『せん断破壊』は許されない破壊モードですから、せん断破壊が起きた時点で、その建物は『崩壊した』と考えます。
また、せん断破壊を起こさず、部材に曲げ破壊が起き続けると、部材は水平力は負担せずに、変形だけが進みます。
部材のほとんどにヒンジが発生して変形が進みます。
建物が変形しすぎるのは危険です。
そこで、保有水平耐力を決めるとき、層間変形角を規定することで耐力を決めるのです。
※層間変形角は下記が参考になります。
このとき、柱と梁には応力が作用しています。柱に着目すると、『せん断力』が作用していますね。このせん断力を集計すると、建物全体に作用した水平力が求められます。これが、『保有水平耐力』です。
※建物の壊れ方や、崩壊形に関しては下記も参考になります。
崩壊形とは?全体崩壊形・部分崩壊形の判定方法と塑性ヒンジ形成の違い
混同しやすい用語
保有水平耐力と必要保有水平耐力
保有水平耐力は建物が実際に持っている水平方向の耐力です。
必要保有水平耐力は地震に対して必要とされる最低限の耐力で、保有水平耐力が必要保有水平耐力を上回ることを確認します。
一次設計と二次設計
一次設計は中小規模の地震に対して建物が損傷しないことを確認する設計です。
二次設計は大規模地震に対して建物が倒壊しないことを確認する設計で、保有水平耐力の算定はこの二次設計で行います。
保有水平耐力を整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 保有水平耐力Qu | 建物が保有する水平方向の耐力 | 二次設計で算定 |
| 必要保有水平耐力Qun | 大地震時に必要な最低限の耐力 | 建築基準法に基づく |
| 判定条件 | Qu/Qun≧1.00 | 上回れば安全 |
今回は保有水平耐力について説明しました。
保有水平耐力の意味は簡単、「建物が保有する耐力」です。
重要なのは、その耐力を算定する方法と考え方ですね。
建物の耐力を決めるために、建物の壊れ方を決めているのだ、と理解しましょう。
下記も参考にしてくださいね。
一次設計とは?1分でわかる意味、震度との関係、二次設計との違い
二次設計とは?一次設計との違い・対象建物の条件と保有水平耐力計算の流れ
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保有水平耐力とは何か、必要保有水平耐力との関係とともに説明してください。
保有水平耐力Quは建物が実際に保有する水平方向の耐力です。大地震時に必要とされる必要保有水平耐力Qunを上回ること(Qu>Qun、Qu/Qun≧1.00)を確認します(根拠:建築基準法施行令第82条の3)。
日本の構造設計の2段階の計算を説明してください。
1段階目は許容応力度計算(1次設計)で、部材の許容応力度に対してOKかを確認します。2段階目は保有耐力計算(2次設計)で、大地震時の水平力に対し柱・梁の曲げ降伏・せん断破壊を確認し、保有する耐力が必要な耐力を上回ることを確認します。
建物の壊れ方でせん断破壊が好ましくない理由を説明してください。
せん断破壊は「急にグシャッ」と壊れ、100あった耐力が急に0になるためです。一方、曲げ破壊はじわじわとヒンジ(回転機構)を形成して徐々に水平力を保持できなくなります。せん断破壊は許されない破壊モードで、起きた時点でその建物は崩壊したと考えます。
