この記事の要点
断面二次モーメント(I)は、部材断面の形による「曲げにくさ」を表す値(断面性能)です。長方形断面では I=bh3/12、円形断面では I=πd4/64 の公式で計算します。
Iの値が大きいほど部材は曲げにくく、たわみが小さくなります。断面係数との違いや、図心を通らない軸に対する断面二次モーメント(平行軸の定理)も構造設計では重要な概念です。
断面二次モーメントとは何か、公式・求め方・たわみとの関係を整理します。図を見ながら、断面の形で曲げにくさが変わる理由を確認しましょう。
断面二次モーメントは、部材断面の形による「曲げにくさ」を表す値です。同じ材料でも、断面の形や向きが変わると、曲げにくさは大きく変わります。

同じ材料でも、断面の形や向きが変わると、曲げにくさは大きく変わります。
ここで大事なのは、断面二次モーメントそのものは材料の種類ではなく、断面形状で決まる値だという点です。なお、実際の曲げにくさは、ヤング係数Eと断面二次モーメントIを掛けた曲げ剛性EIで考えます。
断面二次モーメントを感覚的に理解するには、「断面積が中立軸からどれだけ離れているか」を見ると分かりやすいです。同じ断面積でも、中立軸の近くに集まっている断面より、中立軸から遠い位置に断面積がある形の方が、断面二次モーメントは大きくなります。

同じ断面積でも、中立軸から遠い位置に断面積がある形の方が、断面二次モーメントは大きくなります。
H形鋼のフランジが上下に離れて配置されているのも、この考え方と関係します。今回は、断面二次モーメントの意味、公式、H形鋼、たわみとの関係について説明します。
断面二次モーメントと似た用語の断面係数の意味、たわみの計算は下記が参考になります。
たわみ(撓み)とは?意味・求め方・公式・単位・記号をわかりやすく解説
断面二次モーメントとたわみの関係は?計算式・剛性・座屈荷重との関係
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断面二次モーメントは、部材断面の形による曲げにくさを表す値です。
部材の曲げにくさは、材料そのものの固さと、断面の形の両方で変わります。たとえば、同じ材料でも、薄い板を横に寝かせた場合と、縦に立てた場合では曲げにくさが変わります。

同じ材料でも、断面の形や向きが変わると、曲げにくさは大きく変わります。
専門的にいうと、曲げにくさには下記の値が関係します。
・ヤング係数(材料そのものの固さ。ゴムや木、鉄ごとに値が変わる)
・断面二次モーメント(部材断面の形による固さの違い。正方形とH形では固さが変わる)
ヤング係数の意味は、下記が参考になります。
ヤング係数(弾性係数)とは?求め方と公式、単位、材料ごとの値【図解】
断面二次モーメントと近い値に、断面係数があります。断面係数については、断面係数とは何か?で説明しています。
断面二次モーメントの考え方は、簡単にいうと「断面積に、中立軸からの距離の2乗を掛けて足し合わせる」ことです。なお、距離は「中立軸から断面図心までの長さ」です
単純な計算式なので、建築士試験のように時間が足りない、時間が短い場面で使い勝手が良いでしょう


断面二次モーメントは、断面積が中立軸からどれだけ離れているかを表す値です。
ただし、断面二次モーメントの厳密な定義(後述します)としては断面を細かく分け、それぞれの面積に中立軸からの距離の2乗を掛けて足し合わせます(積分をする)。
よって、定義式は I = ∫y2dA で表します。
上記の計算方法が通用するのは、あくまでも単純な形の断面に限ります。
一般的に使う断面二次モーメントの公式を下記に整理します。
| 断面形状 | 断面二次モーメント | 記号の意味 |
|---|---|---|
| 長方形 | I = bh3/12 | b:幅、h:高さ |
| 円形 | I = πd4/64 | d:直径 |
| 円筒形 | I = π(D4−d14)/64 | D:外径、d1:内径 |
bは長方形の幅、hは高さです。Dは円形・円筒形の外径、d1は円筒形の内法寸法です。※外径、内法寸法の意味は、下記が参考になります。
断面二次モーメントの公式は、下記も参考にしてください。
この公式のなかでも、とくに「長方形断面の公式:I = bh3/12」は、建築士試験や高専・大学の授業でよく使うので覚えておくとよいでしょう。
ポイントは、高さhが3乗になっている点です。つまり、高さhが大きい方が、断面二次モーメントIが大きくなりやすいんですね。

長方形断面の断面二次モーメントは、幅bと高さhを使って I=bh3/12 で計算します。
しかも、3乗で掛かってくるので、幅を大きくするのと、高さを大きくするのでは「高さhを大きくする方が圧倒的に効果的」ということです。
単純な話ですが、この考え方は構造設計の実務でもよく用います。

同じ材料でも、断面の形や向きが変わると、曲げにくさは大きく変わります。
たとえば、幅を固定にして高さhを変化させた長方形断面の断面二次モーメントを求めます。
| 幅 b | 高さ h | 計算式 | 断面二次モーメント I | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 30cm | 10cm | I = 30×103/12 | 2,500cm4 | 高さが小さいため、Iも小さい |
| 30cm | 20cm | I = 30×203/12 | 20,000cm4 | 高さが2倍になると、Iは8倍になる |
| 30cm | 30cm | I = 30×303/12 | 67,500cm4 | 高さが3倍になると、Iは27倍になる |
すると高さ3倍にするだけで、断面二次モーメントは「なんと27倍も大きくなる」んですね。
中立軸とは、部材に曲げモーメントが作用したときに、伸びも縮みもしない位置を通る軸のことです。

中立軸は、曲げを受けた部材の中で伸びも縮みもしない位置を通る軸です。
梁に上から荷重がかかると、断面の上側は圧縮され、下側は引張られます。その中間に、圧縮も引張も生じない位置があります。この位置を通る線が中立軸です。
断面二次モーメントを考えるときは、この中立軸から断面積までの距離が重要になります。中立軸から遠い位置に断面積があるほど、断面二次モーメントは大きくなります。
H形鋼では、上下のフランジが中立軸から離れた位置にあります。よって冒頭お話ししたように、同じ断面積でも効率よく断面二次モーメントを大きくできます。

同じ材料でも、断面の形や向きが変わると、曲げにくさは大きく変わります。
中立軸の詳細は下記の記事が参考になります。
中立軸とは?1分でわかる意味、定義、コンクリートの中立軸、合成梁
長方形の図心は、断面のちょうど真ん中にあります。
幅をb、高さをhとすると、図心の位置は、幅方向でb/2、高さ方向でh/2です。

長方形の図心は、幅方向で b/2、高さ方向で h/2 の位置、つまり断面のちょうど真ん中にあります。
つまり、長方形では「中心に図心がある」と考えれば大丈夫です。
断面二次モーメントの公式 I = bh3/12 は、この図心を通る軸まわりで計算する公式です。
建築士試験では長方形の図心(=長方形の真ん中)を覚えておけば十分です。
ただし、断面形状が複雑になったり、任意の断面形状になると、単純に図形の真ん中が図心とは限りません。
図心のより詳しい話は下記をご覧ください。
断面二次モーメントは、曲げにくさ(曲げる力に対する変形)を判断するのに役立ちます。
実際、構造設計の実務では、梁や部材のたわみ・変形が大きいときは、断面二次モーメントを大きくして対応することもあります。
また部材の剛性(かたさ)を計算するとき、振の動特性・座屈などあらゆる場面で活躍します。
「たわみの計算」では断面二次モーメントが必要不可欠です。下式のように、たわみの公式の分母に断面二次モーメントが入っています。

たわみの公式では、分母に断面二次モーメントIが入ります。
よって、断面二次モーメントが大きいほど、分母は大きくなり、たわみは小さくなるのです。
たわみの計算は下記が参考になります。
断面二次モーメントとたわみの関係は?計算式・剛性・座屈荷重との関係
たわみ(撓み)とは?意味・求め方・公式・単位・記号をわかりやすく解説
剛性の意味は下記をご覧ください。
剛性とは?変形しにくさの意味・強度との違い・計算式・単位を解説
構造設計の実務で、梁によく使う断面は、H形断面(アルファベットのHを横に向けた断面)です。

構造設計の実務では、H形鋼のように断面性能を効率よく確保できる形がよく使われます。
これはなぜかというと、
からです。
勘違いされやすいですが、H形断面が必ずしも「荷重に最も強いというわけではありません」のでご注意ください。
断面二次モーメントの大きさだけで比較すれば、長方形断面の方が有利です。しかし、より軽量かつ自重も小さくできるH形断面の方が、構造設計ではメリットが大きいのです。

断面二次モーメントだけで比較すると長方形断面が有利ですが、軽量で自重を小さくできるH形断面は、構造設計で大きなメリットがあります。
ちなみに、H形断面は上からの荷重に対して上図の向きで使いますが、風などの横向きの力に対しては、H形断面も横方向に向けて使います。
柱によく使う断面は角型断面です。中空になっている正方形の断面です。
なぜ中空になっているかは、H形断面と理由が似ていて、中空にする方が断面積を減らして軽量化しつつ、断面二次モーメントが大きいままだからです。

角型断面は、X方向・Y方向のどちらから力が作用しても同じように強い断面です。
角型断面はX・Y方向の、どちらから力が作用しても同じように強い(断面二次モーメントが変わらない)断面です。
日本は地震国なので、X・Y方向(あらゆる方向)から地震が作用することを想定しますので、角型断面のように、方向によって断面二次モーメントが変わらない部材が好都合です。
まず初めに、断面二次モーメントの定義から公式を導出します。いきなり公式を覚えるのも良いですが、導出方法を理解することで公式の暗記が不要になります。
断面二次モーメントの定義は、
同様にy軸に関する断面二次モーメントは
よって、図のような長方形のx軸に関する断面二次モーメントは、
です。
次節で学ぶ曲げ応力度を計算するときなどは、部材図心軸に関する断面二次モーメントが重要ですから、図心に関するx軸の断面二次モーメントをIuとすれば、
となります。図心に関するx軸の断面二次モーメントを求めるので、積分範囲は0~b/2です。また、図心x軸に対して対称ですから半分の部材に関して断面二次モーメントを求めれば、その値に2を乗じたものが図心に関するx軸の断面二次モーメントIuです。
図心の意味、断面二次モーメントとの関係は下記をご覧ください。
断面二次モーメントと図心の関係は?計算と図心を通らない断面二次モーメントの求め方
さて、もう少し一般的な問題について断面二次モーメントを考えてみましょう。次のような任意の物体についての断面二次モーメントを求めます。まず、原点Oとその座標軸xyを考え、さらに、その座標軸がuvだけ平行移動した場合を考えます。
このように、ある任意の物体についてのx軸に関する断面二次モーメントは、定義式から
で、元の座標軸と変化した座標軸の関係から、
と変形することができますね。同様に、y軸に関しても計算すると、
となります。さらに、新しい座標軸を図心を原点(xo,yo)にもつ座標軸とした場合、以上に示した式
となるので、
ですね。以上に示した式は、任意の座標(u,v)に関する断面二次モーメントを求める際に良く用いられる式です。この式も重要ですので、導出方法を理解し、式は暗記してもいいくらいですね。
材料力学の中で、とても重要な概念の1つが「断面二次モーメント」です。
次章では、実際に断面二次モーメントの計算を行ってさらに、理解しましょう。
これまでは、定義式だけの勉強を行ってきましたが、本来は簡便な計算法を用います。
その方法で断面二次モーメントを計算し問題に慣れましょう。
先ほど軸から任意の位置にある図形の断面二次モーメントを求めました。この式は一体いつ使うのでしょうか?
実は、かなり使用する場面があります。例えば、H型鋼の断面二次モーメントを算定する場合を紹介します。
H形鋼、トラスの意味は下記が参考になります。
トラス構造とは?強さの理由・メリット・デメリット・計算法を解説
H型断面は下図のように、中立軸が断面の中央にあります。
このとき、オレンジ色部分(ウェブといいます)は中立軸に対して丁度真ん中に位置していますので、このIは
I=bh3/12=5.5×(92*2)3/12=2855189
次に、青部分(フランジといいます)のIを求めます。フランジは中立軸に対して離れた位置にあります。つまり、先ほど勉強した「軸から任意の位置にある図形のIの求め方」が活きてくるわけです。
もう一度、その公式をおさらいすると、
でした。つまり、フランジ部分のIを片側だけ計算すると、
これは片側のフランジのIなので、2倍します。
です。よって、ウェブとフランジ部分のIを足し合わせてH型断面のIとなります。結果は、
I=14754132+2855189=17609321 mm4
cm4の単位に直すと、
I=1760 cm4
です。
実は、このH型は構造設計の実務でも良く用いる部材の1つ。H-200x100x5.5x8というH型鋼でした。本当はR部分があって、断面がもう少し大きいことから、公称のIは1810と決まっています。
今回の計算結果とほぼ同じなので、計算結果が正しいことも確認できました。H形鋼の意味、断面二次モーメントは、下記が参考になります。
h形鋼断面の断面二次モーメントは?5分でわかる求め方、弱軸と強軸の違い、一覧
下図のようなトラス梁があります(断面図)。上下弦材にH型鋼を用いており、間をつなぐ部材をチャンネル材としました。このトラス材が合理的か否かはひとまず置いといて。
トラス梁のIを求める方法も、先ほどの方法を用いれば簡単です。さて、トラス梁Iは繋ぎ材は考慮しませんから、上下弦材のみのIを求めます。
なので、H型鋼 H-200x100x5.5x8単体のIは1810cm4です。Aは8x100x2+5.5x96x2=2656m㎡。yは、1000/2=500mmです。
となりました。
いかがでしょうか?いかにトラス梁の断面性能が大きいか理解して頂けたと思います。実務でもトラス梁のIは、上記の計算で求めています。
トラスの意味は、下記が参考になります。
トラス構造とは?強さの理由・メリット・デメリット・計算法を解説
実はRC梁のIも簡単に求めることが可能です。中立軸から離れた位置にある鉄筋のIを考慮するだけです。
詳しくは当HPの「RC梁の鉄筋を考慮した断面二次モーメントの算定方法について」をご確認ください。
混同しやすい用語
断面二次モーメント(I)vs 断面係数(Z)
断面二次モーメントI(単位:mm4)は部材の曲げ剛性・たわみ計算に使う。
断面係数Z=I/e(単位:mm3、eは中立軸から外縁までの距離)は曲げ応力度の計算に使う。
両者は用途が異なるため混同しやすい。
長方形断面の公式:bh3/12 vs bh3/3
bh3/12は図心軸(中立軸)回りの断面二次モーメント。
bh3/3は底辺軸回りの断面二次モーメント。
平行軸の定理(I = I0 + Ay2)を使って導出される。
試験では図心軸まわりが基本なのでbh3/12を使う。
剛性 vs 強度
剛性(EI)は変形しにくさを表し、たわみや振動特性に影響する。
強度は部材が破壊・降伏に至るまでの耐力。
剛性が高くても強度が低ければ脆性的に破壊する場合がある。
| 断面形状 | 断面二次モーメント(Ix) | ポイント |
|---|---|---|
| 長方形(幅b×高さh) | I = bh3/12 | 高さの3乗に比例 |
| 中空長方形 | I = (BH3 - bh3)/12 | 外形 - 空洞の差 |
| H形鋼(近似) | フランジと ウェブの各Iの合計 | フランジが支配的 |
今回は断面二次モーメントについて説明しました。意味が理解頂けたと思います。断面二次モーメントは、部材断面の形による曲げにくさを表す値です。たわみの計算で必要不可欠です。似た用語である断面係数との違いも理解しましょうね。下記も併せて学習しましょう。
断面二次モーメントの導出方法は?公式の意味と慣性モーメントとの関係
断面二次モーメントと図心の関係は?計算と図心を通らない断面二次モーメントの求め方
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
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この記事で学んだ内容は、無料の○×問題集でも確認できます。
意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
断面二次モーメントは建築士試験・施工管理技士試験の構造力学で頻繁に登場する。(建築士試験 頻出:I=bh³/12・I=πd⁴/64の公式からたわみδ=PL³/(48EI)を求める問題が繰り返し出題)
試験では「たわみの式δ=PL3/(48EI)を使ってたわみを求めよ」という形でIの値が必要となる問題が多い。
基本公式(長方形:bh3/12、円:πd4/64)は必ず暗記しよう。
断面係数(Z=I/e)との使い分けと、H形鋼のIの計算方法も構造設計では重要。
用語集・図解集で断面形状と公式をセットで視覚的に覚えると効果的だ。