この記事の要点
トラス構造とは部材を三角形に組み、節点をピン接合にした構造で、曲げモーメントやせん断力が概ねゼロとなるため部材が軸力(圧縮・引張)のみで設計できる。
大スパンを軽量・合理的に実現できるのがメリットで、体育館・ドーム・橋などに用いられるが、施工が複雑で費用が高くなりやすいのがデメリット。
この記事では、トラス構造とは何か、強さの理由はどこにあるのか、メリット・デメリットと計算法はどのようなものかを整理します。
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トラス構造とは、部材を三角形になるように組んだ構造物です。部材の接合部(節点)は"ピン接合(自由に回転できる接合)"とします。
つまり、下記の2点がトラス構造の大きな特徴です。
なお、"自由に回転できる"とは、「節点の曲げモーメントはゼロになる」ことを意味します。
トラス部材では曲げモーメント、せん断力が概ねゼロとなるため、トラス部材は圧縮力または引張力(軸力)のみに対して設計を行います。
部材は曲げモーメントやせん断力に弱いですが、圧縮力や引張力(とくに引張力)に対して強いです。
よって、トラス構造は、主に大スパン構造(体育館やドーム、橋)などに利用される構造形式の1つです。
下図をみてください。これはトラス構造を利用した橋です。このように部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式が「トラス構造」です。
(写真元:写真素材 足成さんから引用)
今回はトラス構造の仕組み、メリット、デメリット、計算法、トラス構造の種類について説明します。
また、トラス構造とラーメン構造の違いを説明します。ラーメン構造の詳細は、下記が参考になります。
ラーメン構造とは?1分でわかる意味、特徴、由来、メリットとデメリット
トラス構造は部材を三角形に組んだ構造です。さらに、部材の接合部(節点)はピン接合(自由に回転できる構造)とします。
"自由に回転できる"とは、「節点の曲げモーメントはゼロになる」ことを意味します。
トラス部材では曲げモーメント、せん断力が概ねゼロなので、トラス部材は圧縮力または引張力(軸力)のみに対して設計を行います。
なお、ピン接合にする具体的な方法は
です。
トラス構造は、なぜ強いのでしょうか?
それは
しています。前述したようにトラス構造の大きな特徴は
です。トラス構造の節点はピン接合なので、トラス部材では
です。
さらに、トラス構造は部材を三角形に組んでいるため、部材には余計な力や変形が作用せずに
となります。部材は曲げモーメントやせん断力に弱いですが、圧縮力や引張力(とくに引張力)に対して強く、要するに
です。
試しに、紙で三角形と四角形を作ってみください。指で押してみると、四角形は簡単に変形します。一方、三角形は堅いはずです。
この性質を利用したのが、トラス構造です。
これは前述した曲げモーメントが関係します。
前述したように、部材は曲げモーメントやせん断力に弱いですが、圧縮力や引張力(とくに引張力)に対して強いです。
よって、曲げモーメント、せん断力の発生しないトラス構造は「大きな力に耐えられる構造」で、トラス構造は大空間構造(体育館やドーム)や、長い橋梁に利用されます。
例えば名古屋ドームの屋根はトラス構造です。※トラス構造は、様々な橋に利用されます。
橋の構造とは?12種類の名称・特徴・強度と建築ラーメン構造・トラス構造との関係
トラス構造の橋とは|なぜ強いのか、種類と構造計算をわかりやすく解説
下図に示す京都駅アトリウムは原広司さん+アトリエファイ建築研究所の意匠設計で、構造設計は 木村俊彦さんと金箱構造設計事務所による設計です。
軽快でスレンダ―なトラス構造ですよね。
(写真元:写真素材 足成さんから引用)
トラス構造の特徴を、下記に整理しました。覚えておきましょう。
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部材(柱と梁)の接合部が回転しないようガッチリかためた(剛接合した)構造を「ラーメン構造」といいます。
一般に、四角形は安定性に欠ける構造です。下図のように水平力が作用すると、四角形は平行四辺形のように変形します。
そこで柱と梁の接合部を剛接合して「ガッチリ固める」のです。ガッチリかためると接合部は自由に回転できないので、力が作用しても変形は小さく済みます。
柱と梁を剛接合することで柱と梁を一体化すれば、地震が来ても柱と梁が一体として抵抗するので強くなります。
普通、四角形は弱い形ですが、上記の工夫(剛接合)をすることで立派な耐震構造となります。
ラーメン構造は空間を広く取れる(斜材が無い)ので、現在、ほとんどの建物に採用されています。
ただし、接合部が自由に回転できない分、部材には曲げモーメント(曲げる力)やせん断力(ずらす力)が作用します。
前述したように、部材は曲げモーメントやせん断力に弱いので、ラーメン構造の場合、曲げモーメントやせん断力に耐えられる部材断面(部材の大きさ)が必要です。よって、トラス構造とラーメン構造では
という違いがあります。またラーメン構造については下記が参考になります。
ラーメン構造とは?1分でわかる意味、特徴、由来、メリットとデメリット
以上、ラーメン構造の特徴は下記の通りです。
トラス構造のメリットを考えます。トラスは部材の接合部をピン接合にします。
且つ、三角形の形状であるため、部材には軸力しか発生しません。軸力の意味は、下記が参考になります。
軸方向力とは?1分でわかる意味、読み方、軸力との違い、求め方、圧縮
例えば四角形に力を作用させます。すると、四角形は力を受けて曲がってしまいます。
一方、三角形は力に対して「曲がる」ではなく、「縮む」又は「伸びる」ような変形をします。
「曲がる」という変形が起きる部材には、曲げモーメントが作用しています。しかし、「縮む、伸びる」変形には軸力しか作用していません。
同じ大きさの部材でも、曲げモーメントが作用する部材と、軸力のみ作用する部材では、後者が圧倒的に有利です。
つまり、軸力のみ作用する部材は効率的な断面が選定できます(部材を小さくできる)。
以上、トラス構造のメリットを下記に示します。
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トラス構造はメリットの大きな形式ですが、下記のデメリットもあります。
・施工が面倒
・トラス架構としての「せい」が大きい
1つは施工が面倒と言う点です。トラス構造は、上弦材、下弦材、束材、斜材という部材が必要です。部材が交錯する点は、どうしても接合部が複雑になりがちです。
2つめは、トラス架構としての梁せいが大きい点です。下図をみてください。トラス構造は、各部材に作用する応力は小さいのですが、その分、高さを大きくします。
一般的な構造物では、階高に制約があるためトラス構造は採用できないのです。
トラス構造のデメリットは?|施工費用・複雑さと有名建築物の事例
ではトラス構造に作用する部材力(応力)は、どのように計算するのでしょうか。計算方法は、下記のように2つあります。
それぞれ下記が参考になります。是非、勉強に役立ててくださいね。
断面法とは?リッター法・クルマン法の計算手順と節点法との違い(例題付き)
クルマン法とは|リッター法との違いとトラスの部材力計算の手順を解説
トラスの部材力を素早く判定する方法|節点法と断面法の使い分け
さて今回は、節点法を使って下図のトラスに作用する部材力を計算します。※とても簡単なトラスについて解きます。
少し複雑な形状や、詳細な解き方は上記の記事を参考にしてください。
まず反力を計算します。外力は下向きにPなので、反力Rは下記です。
斜材の部材力をN1、水平材の部材力をN2とします。節点法は、節点周りの外力と応力の釣り合いから未知数を解く方法です(外力=応力になる関係)。
また部材力は「引張力として作用している」と仮定します。別に圧縮力として仮定しても良いのですが、一応そういう慣習です。
つまり引張力が作用する部材は「正の値」、圧縮力が働く部材は「負の値」です。
N1を鉛直、水平成分に分けます。正三角形なので1:2:√3の関係より鉛直成分は、
次に水平材の部材力N2を計算します。水平方向に外力は作用していません。よって、N1との釣り合いを考えます。
です。以上のように、斜材は圧縮力が、水平材には引張力が「圧縮力の半分だけ」作用します。部材に曲げモーメントが一切作用しませんね。
「トラス」は、三角形の組み方により沢山の種類に分けられます。最も一般的なトラス構造が、ワーレントラスです。下図に示します。
ワーレントラスとは?鉛直材なしの特徴・軸力計算・プラットトラスとの違い
トラスの種類が良く分かる構造物が、トラス橋です。建築物は、天井や壁に隠されて構造材が見えません。
トラス橋は、構造部材がそのままトラス構造を表現するので一目瞭然です。詳細は下記が参考になります。
トラス構造の橋とは|なぜ強いのか、種類と構造計算をわかりやすく解説
下図は、プラットトラス構造です。
プラットトラスとは?1分でわかる意味、特徴、計算、ハウトラスとの違い
混同しやすい用語
トラス構造
部材を三角形に組み、節点をピン接合にした構造形式。
部材には軸力(圧縮・引張)のみが発生し、曲げモーメントやせん断力は概ねゼロになる。
ラーメン構造は節点を剛接合にするため梁・柱に曲げモーメントが発生する。
トラス構造は節点がピン接合で「軸力のみ」という点がラーメン構造と根本的に異なる。
ラーメン構造
柱と梁を剛接合(溶接・モノリシック)でつないだ構造形式で、曲げモーメントやせん断力を部材全体で負担する。
住宅・マンション・ビルに広く採用。
トラス構造が「三角形+ピン接合+軸力のみ」であるのに対し、ラーメン構造は「矩形フレーム+剛接合+曲げ・せん断も負担」という点で設計思想が異なる。
トラス構造を整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 構造の特徴 | 部材を三角形に組み、節点をピン接合にした構造形式 | 部材には軸力(圧縮・引張)のみが発生 |
| メリット | 大スパンを軽量・合理的に実現できる | 体育館・ドーム・橋などに採用 |
| デメリット | 節点(接合部)の数が多く施工が複雑で費用が高くなりやすい | ラーメン構造と比べて工期が長い場合がある |
今回は、トラス構造の特徴や利点について説明しました。トラス構造の仕組みなどが理解頂けたと思います。
仕組みを理解したあとは、是非、トラス構造の計算方法に進みましょう。下記の記事も併せて参考にしてください。
断面法とは?リッター法・クルマン法の計算手順と節点法との違い(例題付き)
クルマン法とは|リッター法との違いとトラスの部材力計算の手順を解説
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
トラス構造とは何か。2つの大きな特徴は?
部材を三角形に組んだ構造。特徴は①三角形に組むこと、②接合部(節点)がピン接合(自由に回転でき、節点の曲げモーメントがゼロ)であること。
トラス構造が強い理由と、部材に作用する力は?
三角形は四角形より変形しにくく、節点がピン接合のため曲げモーメント・せん断力が概ねゼロで、部材には圧縮力または引張力(軸力)のみが作用する。部材は軸力(特に引張力)に強いため大きな力に耐えられる。
トラス構造とラーメン構造の部材断面の違いは?
トラス構造は軸力のみのため部材断面を比較的小さくできる。ラーメン構造は剛接合で曲げモーメント・せん断力が作用するため部材断面が比較的大きくなる。
