この記事の要点
剛性とは、外力を受けた部材や構造物の変形しにくさを表す考え方です。剛性が大きいほど、同じ力を受けても変形は小さくなります。
剛性と強度は別の意味です。剛性は「変形しにくさ」、強度は「壊れにくさ」を表すため、強度が高いからといって必ず剛性が高いとは限りません。
建築構造では、軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性を区別して考えます。代表的な関係式は P=kδ で、剛性 k は荷重を変形量で割って求めます。
剛性とは何か、強度と何が違うのか、剛性が高い・低いとはどういう意味か、計算式や単位をどう整理すればよいのかを解説します。
剛性(記号:K)とは、物体や部材の変形しにくさ(しやすさ)を表す値です。建築構造では、地震や風などの力を受けたときに、建物や部材がどれだけ変形するかを考えるうえで重要です。

たとえば同じ力を受けても、変形が小さい部材は剛性が高く、変形が大きい部材は剛性が低いといえます。つまり剛性は、「壊れるかどうか」ではなく、「どれだけ変形しにくいか」を見るための指標です。
また、建築以外でも(例えば自動車)剛性は大切です(自動車なら、衝撃による変形量を推定するなど)。
似た用語に、剛比があります。剛比の意味は、下記が参考になります。
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剛性は、物体の固さ(かたさ)を表す値です。要するに、剛性の大小が「固い」「柔らかい」を意味します。剛性を説明するとき、「ばね」を使います。ばね、は私達の生活に身近な道具です。ボールペンを分解すると、ばねがでてきます。
ばねは押さえつけると変形しますが、力を抜くと元に戻ります。この性質を「弾性」といいます。弾性については下記が参考になります。
塑性とは?1分でわかる意味、靭性、延性、弾性との違い、対義語、塑性変形能力との関係
ばねの中には「固いばね」と「柔らかいばね」があります。固いばねは、中々変形しません。一方柔らかいばねは、手で簡単に変形します。剛性は、このような固さ(すなわち変形のしやすさ)を表しています。
では、剛性の意味が分かったところで、実際に剛性の計算をしてみましょう。剛性が大きければ、変形しにくい部材です(つまり固い)。逆に剛性が小さければ変形しやすいです(柔らかい)。剛性をk、変形をδとします。このとき剛性と変形の間には、下式が成り立ちます。
P=kδ
よって、剛性kは下式で計算します。
k=P/δ
Pは荷重(単位はN、kNなど)、kは剛性(N/mm、kN/cmなど)、δは変形(mm、mなど)です。これを「フックの法則」といいます。物理学者ロバートフックは、バネ秤を用いた実験で、力と変形は比例関係にあることを見つけました。
また、バネの固さによって変形量が違うことにも気づいたのです。バネの固さとは、つまり「剛性の大きさ」です。
上式は、定量的な分析(量に着目すること。上式なら荷重の量や、変形量)には役立ちますが、物体を定性的に分析できません(本質的な性質)。そこで上式を下記のように変形します。当式もフックの法則と言います(こちらが有名かもしれません)。
σ=Eε
σは応力度(曲げ応力度又は軸応力度)、Eはヤング係数、εはひずみ(ひずみ度)です。※ヤング係数については下記が参考になります。
剛性の意味は前述した「変形のしにくさを示す値」で間違いないのですが、「変形」にも色々あります。部材を単純に引っ張ったときの変形と、曲げた時の変形は違うはずです。それは、「剛性の違い」でもあります。
建築では主に3つの変形を考えます(今回、ねじれの話は省略します)。
・軸変形
・曲げ変形
軸変形による剛性を「軸剛性」といいます。また曲げ変形、せん断変形による剛性を、それぞれ「曲げ剛性」「せん断剛性」といいます。
単に「剛性」といっても、実は3種類あることを覚えておきましょう。ですから「剛性」という用語は曖昧な言い方です。前述したように、「一体どのような変形に対する剛性なのか」は大切だからです。
なお、構造力学では、軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性のほかに、ねじり剛性という考え方もあります。また、建築物全体では、地震力などに対する水平剛性という言い方もあります。この記事では、まず基本となる軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性を中心に整理します。
剛性と強度を混同する理由は2つあります。
1.強度の正しい意味を認識していない
2.強度=固いという誤った認識
「強度が高い」というと、何となく「固い」と連想しがちです。しかし、剛性と強度は同じ意味ではありません。一番良い例は「糸」です。糸の強度は驚くほど高いです。一方で糸は、柔らかい材料ですよね。強度が高くても、剛性が高いとは限らないことが分かります。
剛性は、変形しにくさを表す値です。一方、強度とは「材料が、単位面積当たりでどのくらいの力に耐えられるか」を示す値です。建築で単に「強度」というと、材料強度や許容応力度など様々な強度があります。剛性と同じく、何の強度を指しているのかが大切です。
※材料強度や、許容応力度については下記が参考になります。
さて、ここからは剛性の計算式、求め方、単位を整理します。まず「剛性が高い・低い」とはどういう意味かを確認し、その後で軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性の計算式や特徴を説明します。
剛性が高いとは、同じ力を受けても変形が小さい状態です。建築構造では、梁がたわみにくい、柱や架構が変形しにくい、といった意味で使います。
反対に、剛性が低いと、同じ力を受けたときの変形が大きくなります。建物では、地震時の変形、梁のたわみ、振動のしやすさなどに関係します。
ただし、剛性が高いことと、壊れにくいことは同じではありません。壊れにくさを表すのは強度であり、剛性はあくまで変形しにくさを表す考え方です。
軸変形とは、下図のように部材に引張力又は圧縮力のみ作用するときの変形です。
軸剛性の計算式を導出します。
P=kδ
σ=P/A
σ=Eε
ε=ΔL/L
以上の式を紐づけて、kを求める形に直します。
P/A=Eε
P/A=E*ΔL/L
P=E*ΔL*A/L
ΔL=δより
P=δ*EA/L
P=kδの式と上式を紐づけます。よってkは、
k =EA/L
です。kは軸剛性、Eはヤング係数、Aは部材の断面積、Lはスパンです。軸剛性は、ヤング係数と断面積の積に比例し、スパンに反比例します。
部材を曲げると、曲げ応力(曲げモーメント)が作用します。また、この時部材は曲げ変形を伴います。曲げ変形は「梁のたわみ」と言った方が分かりやすいでしょうか。例えば、下図の単純梁に集中荷重が作用しています。梁のたわみは、PL3/48EIです。
フックの法則より
P=kδ
δ=PL3/48EI
です。よって曲げ剛性kは、
k=P/δ=P/(PL3/48EI)=48EI/L3
です。曲げ剛性の大きさは、ヤング係数Eと断面二次モーメントIの積に比例し、スパンLの三乗に反比例します。
曲げ変形に強い(たわみにくい)部材とは、ヤング係数、断面二次モーメントが大きい部材です。
※ヤング係数、曲げ剛性については下記が参考になります。
せん断力が作用すると、物体は下図のように変形します。このような変形をせん断変形と言います。
せん断力とせん断変形の間にも、フックの法則が成り立ちます。但しせん断力に対しては別途フックの法則が成り立ちます。下式をみてください。
τ=Gγ
τはせん断応力度、Gはせん断弾性係数、γはせん断変形です。※せん断弾性係数については下記が参考になります。
またせん断応力度は、下式でも計算できます。
τ=Q/A
τはせん断応力度、Qはせん断力、Aは断面積です。※ところで、曲げモーメントが作用する梁のせん断応力度については下記が参考になります。
2つの式を紐づけて、剛性の形に直します。
Q/A=Gγ
Q=GγA
=GAΔL/L
よってせん断剛性は、
k=GA/L
下記も参考にしてくださいね。
せん断剛性とは?1分でわかる意味、計算、単位、ヤング率、曲げ剛性との関係
以上、各変形による剛性を計算しました。計算式から明らかなように、剛性の単位は
N/mm又はkN/cm
などです。後述するバネ定数も、同様の値です。下記も参考にしてください。
曲げ剛性の単位は?1分でわかる意味、軸剛性との違い、梁、eiとの関係
剛性とばね定数は同じ意味と考えてください。物理用語としては「ばね定数」、建築や工学分野では「剛性」という程度の違いでしょうか。実質は同じです。ばね定数の単位が、
N/mm又はkN/cm
な点からも明らかです。但し、後述する柱脚の剛性は、なぜか「ばね定数」という方もいます。又は回転剛性ともいいます。ばね定数の詳細は下記もご覧ください。
ばね定数とは?1分でわかる意味、公式、ヤング率、単位、求め方
柱脚のバネ定数は下式で計算します。
Kbs=(E*nt*Ab*(dt+dc)^2)/2*Lb
Kbsがばね定数、Eはヤング係数、ntは引張側のアンカーボルト、Abはアンカーボルトの軸断面積、dtは柱芯からアンカーボルト芯までの距離、dcは柱芯から柱面までの距離、Lbはアンカーボルトの有効長さです。
Abは有効断面積ではなく軸断面積です。また切削ネジと転造ネジの違いで、軸断面積が異なるので注意しましょう。
下図の片持ち柱に集中荷重が作用しています。この部材の曲げ剛性を計算してください。
前述した例を思い出せば簡単ですね。片持ち柱の変形は下式です。
δ=PL3/3EI
フックの法則より、剛性kは
k=3EI/L3
です。
剛性は、地震力の計算で大切です。なぜなら、各柱が負担する地震力は剛性の大きさに応じて変わるからです。
前述したように剛性は、スパン、断面二次モーメント、ヤング係数によって決まります。ヤング係数は、各部材で同じはずなので問題になりません。しかし柱や梁の断面は、全て同じではなく意匠・構造・設備設計の兼ね合いで変わります。
剛比とは、各部材による剛性の大きさを比率によって表した値です。剛比は、D値法や固定モーメント法などの応力算定に用いられます。剛度は、
K=I/L
で求まる値で、剛比の算定に使います。
※剛比の計算方法については、下記が参考になります。
混同しやすい用語
剛性(k)
変形しにくさを表す値です。k=力/変形量で表し、値が大きいほど同じ力を受けても変形しにくくなります。
強度
壊れにくさを表す値です。材料がどのくらいの応力度まで耐えられるかを示すもので、剛性とは意味が異なります。
建築で用いる3種類の剛性を計算式・パラメータとともに整理します。
| 剛性の種類 | 計算式 | 主なパラメータ | 対応する変形 |
|---|---|---|---|
| 軸剛性 | k = EA/L | E:ヤング係数、A:断面積、L:スパン | 軸方向変形(引張・圧縮) |
| 曲げ剛性 | k = 48EI/L3(単純梁・集中荷重) | E:ヤング係数、I:断面2次モーメント、L:スパン | 曲げ変形(たわみ) |
| せん断剛性 | k = GA/L | G:せん断弾性係数、A:断面積、L:スパン | せん断変形 |
いずれもスパンLが大きいほど剛性が低下(変形しやすくなる)点が共通しています。
今回は、剛性について説明しました。剛性は、簡単にいえば物体や部材の変形しにくさを表す考え方です。剛性が大きいほど、同じ力を受けても変形は小さくなります。
剛性と強度は混同しやすいですが、同じ意味ではありません。剛性は変形しにくさ、強度は壊れにくさを表します。強度が高いからといって、必ず剛性が高いとは限らない点に注意しましょう。
剛性の基本は、P=kδ、つまり k=P/δ です。建築構造では、軸剛性、曲げ剛性、せん断剛性のように、どの変形に対する剛性なのかを分けて考えることが大切です。
剛性=固さ、で間違いないのですが、部材には様々な変形があるので、剛性の計算方法も変わります。余裕がある人は、剛比の考え方も理解したいですね。剛比の計算は、構造計算の基本にもつながります。下記も併せて学習しましょう。
曲げ剛性の単位は?1分でわかる意味、軸剛性との違い、梁、eiとの関係
せん断剛性とは?1分でわかる意味、計算、単位、ヤング率、曲げ剛性との関係
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験では、剛性と強度の違いが問われます。剛性は変形しにくさ、強度は壊れにくさを表す値です。
また、剛性が大きいほど同じ力を受けたときの変形は小さくなります。k=P/δ の関係とあわせて覚えると、混同を防げます。