この記事の要点
H形鋼はフランジとウェブからなる「H」型の鋼材で、梁材として最もよく使われます。JIS規格により断面寸法・断面係数・重量が規定されています。高い断面性能と溶接のしやすさから鉄骨造の標準部材です。
この記事では、H形鋼とは何か、JIS規格の断面寸法はどう規定されているのか、なぜ梁材として強いのかを整理します。
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H形鋼とは、ローマ字の「H」の形をした鋼材です。H形鋼はローマ字のHの形ですが、一般に「工」の向きになる(下左図)ように使います。
他にも溝形鋼やL形鋼などがあります。似た用語にビルドH形鋼や、外法一定H形鋼があります。
今回は
について解説します。
H形鋼には、ビルドH鋼や外法一定h形鋼、JISh形鋼などがあります。H形鋼の種類は、下記が参考になります。
外法一定H形鋼とは?スーパーハイスレンド・JIS H形鋼との違いと規格
H形鋼とは、ローマ字の「H」の形をした鋼材です。下図をみてください。これがH形鋼です。H形鋼はローマ字のHの形ですが、一般に「工」の向きになる(下左図)ように使います。
よって、H形鋼をパッと見ると「ローマ字のI」に見えますが、I形鋼とは言いません(※なお別途I形鋼は存在します)
H形鋼は構造物の大梁、小梁、耐風梁等でよく使う鋼材です。この理由はH形鋼の断面形状にあります。
簡単にいうとH形鋼は
のです。また、H形鋼をカタカナの「エ」の方向で使うことにも意味があります。
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H形鋼の特徴は"カタカナのエ(ローマ字のH)"の断面形状にあります。ではH形鋼は、「工」(H)」の形で、なぜ"工"の向きで使うことが多いのでしょうか。
この理由は下記の2つです。
です。一つずつ見ていきましょう。
鋼の比重(密度)は約7.85(g/cm3)です。水の密度が1.0g/cm3、コンクリートで2.3g/cm3なので、実は
です。何となくコンクリートの方が重そうに感じる方も多いと思いますが、圧倒的に鋼の方が重たい材料です。
ではなぜ
だと言われるのか。その理由は鋼材の断面形状にあるのです。
鋼は重たい材料にも関わらず、H形鋼は軽量な部材です。この理由はH形鋼の断面形状にあり、H形鋼が普及した大きな理由です。
さて、H形鋼が普及した要因は、断面性能と価格の安さ(軽量)のバランスです。つまり、H形鋼は「軽くて強い部材」なので、
H形鋼が軽くて強い材料である根拠を計算で確認します。部材の断面性能である断面二次モーメントと、部材の重量Wの比率、I/Wを計算します。
I/Wは重さ当たりの断面性能なので、この値が大きいほど軽くて強い(コストパフォーマンスが高い)部材です。
H形鋼と中身が詰まった鉄塊で、100x100の断面を比較します。すると2倍近く、H形鋼の方がI/Wが大きいことがわかります。
断面二次モーメントの意味は下記が参考になります。
断面二次モーメントIの式は、I=bh3/12です。Iは高さの3乗に比例します。一方、幅は1倍です。同じ高さの断面であれば、H形鋼の断面性能は、僅かな幅の分減るだけです。
なお、重量は正方形断面の方が、H形鋼より4.6倍程度重いです。
h鋼梁の特徴は「軽量かつ剛性」が高い点です。下図をみてください。h鋼梁(H-200x100x5.5x8)と同等の幅、高さをもつ長方形梁(□-200x100)の単位重量と断面二次モーメントを比較します。
このとき、h鋼梁と長方形梁では、長方形梁の方が断面二次モーメントは約3.7倍大きいですが、一方で、単位重量はh鋼梁の方が約1/7.5も小さいのです。

構造設計では、コスト面および自重を減らすことの構造的な合理性から、断面算定においては断面を小さくした上で必要な断面性能を確保するバランス感覚が求められます。
上図の例では、h鋼梁を長方形梁と同等の単位重量とすればh鋼梁の断面性能の方が「約2倍(=7.5/3.7)」となります。
「h鋼梁の方が少ない鋼材で高い断面二次モーメントを確保できる」、すなわち、h鋼梁は「軽量かつ剛性が高い」のです。
この観点から、一般に、鉄骨造の大梁、小梁ではh鋼を用います。
H形鋼を"工"の向きで使う理由は、荷重の方向に対するH形鋼の強さ(断面二次モーメントの大きさ)の向きが関係します。
h鋼を梁にかけるときの向きですが、荷重方向に対してh鋼が強い向きにかけます。
大梁、小梁は主に床荷重が作用します。床荷重は鉛直下向きに作用するので下図の方向("工の向き")にh鋼をかけます。

h鋼は耐風梁にも用います。風荷重は主に水平方向に作用するので、下図の方向にh鋼をかけます。

ではなぜ鉛直方向の荷重に対して"工の向き"が強いのでしょうか。これは断面二次モーメントが関係しています。
断面二次モーメントは曲げる力に対する「かたさ」を表す値です。断面二次モーメントが大きいほど曲げにくい(変形しにくい)断面で、断面二次モーメントが小さいほど「変形しやすい」断面です。
断面二次モーメントの値は下式で計算します。
上式より、図心軸から離れた箇所に断面が集まるほど、断面二次モーメントは大きくなります。よって、断面の「高さが大きい」方が断面二次モーメントは大きくなり有利です。
つまりH形鋼の場合、"工"の向きに使う方が、梁の高さが大きいため断面二次モーメントも多きくなります。
上図の通り、H形鋼は"工の向き"の使います。
また、H形鋼に曲げモーメントが作用するとき、H形鋼の断面には下図のような応力度が生じます。下図の通り応力度はH形鋼のフランジ位置で最大値をとり、ウェブは小さくなります。
このように、H形鋼のフランジは"曲げモーメントに抵抗する部分"ということです。
H形鋼のウェブはせん断応力に抵抗する部分です。また、ウェブは上下のフランジを一体化させる役割があります。
ウェブが無いと上下のフランジはバラバラに変形しますよね。よって、ウェブとフランジをつなげて上下のフランジが一体となって変形する役割があるのです。
H形鋼の規格と寸法を下表に示します。なお、下図のH形鋼をJISH形鋼といいます。
H形鋼の重量を下記に示します。鋼材の重量は、下図のように「単位重量」で表します。単位重量の意味は、下記が参考になります。
H鋼の単位重量一覧|H100・H200・H300の計算方法と重量表
H形鋼の断面係数を下図に示します。
H形鋼の断面係数は、下記も参考になります。
H形鋼の材質は、一般的に下記を使います。
SN400B、SN400A
SS400
SM400
特に最近は、SN材を使うことが多いです。H形鋼の大梁には、溶接性のあるSN400B、小梁にはSN400Aなどを使います。詳細は、下記が参考になります。
SN400Bとは?1分でわかる規格、SS400との違い、重量、H形鋼との関係
鋼材の種類は?種類一覧・用途と材質の特徴・記号(SS・SN・SM材の違い)
H形鋼の用途は下記があります。
大梁
小梁
柱
柱よりも、梁に使うことが多いです。断面性能、接合のしやすさ、使用実績などからH形鋼は一般的に使う部材です。大梁、小梁の意味は、下記が参考になります。
混同しやすい用語
H形鋼と角形鋼管
角形鋼管(コラム)とは、四角い断面の鋼管で、柱材によく使われます。H形鋼は梁材として使うことが多く、角形鋼管は柱材として使うことが多いです。両方とも鉄骨造の代表的な部材ですが、用途が異なります。
大梁と小梁
大梁とは、柱に直接接合される梁のことです。小梁とは、大梁から大梁へと架ける梁のことです。H形鋼は大梁・小梁ともに使われますが、断面サイズは大梁の方が大きくなります。
H形鋼を整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 形状 | ローマ字の「H」の形をした形鋼(実用上は「工」の向き) | フランジとウェブで構成 |
| 主な用途 | 梁材・柱材として鉄骨造建築に広く使用 | 梁への使用が一般的 |
| 断面性能 | 強軸方向の断面係数が大きく曲げ剛性が高い | 弱軸は断面係数小 |
| 材質 | SS400・SM490など建築構造用鋼材を使用 | JIS規格品 |
今回はH形鋼について説明しました。意味が理解頂けたと思います。H形鋼は、ローマ字の「H」の形をした鋼材です。H形鋼の意味だけでなく、特徴や規格も理解しましょう。下記の記事も併せて参考にしてくださいね。
外法一定H形鋼とは?スーパーハイスレンド・JIS H形鋼との違いと規格
H形鋼の広幅・中幅・細幅とは?読み方と断面サイズ・用途の違い
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
H形鋼は梁材の定番ですが、柱材には角形鋼管(コラム)が使われます。H形鋼の断面性能は方向によって異なるため、強軸・弱軸を意識した設計が重要です。