この記事の要点
二質点系の固有値解析では、各層のつり合い式を行列形式に整理し、一般固有値問題([K]-ω²[M]){a}={0}を解いて2つの固有円振動数と固有モードを求める。
1次モードは最頂部の変形が支配的で地震力が大きく、2次モードはそれよりずっと小さくなることが多いため、高次モードの影響を評価する上で比率の把握が重要になる。
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前回に引き続き、固有値解析について考えていきます。まず、多質点系の固有値問題は下式のように、
です。手計算レベルで解ける2質点系について考えましょう。
上図のように、2質点モデルがあります。ダランベールの式より、2層部分のつり合い式は、
です。慣性力は、質点重量と加速度の積です。加速度は変位の2階微分ですから、y2を二階微分した値です。
次に、復元力は2層部分の柱の剛性と、変位の積です。注意したいのは、「復元力は各層の相対変位と各柱の剛性をかけたもの」であること。考えてみれば、当然です。
2層部分の復元力に、1層の変位は関係ありません。ですから、相対変位である(y2-y1)を用いるのです。
次に1層部分のつり合い式は、
です。1質点系の式と異なる点は、2層に作用する慣性力が1層へ働くことです。力は必ず釣り合いますから、2層で作用した向きとは逆向きの慣性力が、1層へ働きます。
さて、両者の微分方程式を整理しましょう。
上式を行列式で示すと、
です。
これで、ようやく2質点系の質点重量マトリクスと、剛性マトリクスがわかりました。これを一般固有値問題の式に代入しましょう。一般固有値問題は下式のように、
です(当HPで誘導しています。「固有値解析とは?モーダルアナリシスについて」を参照ください)。各行列での値が、上式を満たすように代入していきます。
よって、
です。
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あとは、上式を解くことでωが求められます。今回は、簡単のためm1=m2、k1=k2としましょう。よって、
です。本当は実際の構造物の荷重を拾い、ラーメン構造なら柱と梁の関係から剛性を算出しますが、それは別の機会に。とりあえず、mとkは与えられているもの、と考えます。
m=10kN、k=50 N/cm
代入する前に単位を合わせます。要は、固有周期(s)を求めたいので、単位変換をしないと期待外れの結果になります(N/m/kg=1/s^2ですよね)。
上の行列式を解けばよいのです(桁が大きいので行列式の段階で桁を落とすと計算が楽です)。
以上より、4次方程式を頑張ってとくと(省略します。エクセルや電卓、ネットで公式がありますよ。)
です。また1次固有周期は最も長く、2次、3次と複雑な振動をすると、その固有周期はどんどん短くなっていきます。
一方固有モードを求めます。そもそも固有モードとは何でしょうか。これは、何か絶対的な数値を示したものではありません。
無次元量で、各モード時の各層の影響度合いを示しています。要するに各層の、ある値の比率を示しています。
前回、固有値をaと仮定しました。ωを分かったので、1層と2層の固有値の比率が分かります
(ちなみにaの具体的な値は特に興味がありません。問題は、どのモードでどの層が大きいのか、ということです)。行列式にωを代入します。
行列式を解くと、
よって、1層の2層の固有値の比率が各モードで求まります。
となるのです。以上、固有モードが求まりました。
この結果より、1次モードでは、2層は1層の6割も地震力が大きいこと、2次モードは全く問題にならないほど小さいことが分かりましたね。
今回は二質点系の問題を解きましたが、多質点系でも基本は同じです。
ただし、膨大な行列式を解く必要があるので、計算機や固有値を求める数学的手法が必要になるのです。
混同しやすい用語
固有値(ω²)と固有ベクトル(固有モード)
固有値は固有円振動数の2乗(ω²)であり、行列式の行列方程式を解いて得られる数値。固有周期Tはω²から計算される。
固有ベクトルは各固有値に対応する各層の変形比率(固有モード)を示し、絶対値ではなく比率のみに意味がある。
一質点系と二質点系(多質点系)
一質点系は固有周期が1つしかないのに対して、二質点系では1次・2次の2つの固有周期と固有モードが存在する。
多質点系では質点の数だけ固有周期が生じ、低次モードほど周期が長く地震力への影響が大きい傾向がある。
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験では二質点系のモデルで1次・2次固有周期の大小関係や各モードの変形形状が問われることがある。
行列の連立方程式を解く手順を追うより、「1次モードは長周期で頂部変形が大きい」「2次モードは短周期で変形が逆向き」というイメージをつかむと理解が定着しやすい。