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塑性ヒンジをご存じでしょうか。塑性ヒンジは、構造設計で必ず耳にする言葉です。大学の授業でも聞いたことがあると思います。塑性ヒンジという言葉を聞いただけでは、意味が良く分かりませんね。そこで今回は、塑性ヒンジについて説明します。
塑性の意味は、下記が参考になります。
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塑性ヒンジとは、曲げモーメントが全塑性モーメントを超え、部材断面全てが降伏し、ヒンジのように回転剛性を失った部分のことです。簡単に言うと、回転する力に抵抗できなくなった部分のことです。
下図をみてください。これは、部材断面の塑性化の様子を示しています。
梁に作用する曲げ応力度が許容曲げ応力度を超えた時、塑性化(降伏)します。但し、降伏する部分は梁断面の一部分です。さらに曲げモーメントが増えると、梁断面の降伏部分が増えていき、最終的には全断面が降伏します。こうして塑性ヒンジが形成されます。
針金をぐにゃぐにゃと曲げたり戻したりすると、いつの間にか抵抗感が無くなりますよね?つまり塑性ヒンジが形成された(回転に抵抗できなくなった)ことを意味します。
分からない人のために、用語を詳しく説明します。「ヒンジ」と「全塑性モーメント」です。※全塑性モーメントは下記が参考になります。
ヒンジは、「ピン(ピン接合)」と同じような意味です。つまり、回転に対して固定されないので曲げモーメントが零になります。
ところで、ヒンジとは建築の専門用語ではありません。蝶番(ちょうつがい)のことです。ドアはドアノブをガチャっと回して開けると思います。このときドアは、片側を起点にして回転する仕組みで造られています。この回転する仕組みがヒンジです。
前述したように塑性ヒンジは、作用する曲げモーメントが全塑性モーメントを上回ったときに形成されます。下図をみてください。この梁には中央部と端部に曲げモーメント作用しています。梁断面は一様とします。
このとき集中荷重を増やしていくと、まずは端部に塑性ヒンジが形成されます。すると、端部は曲げモーメントが伝達できず、両端ピンのような応力状態となります。さらに荷重を増やすと中央部に塑性ヒンジが発生します。
2点に塑性ヒンジが発生すると、この部材はこれ以上力を伝達できないと考えます。これが梁部材の崩壊モードの1つです。曲げ破壊と言います。
前述した塑性ヒンジは、主に梁の両端に発生します(梁の両端に発生するよう、梁と柱の部材を調整する)。両端にヒンジができた梁は、これ以上曲げモーメントが伝達できません(両端ピンなので)。
塑性ヒンジは回転剛性が無いのだけで、鉛直、水平に力を伝達することは可能です。つまり、直ちに危険な破壊モードでは無いのです。そのため一般的に、曲げ破壊は靱性のある破壊形式です。
一方せん断破壊は、直ちに建物の崩壊に繋がるので危険な破壊モードです。構造設計では、梁に塑性ヒンジが形成されるよう梁や柱のバランスを考えます。これが靭性のある設計に繋がるのです。
※靭性、せん断破壊の詳細は下記が参考になります。
今回は塑性ヒンジについて説明しました。塑性ヒンジが何かイメージが湧いたと思います。現在、建物の構造計算は部材の塑性化を取り込んだ設計が一般的です。塑性ヒンジもごく当たり前の知識として身に付けましょうね。
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