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塑性断面係数と全塑性モーメント

この記事の要点

塑性断面係数は断面が全塑性状態になるときの応力分布から求める係数で、全塑性モーメントの計算に使います。

補足:弾性設計で使う断面係数(Z)と、塑性設計で使う塑性断面係数(Zp)の違いを理解することが重要です。

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塑性断面係数とは、断面が全塑性状態になるときに用いる断面の係数です。

ロバートフックがバネ秤に重りをのせてバネの伸びと力の関係を知ったとき、まさかその先に物理現象があるとは思いもしなかったでしょう。

鉄はよく伸びます。

しかし引っ張れば引っ張るほど、伸びるわけでもありません。

ある時にスーっと伸びやすくなり、一旦、また固くなります。

そして、ようやくちぎれるのです。


鉄を引っ張れば伸びます。しかし、力を抜けば元の長さに戻ります。この性質を弾性と呼びます。一方、力を抜いたのに変形が戻らない現象を塑性と呼ぶのです。塑性現象は、力学的に危ういと思われがちですが、便利なこともあります。


今回は、塑性にライトを当てて塑性断面係数と全塑性モーメントについて説明しましょう。


断面係数や塑性について理解していない方は、下記が参考になります。

弾性と塑性の性質について

断面係数とは

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全塑性モーメントとは?

思い出して欲しいのが部材に荷重が作用したときの応力図です。そう、式で示すなら


σ=M/Z


です。これを応力度の図で示すと?

こうなります。つまり、曲げ応力度は中立軸を境に圧縮と引張に分かれるんですね。このとき、上端と下端は応力度に達した状態と考えます。

この部材に、そのまま荷重を加えます。すると、既に降伏している上端と下端は応力度が増加しないことが分かると思います。つまり、上端と下端はMAXの応力度に達したのだから、これ以上応力度は増えようがありません。では、荷重を加え続けるとどうなるか?


他の部分が降伏してくるのです。これを応力度図で示すとこうなります。

最外端が塑性したので、次に近い部分から順に中立軸まで塑性を始めます。

このとき、圧縮と引張の両者が中立軸まで塑性化したとき、部材は完全に『塑性した』ということになります。

これを部材の全塑性といい、全塑性したときの部材モーメントを『全塑性モーメント』と言います。


つまり、全塑性モーメントは下式で表します。


Mp=σy×Zp


Zpが塑性断面係数と言います。σyは降伏強度ですね。では、塑性断面係数について説明します。

全塑性すると、部材断面は上図のようになりますね。思い出して欲しいのが断面係数の式です。


σ=M/Zでした。


つまり、Zを算出するには逆算すればいいわけです。赤矢印の値は、応力度を集中荷重に置き換えた値で計算しやすくします。P=a×b/2×σですね。圧縮、引張で違う向きに応力度は作用していますから、これは偶力です。


偶力は部材を回転させる曲げモーメントですね。つまり、偶力Mは、


M=P×b/4×2=Pb/2

P=a×b/2×σ

M=a×b/2×σ×b/4×2=ab^2/4×σ


となります。この式、どこかで見たことありましたね。そう、σ=M/Zにそっくりです。変形すれば、


M=σ×Z


ですから、結局Zは


Z= ab^2/4


になります。これが長方形断面の塑性断面係数です。


混同しやすい用語

断面係数(Z)

弾性状態での曲げ応力度計算に使う断面の性質。

Z=I/y で求める。

塑性断面係数(Zp)

全塑性状態での断面の係数。

引張・圧縮それぞれの面積一次モーメントの和。

全塑性モーメント(Mp)

断面が完全に降伏したときに生じる最大の曲げモーメント。

Mp=σy×Zp。

塑性断面係数を整理した表を示します。

項目内容備考
断面係数(Z)弾性状態での曲げ応力度計算に使う係数。Z=I/y弾性設計で使用
塑性断面係数(Zp)全塑性状態での断面係数。長方形断面:Zp=ab2/4塑性設計で使用
全塑性モーメント(Mp)断面が完全降伏したときの最大曲げモーメント。Mp=σy×Zp形状係数f=Zp/Z

まとめ

今回は、塑性に関する重要な項目を紹介しました。

全塑性モーメントと塑性断面係数は、構造計算には欠かせないものですし、構造力学の授業でも習いますよね。

考え方を一度理解すれば楽です。

今回説明した内容を頭に入れておけば、どんな形状でも大体対応できると思います。

下記も併せて学習しましょう。

完全弾塑性体とは?1分でわかる意味、定義、バイリニア、弾塑性状態、塑性状態

塑性変形とは|読み方・弾性変形との違い・降伏点

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理解度チェック

Q.

弾性と塑性の違いを説明してください。

答えを見る

鉄を引っ張って力を抜いたとき元の長さに戻る性質を弾性といいます。一方、力を抜いても変形が戻らない現象を塑性といいます。

Q.

全塑性モーメントとは何か、式とともに説明してください。

答えを見る

曲げを受ける断面で、圧縮側と引張側の両方が中立軸まで塑性化し、断面が完全に塑性した状態を全塑性といいます。そのときの部材モーメントが全塑性モーメントで、Mp=σy×Zp(σyは降伏強度、Zpは塑性断面係数)で表します。

Q.

長方形断面の塑性断面係数Zpはどう求められますか。

答えを見る

全塑性時の応力度を集中荷重に置き換えた偶力(曲げモーメント)M=ab2/4×σ と、M=σ×Z を比較することで導かれ、長方形断面の塑性断面係数は Zp=ab2/4 となります。

Q.

断面係数(Z)と塑性断面係数(Zp)の違いを説明してください。

答えを見る

断面係数Zは弾性状態での曲げ応力度計算に使う断面の性質でZ=I/yで求めます。塑性断面係数Zpは全塑性状態での断面の係数で、引張・圧縮それぞれの面積一次モーメントの和です。Zは弾性設計、Zpは塑性設計で使います。

ハナダユキヒロ

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務。2010年より「建築学生が学ぶ構造力学」を運営(16年以上)。著書「わかる構造力学」「わかる構造力学(改訂版)」(工学社)。

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