この記事の要点
座屈とは、圧縮力を受けた細長い部材が、材料の強度に達する前に急に横方向へ変形し、耐力が低下する現象です。
座屈しやすいかどうかは、部材の長さ、断面の曲がりにくさ、支持条件によって変わります。特に、座屈荷重・座屈長さ・細長比を理解することが大切です。
この記事では、座屈の意味、座屈荷重、座屈長さ、座屈の種類を中心に整理し、座屈を防ぐ考え方もあわせて確認します。
座屈がどのような現象なのか、座屈荷重や座屈長さは何を表すのか、座屈の種類をどう整理すればよいのかを順番に整理します。
座屈は、急激に部材の耐力低下を引き起こす現象です。
今回は、座屈の意味だけでなく、座屈荷重、座屈長さ、細長比、座屈の種類まで、構造力学として理解しやすい順番で整理します。
座屈は、構造力学を学ぶときに苦手意識を持ちやすい現象の一つです。

圧縮力を受けた部材が、なぜ材料の強度に達する前に急に曲がるのかを、まずは直感的に考えてみましょう。
プラスチック製のものさしを手でつまんで、力を加えます。すると急に「ぐにゃ」と曲がります。簡単に言うと、これが座屈です。
専門的にいえば、「部材が圧縮力を受けるとき、急に面外にはらみ出し、材料強度より遥かに小さい値で耐力低下を起こす現象」です。
下図をみてください。左は細長い柱で、右は太い柱です。両者とも材質、強度は同じと考えます。
一度専門的なことは忘れて、矢印の方向に力を加えたとき、「どちらが先に壊れるか」想像してください。
いかがでしょうか。同じ圧縮力を受けても、細長い部材ほど横方向に変形しやすいことが分かります。座屈は、材料の圧縮強度だけでなく、部材の長さ、断面の曲がりにくさ、支持条件によって大きく変わります。
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座屈が建物にとって重要なのは、圧縮材の耐力が、材料そのものの圧縮強度だけで決まらない点です。
細長い部材に圧縮力が作用すると、部材はまっすぐな状態を保とうとします。しかし、荷重が大きくなると、わずかな曲がりや偏心の影響が大きくなり、横方向の変形が一気に進んで不安定化します。

つまり座屈は、材料そのものはまだ壊れていなくても、部材としては耐力を保てなくなる現象です。この限界となる荷重が、座屈荷重です。
細長い部材が座屈しやすいことは理解しました。では、具体的に何が座屈に関係しているのでしょうか。今回は、オイラー座屈(棒の曲げ座屈)を例に説明します。
後述しますが、一言で「座屈」と言っても種類があります。細長い部材(柱や梁)の座屈は、オイラー座屈といい、座屈荷重は下式です。
Pcrは座屈荷重(座屈耐力ともいう)Eはヤング係数、Iは断面二次モーメント、Lkは座屈長さ(Lk=K×Lで、Kは境界条件に応じた係数、Lは支点間距離)です。
単位はNまたはkNです。本式の導出や、Lkの詳しい意味は下記の記事が参考になります。
座屈荷重は、「この荷重までは座屈が起きない」ことを意味します。例えばPcr=50kNであれば、49kNまでは座屈しません。
式をみてわかるように「π2」の定数を除けば、座屈荷重の大きさは「部材の剛性そのもの」です。
材質が固い材料を使えば座屈荷重は大きくなります。さらに、断面が大きくて、短い部材の方が座屈荷重は高くなります。
また、境界条件の違いも座屈荷重に大きく関係します。両端ピンの柱と、片持ち柱では、
柱の長さ、材質が同じでも座屈荷重は違います(この場合、前者の方が座屈荷重が4倍以上大きいです)。
さて、改めて座屈荷重の式をみてください。
この式には、材料の圧縮強度は出てきません。オイラー座屈荷重は、材料の圧縮強度そのものではなく、ヤング係数E、断面二次モーメントI、座屈長さLkによって決まります。大切なポイントですから、覚えておきましょう。
座屈長さとは、部材が座屈するときの変形形状を考えて、計算上の柱の長さとして置き換えたものです。実際の部材長さそのものではなく、両端の支持条件や拘束条件によって変わります。
たとえば、両端が固定されている柱は曲がりにくいため、実際の長さより短い柱として扱えます。一方、片持ち柱のように一端が自由な部材は曲がりやすいため、実際の長さより長い柱として扱います。

一般に、座屈長さは Lk=K×L で表します。Lkは座屈長さ、Lは部材の長さ、Kは座屈係数です。座屈係数は、両端ピン、両端固定、片持ち柱など、部材端部の支持条件によって変わります。
両端が固定されている部材は座屈しにくく、片持ち柱のように一端が自由な部材は座屈しやすくなります。つまり、座屈長さを短くすることは、座屈を防ぐうえで重要です。
| 支持条件 | 座屈係数Kの目安 | 座屈しやすさ |
|---|---|---|
| 両端ピン | 1.0 | 基準 |
| 一端固定・他端ピン | 約0.7 | やや座屈しにくい |
| 両端固定 | 0.5 | 座屈しにくい |
| 一端固定・他端自由 | 2.0 | 座屈しやすい |
座屈長さの詳しい考え方は、下記の記事も参考になります。
もう1つ大切な式を説明します。それが「座屈応力度」です。文字通り、座屈により生じる圧縮応力度を表す値です。座屈応力度は、下式で計算します。
ここで断面二次半径i=√I/Aだから、
です。σcrは座屈応力度、λは細長比といいます。細長比については下記の記事が参考になります。
細長比・座屈長さ・断面二次半径の関係は?計算式と座屈設計への影響(圧縮材の基礎)
実は、構造設計の実務では、わざわざオイラー座屈荷重を計算しません。それよりも「細長比」を計算します。理由は、細長比が分かれば「座屈応力度が決まる」からです。
座屈応力度の式をみると、変数は細長比λしかありませんね(建物の構造材料が決定すれば、Eのヤング係数も定数です)。
細長比が大きいほど座屈応力度は小さく、細長比が小さいほど座屈応力度は大きくなります。
下図は、細長比の値に応じた柱の見た目です。細長比が大きくなるに従って、頼りない柱になること(座屈応力度が小さい)が分かって頂けたと思います。
これまでオイラー座屈の話題を中心に説明しましが、実は座屈は様々な種類があります。
前述した細長い棒(柱など)の座屈です。オイラー座屈荷重の計算は、下式で詳細に説明しています。
片側ピン・片側固定柱の座屈荷重|オイラー理論からの計算式と導出
片持ち柱のオイラー座屈荷重は?計算式の導出と座屈長さの求め方
鉄骨部材は、細長い柱の座屈のように部材全体が座屈をする他に、「部材の一部分が局部的に座屈を起こす」こともあります。
そのような座屈を局部座屈(板の座屈)といいます。局部座屈は、鋼材の板厚が部材幅に比べて小さいとき起き易いです。
前述した理由より、部材幅と板厚による比率で局部座屈の置きやすさを判断します。これを幅厚比(円形部材の場合は径厚比)といいます。幅厚比については下記の記事が参考になります。
オイラー座屈荷重を大きくしても、局部座屈しては意味がありません。よって、部材の選定は2つの座屈に対して安全であるよう設計します。局部座屈の詳細は下記をご覧ください。
局部座屈とは?対策、幅厚比の計算、板座屈、全体座屈との違いは?
横座屈は、曲げ応力が作用する部材に起きる座屈です。代表的な部材である梁は、中立軸を境に引張側、圧縮側の応力度が作用します。
この圧縮側の力により、フランジが面外に飛び出す座屈を「横座屈」といいます。横座屈については下記の記事が参考になります。
横座屈は梁で起きやすく、防止するには横補剛材(横座屈を防止する小梁あるいは方杖)を一定区間に入れます。横補剛材については下記の記事が参考になります。
横補鋼材としての方杖とは?設計手順と規模に応じた必要性の判断
混同しやすい用語
オイラー座屈(全体座屈)vs 局部座屈
オイラー座屈は部材全体が大きく曲がって変形する全体的な座屈であり、細長比が大きい(細長い)部材で起きやすい。
局部座屈はフランジやウェブなど部材の一部の板要素が波状に変形する座屈で、板厚に対して幅が大きい断面で生じやすい。
横座屈 vs オイラー座屈
オイラー座屈は軸力(圧縮力)を受けた棒が圧縮方向と直角に曲がる現象で、柱の設計に関係する。
横座屈は曲げモーメントを受けた梁が横方向にねじれながら曲がる現象で、横補剛なしのH形鋼梁などで生じやすい。
座屈の種類を整理した表を示します。
| 座屈の種類 | 発生条件 | 主な対策 |
|---|---|---|
| オイラー座屈(全体座屈) | 細長い圧縮材に軸力が作用する場合 | 断面積・I増大、細長比低減 |
| 局部座屈 | 板幅厚比が大きいフランジ・ウェブ | 板厚を増す、幅厚比を制限 |
| 横座屈 | 横補剛なしのH形鋼梁に曲げモーメント | 横補剛材の設置 |
座屈とは、圧縮力を受けた細長い部材が、材料の強度に達する前に急に横方向へ変形し、耐力が低下する現象です。
座屈しやすいかどうかは、部材の長さ、断面の曲がりにくさ、支持条件によって変わります。座屈荷重、座屈長さ、座屈係数、細長比をあわせて理解することが大切です。
座屈荷重の式には、材料の圧縮強度は直接入りません。部材の硬さ、断面二次モーメント、座屈長さが、座屈しやすさに大きく関係します。
建築構造では、オイラー座屈、局部座屈、横座屈を区別して整理します。それぞれ発生する部材や対策が異なるため、全体座屈だけでなく、局部座屈や横座屈もあわせて確認しましょう。
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