この記事の要点
片持ち梁とは、一端を固定端、もう一端を自由端とした梁です。片持ちはり・片持ちばり、カンチレバーとも呼ばれます。
片持ち梁は、庇やバルコニーのように片側から突き出す構造で使われます。荷重を受けると、固定端側に曲げモーメントとせん断力が大きく生じます。
片持ち梁は見た目が軽快で空間を広く使える一方、たわみが大きくなりやすい構造です。設計では固定端の応力と変形量の確認が重要です。
この記事では、片持ち梁がどのような梁なのか、固定端と自由端の違い、荷重を受けたときにどこが危険になるのかを整理します。
片持ち梁は、一端を固定端、もう一端を自由端にした梁です。片持ちはり、片持ちばり、カンチレバーとも呼ばれます。

要するに、片側だけで支えられている梁です。片持ち梁は、建築物の様々な箇所に利用されています。
今回は、そんな片持ち梁の構造、様々な荷重による応力、たわみと例題を紹介します。
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片持ち梁とは、一端を固定端、もう一端を自由端とした梁です。下図のように、片側だけで梁を支え、反対側は支えのない状態になります。

片持ち梁は軽快な構造なので、建築家や構造家に好まれます。例えばバルコニーや屋根の庇、これらは片持ち形状です。
片持ち梁は、広い空間がとれます。見た目も軽やかなので、街を歩けば1つは片持ち梁が見つかるでしょう。
ただし、片持ち梁は自由端側ではなく、固定端側に大きな力が集まります。先端に荷重がかかると、根元である固定端に曲げモーメントが大きく生じ、たわみも大きくなりやすいです。ここが、片持ち梁を考えるうえで一番大事なところです。
片持ち梁は、片側だけで支える構造だからこそ、良い点と注意すべき点がはっきり分かれます。下記にメリットとデメリットを整理します。
| 項目 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 空間 | 柱を減らせるため、下部の空間を広く使える | 支持する側の固定端に大きな力が集まる |
| 見た目 | 軽快で、浮いているようなデザインにしやすい | 見た目以上に構造的な負担は大きい |
| 構造 | 庇、バルコニー、駐車場の上屋などに使いやすい | 固定端で曲げモーメントが大きくなり、たわみも大きくなりやすい |
| 設計 | 柱のない開放的な計画にしやすい | 接合部、部材寸法、変形量に余裕をもった設計が必要 |
メリットは下記です。
・空間を広くとれる
・軽快な構造とできる
片持ち梁は、意匠的に多くのメリットがあります。下図をみてください。柱2本で支える構造と、柱1本で片持ち梁とする構造があります。
どちらが空間を広くとれるのでしょうか。柱が無い分、当然片持ち梁の構造ですね。よって駐輪場や駐車場の上屋に、上図の構造が利用されます。
また日建設計のホキ美術館は片持ち構造を利用した建物です。まるで浮いている構造で驚きます。
このように、片持ちであること(柱がない)をデザインに活かす建築もあります。一般の方がみると、「浮いている」ように見えますね。
デメリットは下記です。
・固定端に曲げモーメントが大きく生じる
・静定構造なので、固定端に問題があると直ちに崩壊する(冗長性が無い)
・部材が大きい
・変形が大きい
片持ち梁は構造的なデメリットが目立ちます。静定構造のため、固定端に問題あると成立しません。例えば、RC造の片持ち梁の場合、固定端にひび割れが生じると、変形が大きくなるかもしれません。
構造設計者としては、不安の大きい構造といえます。特に接合部は、余裕をもった設計が必要です。
また、片持ち梁は応力や変形が大きくなります。そのため部材寸法は、普通の梁と比べて大きいです。
片持ち梁の応力計算でまず押さえたいのは、曲げモーメントが固定端で最大になることです。自由端に荷重がかかると、根元である固定端に大きな曲げが生じます。
片持ち梁の応力計算は簡単です。たわみの計算は少々暗記が必要なので慣れましょう。後述しますが、実務では片持ち梁の設計をするとき、存在応力の2倍を考慮します。これは、「鉛直震度」といって、鉛直方向の地震力です。
なお、片持ち梁の曲げモーメント図、せん断力図、荷重図の関係を示します。

| 記号 | 意味 | 計算での見方 |
|---|---|---|
| L | 片持ち梁の長さ | 自由端から固定端までの距離です。片持ち梁では、固定端側で応力が大きくなります。 |
| x | 自由端からの距離 | 自由端を0として、固定端へ向かう距離です。xが大きくなるほど固定端に近づきます。 |
| P | 集中荷重 | 一点に作用する荷重です。自由端に作用すると、固定端の曲げモーメントはPLになります。 |
| w | 分布荷重 | 梁に連続して作用する荷重です。等分布荷重では、固定端の曲げモーメントはwL2/2になります。 |
| M | 曲げモーメント | 梁を曲げようとする力です。片持ち梁では、基本的に固定端で最大になります。 |
| Q | せん断力 | 梁をずらすように働く力です。荷重の種類によって、一定・直線・曲線になります。 |
| 荷重の種類 | せん断力図 | 曲げモーメント図 | 押さえる点 |
|---|---|---|---|
| 荷重なし | Q=0 | M=0 | 荷重がないため、せん断力も曲げモーメントも生じません。 |
| 自由端にモーメントM | Q=0 | Mは一定 | モーメントだけが作用するため、せん断力は生じません。 |
| 自由端に集中荷重P | Qは一定 | Mは直線 | 固定端で最大になります。最大曲げモーメントはPLです。 |
| 等分布荷重w | Qは直線 | Mは二次曲線 | 固定端で最大になります。最大曲げモーメントはwL2/2です。 |
| 三角形分布荷重w | Qは二次曲線 | Mは三次曲線 | 荷重が固定端側ほど大きいため、せん断力も曲げモーメントも固定端側で最大になります。 |
鉛直震度の意味、片持ち梁の応力は下記が参考になります。
鉛直震度とは?意味・水平震度との違いと片持ち梁・庇の設計への影響
片持ち梁の応力計算|曲げ応力・せん断応力の公式と単純梁との比較
先端に集中荷重が作用するときの片持ち梁の応力は下記となります。
Q=P
M=PL
簡単ですよね。せん断力は、先端荷重そのままです。また、曲げモーメントは先端荷重PとスパンLを掛けた値です。曲げモーメントは固定端で最大となります。
つまり、片持ち梁では先端よりも根元側が重要です。曲げモーメント図を描くと、自由端で0、固定端で最大になる形になります。
先端荷重の片持ち梁の計算は?曲げモーメント・たわみの公式と計算例
等分布荷重が作用するときの片持ち梁の応力は下記です。
Q=wL
M=wL2/2
wは等分布荷重です。ポイントは、スパンの二乗になることです。曲げモーメント図を描くと、自由端側で小さく、固定端側で最大となる二次曲線になります。
等分布荷重が作用する片持ち梁の計算|曲げモーメント・せん断力・たわみの公式
片持ち梁のたわみは、応力以上に注意します。スパンが長い場合、応力よりもたわみが変形制限を満足しないことが多いからです。
特に片持ち梁は、単純梁に比べてたわみが大きくなりやすいので、公式の形だけでなく「スパンが伸びると急に不利になる」と覚えておくと理解しやすいです。
先端に集中荷重が作用するときのたわみは下式で計算します。
δ=PL3/3EI
単純梁のたわみは、分母の係数が「1/48」なので、片持ち梁は10倍以上のたわみが大きいですね。
等分布荷重作用時のたわみは下式です。
δ=wL4/8EI
集中荷重に比べて、分母の係数が大きいのでたわみが小さいとわかります。荷重は集中的に作用するより、分布させた方が良いということですね。
片持ち梁のたわみについては、下記が参考になります。
片持ち梁を使う場合、いくつか注意点があります。前述した項目と重複しますが、説明します。
・たわみが大きくなる
・鉛直震度を考慮する
1つは、たわみです。静定構造なので、たわみが大きくなると崩壊に繋がります。2つめは鉛直震度です。地震は水平だけでなく、鉛直にも揺れます。この鉛直方向の地震力を鉛直震度といいます。詳細は下記の記事が参考になります。
鉛直震度とは?意味・水平震度との違いと片持ち梁・庇の設計への影響
下図の鉄骨片持ち梁の、必要な断面係数と断面二次モーメントを算定してください。ただし、応力は長期時でfb=156、変形制限はスパンの1/300以下とします。
M=10×3=30kNm
です。fb=156なので、Zを逆算すると
Z=M/fb=30×106/156≒192×103mm3
たわみの公式から、Iを逆算します。
I=PL3/3Eδ=10×103×30003/(3×2.05×105×10mm)
=4390×104
なお、鉄骨梁はせん断力が問題になることは、ほとんどありません。今回は計算を省略しました。後述するRC造では、せん断の検討は必須です。
下図のRC造片持ち梁の応力を計算してください。
M=10×3=30kNm
Q=10kN
但し、鉛直震度を長期で考慮します。よって設計応力は、
M=30×2=60
Q=10×2=20
となります。
混同しやすい用語
片持ち梁
一端固定・他端自由の梁です。固定端に鉛直反力とモーメント反力が生じます。端部のみで支持されるため、たわみが大きくなりやすいです。
単純梁
両端ピン支持の梁です。両端に鉛直反力が生じ、中央部でたわみが最大になります。片持ち梁より応力・たわみが小さくなります。
片持ち梁を整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 先端集中荷重の応力 | Q=P、M=PL | 固定端で最大 |
| 先端集中荷重のたわみ | δ=PL3/3EI | 単純梁の10倍以上 |
| 等分布荷重のたわみ | δ=wL4/8EI | 集中荷重より小さい |
今回は片持ち梁について説明しました。片持ち梁は静定構造です。計算は簡単ですが、注意すべき構造です。たわみの計算は特に重要です。十分な余裕をもった設計を心がけたいですね。下記も併せて学習しましょう。
梁の種類とは?大梁・小梁・片持ち梁の違いと材料別(RC・鉄骨・木造)の断面形状
片持ち梁の曲げモーメントを求める例題|集中荷重・等分布荷重の解き方を解説
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
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