建築学生が学ぶ構造力学

建築学生が学ぶ構造力学
  1. HOME > 構造力学の基礎 > 片持ち梁とは?

片持ち梁とは?固定端・自由端・曲げモーメント・たわみをわかりやすく解説

この記事の要点

片持ち梁とは、一端を固定端、もう一端を自由端とした梁です。片持ちはり・片持ちばり、カンチレバーとも呼ばれます。

片持ち梁は、庇やバルコニーのように片側から突き出す構造で使われます。荷重を受けると、固定端側に曲げモーメントとせん断力が大きく生じます。

片持ち梁は見た目が軽快で空間を広く使える一方、たわみが大きくなりやすい構造です。設計では固定端の応力と変形量の確認が重要です。

この記事では、片持ち梁がどのような梁なのか、固定端と自由端の違い、荷重を受けたときにどこが危険になるのかを整理します。

片持ち梁は、一端を固定端、もう一端を自由端にした梁です。片持ちはり、片持ちばり、カンチレバーとも呼ばれます。

ラーメン構造から片持ち梁が突き出している様子を示す立体図

要するに、片側だけで支えられている梁です。片持ち梁は、建築物の様々な箇所に利用されています。

今回は、そんな片持ち梁の構造、様々な荷重による応力、たわみと例題を紹介します。

【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット

片持ち梁とは?

片持ち梁とは、一端を固定端、もう一端を自由端とした梁です。下図のように、片側だけで梁を支え、反対側は支えのない状態になります。

片持ち梁

片持ち梁は軽快な構造なので、建築家や構造家に好まれます。例えばバルコニーや屋根の庇、これらは片持ち形状です。


片持ち梁は、広い空間がとれます。見た目も軽やかなので、街を歩けば1つは片持ち梁が見つかるでしょう。

ただし、片持ち梁は自由端側ではなく、固定端側に大きな力が集まります。先端に荷重がかかると、根元である固定端に曲げモーメントが大きく生じ、たわみも大きくなりやすいです。ここが、片持ち梁を考えるうえで一番大事なところです。

片持ち梁のメリットとデメリット

片持ち梁は、片側だけで支える構造だからこそ、良い点と注意すべき点がはっきり分かれます。下記にメリットとデメリットを整理します。

項目 メリット デメリット・注意点
空間 柱を減らせるため、下部の空間を広く使える 支持する側の固定端に大きな力が集まる
見た目 軽快で、浮いているようなデザインにしやすい 見た目以上に構造的な負担は大きい
構造 庇、バルコニー、駐車場の上屋などに使いやすい 固定端で曲げモーメントが大きくなり、たわみも大きくなりやすい
設計 柱のない開放的な計画にしやすい 接合部、部材寸法、変形量に余裕をもった設計が必要

メリット

メリットは下記です。


・空間を広くとれる

・軽快な構造とできる


片持ち梁は、意匠的に多くのメリットがあります。下図をみてください。柱2本で支える構造と、柱1本で片持ち梁とする構造があります。

片持ちラーメン

どちらが空間を広くとれるのでしょうか。柱が無い分、当然片持ち梁の構造ですね。よって駐輪場や駐車場の上屋に、上図の構造が利用されます。


また日建設計のホキ美術館は片持ち構造を利用した建物です。まるで浮いている構造で驚きます。


このように、片持ちであること(柱がない)をデザインに活かす建築もあります。一般の方がみると、「浮いている」ように見えますね。

デメリット

デメリットは下記です。


・固定端に曲げモーメントが大きく生じる

・静定構造なので、固定端に問題があると直ちに崩壊する(冗長性が無い)

・部材が大きい

・変形が大きい


片持ち梁は構造的なデメリットが目立ちます。静定構造のため、固定端に問題あると成立しません。例えば、RC造の片持ち梁の場合、固定端にひび割れが生じると、変形が大きくなるかもしれません。


構造設計者としては、不安の大きい構造といえます。特に接合部は、余裕をもった設計が必要です。


また、片持ち梁は応力や変形が大きくなります。そのため部材寸法は、普通の梁と比べて大きいです。

片持ち梁の応力計算と公式

片持ち梁の応力計算でまず押さえたいのは、曲げモーメントが固定端で最大になることです。自由端に荷重がかかると、根元である固定端に大きな曲げが生じます。

片持ち梁の応力計算は簡単です。たわみの計算は少々暗記が必要なので慣れましょう。後述しますが、実務では片持ち梁の設計をするとき、存在応力の2倍を考慮します。これは、「鉛直震度」といって、鉛直方向の地震力です。


なお、片持ち梁の曲げモーメント図、せん断力図、荷重図の関係を示します。

せん断力図と曲げモーメント図の関係

図中の記号の意味

記号 意味 計算での見方
L 片持ち梁の長さ 自由端から固定端までの距離です。片持ち梁では、固定端側で応力が大きくなります。
x 自由端からの距離 自由端を0として、固定端へ向かう距離です。xが大きくなるほど固定端に近づきます。
P 集中荷重 一点に作用する荷重です。自由端に作用すると、固定端の曲げモーメントはPLになります。
w 分布荷重 梁に連続して作用する荷重です。等分布荷重では、固定端の曲げモーメントはwL2/2になります。
M 曲げモーメント 梁を曲げようとする力です。片持ち梁では、基本的に固定端で最大になります。
Q せん断力 梁をずらすように働く力です。荷重の種類によって、一定・直線・曲線になります。

荷重の種類と応力図の見方

荷重の種類 せん断力図 曲げモーメント図 押さえる点
荷重なし Q=0 M=0 荷重がないため、せん断力も曲げモーメントも生じません。
自由端にモーメントM Q=0 Mは一定 モーメントだけが作用するため、せん断力は生じません。
自由端に集中荷重P Qは一定 Mは直線 固定端で最大になります。最大曲げモーメントはPLです。
等分布荷重w Qは直線 Mは二次曲線 固定端で最大になります。最大曲げモーメントはwL2/2です。
三角形分布荷重w Qは二次曲線 Mは三次曲線 荷重が固定端側ほど大きいため、せん断力も曲げモーメントも固定端側で最大になります。

鉛直震度の意味、片持ち梁の応力は下記が参考になります。

鉛直震度とは?意味・水平震度との違いと片持ち梁・庇の設計への影響

片持ち梁の応力計算|曲げ応力・せん断応力の公式と単純梁との比較

先端集中荷重時の応力

先端に集中荷重が作用するときの片持ち梁の応力は下記となります。

先端集中荷重時の応力

Q=P

M=PL


簡単ですよね。せん断力は、先端荷重そのままです。また、曲げモーメントは先端荷重PとスパンLを掛けた値です。曲げモーメントは固定端で最大となります。

つまり、片持ち梁では先端よりも根元側が重要です。曲げモーメント図を描くと、自由端で0、固定端で最大になる形になります。

先端荷重の片持ち梁の計算は?曲げモーメント・たわみの公式と計算例

等分布荷重時の応力

等分布荷重が作用するときの片持ち梁の応力は下記です。

等分布荷重時の応力

Q=wL

M=wL2/2


wは等分布荷重です。ポイントは、スパンの二乗になることです。曲げモーメント図を描くと、自由端側で小さく、固定端側で最大となる二次曲線になります。

等分布荷重が作用する片持ち梁の計算|曲げモーメント・せん断力・たわみの公式

片持ち梁のたわみ

片持ち梁のたわみは、応力以上に注意します。スパンが長い場合、応力よりもたわみが変形制限を満足しないことが多いからです。

特に片持ち梁は、単純梁に比べてたわみが大きくなりやすいので、公式の形だけでなく「スパンが伸びると急に不利になる」と覚えておくと理解しやすいです。

先端集中荷重時のたわみ

先端に集中荷重が作用するときのたわみは下式で計算します。


δ=PL3/3EI


単純梁のたわみは、分母の係数が「1/48」なので、片持ち梁は10倍以上のたわみが大きいですね。

等分布荷重時のたわみ

等分布荷重作用時のたわみは下式です。


δ=wL4/8EI


集中荷重に比べて、分母の係数が大きいのでたわみが小さいとわかります。荷重は集中的に作用するより、分布させた方が良いということですね。


片持ち梁のたわみについては、下記が参考になります。

片持ち梁のたわみを求める方法

片持ち梁の注意点

片持ち梁を使う場合、いくつか注意点があります。前述した項目と重複しますが、説明します。


・たわみが大きくなる

・鉛直震度を考慮する


1つは、たわみです。静定構造なので、たわみが大きくなると崩壊に繋がります。2つめは鉛直震度です。地震は水平だけでなく、鉛直にも揺れます。この鉛直方向の地震力を鉛直震度といいます。詳細は下記の記事が参考になります。

鉛直震度とは?意味・水平震度との違いと片持ち梁・庇の設計への影響

例題 鉄骨造片持ち梁の計算

下図の鉄骨片持ち梁の、必要な断面係数と断面二次モーメントを算定してください。ただし、応力は長期時でfb=156、変形制限はスパンの1/300以下とします。

鉄骨造の片持ち梁

M=10×3=30kNm


です。fb=156なので、Zを逆算すると


Z=M/fb=30×106/156≒192×103mm3


たわみの公式から、Iを逆算します。


I=PL3/3Eδ=10×103×30003/(3×2.05×105×10mm)

=4390×104


なお、鉄骨梁はせん断力が問題になることは、ほとんどありません。今回は計算を省略しました。後述するRC造では、せん断の検討は必須です。

例題 RC造片持ち梁の計算

下図のRC造片持ち梁の応力を計算してください。

RC造片持ち梁の計算

M=10×3=30kNm

Q=10kN


但し、鉛直震度を長期で考慮します。よって設計応力は、


M=30×2=60

Q=10×2=20


となります。

混同しやすい用語

片持ち梁

一端固定・他端自由の梁です。固定端に鉛直反力とモーメント反力が生じます。端部のみで支持されるため、たわみが大きくなりやすいです。

単純梁

両端ピン支持の梁です。両端に鉛直反力が生じ、中央部でたわみが最大になります。片持ち梁より応力・たわみが小さくなります。

片持ち梁を整理した表を示します。

項目内容備考
先端集中荷重の応力Q=P、M=PL固定端で最大
先端集中荷重のたわみδ=PL3/3EI単純梁の10倍以上
等分布荷重のたわみδ=wL4/8EI集中荷重より小さい

まとめ

今回は片持ち梁について説明しました。片持ち梁は静定構造です。計算は簡単ですが、注意すべき構造です。たわみの計算は特に重要です。十分な余裕をもった設計を心がけたいですね。下記も併せて学習しましょう。

梁の種類とは?大梁・小梁・片持ち梁の違いと材料別(RC・鉄骨・木造)の断面形状

片持ち梁のたわみを求める方法

片持ち梁の曲げモーメントを求める例題|集中荷重・等分布荷重の解き方を解説

【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット

この記事の内容を○×クイズで確認する

この記事で学んだ内容は、無料の○×問題集でも確認できます。

意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

ゼロ所長の構造力学問題集で確認する

ハナダユキヒロ

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務。2010年より「建築学生が学ぶ構造力学」を運営(16年以上)。著書「わかる構造力学」「わかる構造力学(改訂版)」(工学社)。

▼用語の意味知らなくて大丈夫?▼

建築学生が学ぶ「構造力学」の用語集

▼同じカテゴリの記事一覧▼

▼カテゴリ一覧▼

▼他の勉強がしたい方はこちら▼

建築構造がわかる基礎図解集

【無料】ゼロ所長が解説!建築士試験の構造を効率よく学ぶ

・試験に出るポイントをわかりやすく解説

・今すぐnoteで学ぶ ⇒  ゼロから学ぶ建築士試験の構造

わかる1級建築士の計算問題解説書

計算の流れ、解き方がわかる!1級建築士【構造】計算問題解説集

わかる2級建築士の計算問題解説書!

【30%OFF】一級建築士対策も◎!構造がわかるお得な用語集

建築学生が学ぶ「構造力学」の用語集
pdf版の学習記事

プロフィール

建築の本、紹介します。▼

すぐにわかる構造力学の本

同じカテゴリの記事一覧

Topへ >>

  1. HOME > 構造力学の基礎 > 片持ち梁とは?
  2. 1級の過去問(計算)解説
  3. わかる建築構造の用語集・図解集
  4. 1頁10円!PDF版の学習記事