この記事の要点
ミーゼスの降伏条件式(von Mises yield criterion)とは、複合応力状態での降伏を判定する条件式です。
純引張の降伏応力fyとせん断降伏応力τyの関係はτy=fy/√3(≒0.577fy)と導かれます。
建築基準法の鋼材の許容せん断応力度fsは、この関係を踏まえてfs=fy/1.5√3≒0.385fyに相当する値が設定されています。
梁のウェブせん断検討・ボルト等の設計でせん断許容応力度を使う場面で参照する基礎知識です。
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
構造物は、部材に定められた許容応力度を設計応力度が超えないようにする「許容応力度設計」を勉強します。この設計法は、最も理解しやすく単純です。許容応力度設計に関しては下記の記事が参考になります。
許容応力度計算 意味 外力 応力度 安全率 構造設計 一次設計
材料の許容応力度は、建築基準法で決められています。例えば鋼材や溶接部の許容せん断応力度は、
F/√3
です。溶接部の許容応力度や材料強度に関しては、下記の記事が参考になります。
溶接部の強度とは?溶接部の耐力の計算方法と許容応力度、材料強度
なぜ許容せん断応力度は、√3で割るのでしょうか。実はミーゼスの式が関わっています。今回は、許容せん断応力度と、ミーゼスの降伏条件式の関係について説明します。
100円から読める!ネット不要!印刷しても読みやすいPDF記事はこちら⇒ いつでもどこでも読める!広告無し!建築学生が学ぶ構造力学のPDF版の学習記事
まず許容応力度について、当たり前のことを再確認しておきます。
さて、鋼構造では、許容応力度をF値から定めます(F値とは材料強度のことです)。例えばSS400(SN400)材のF値は、
F値=235N/mm2
です。
建築物の構造設計では、外力を長期荷重と短期荷重という分類します。長期荷重、短期荷重に関しては下記の記事が参考になります。
つまり、外力である長期・短期荷重に対する許容応力度を定める必要があります。長期応力度に対する許容応力度はF/1.5で表します。短期応力度に対する許容応力度はF/1.5×1.5=Fで表します。
前述したように、少しだけ特殊なのはせん断応力度です。長期応力度に対するせん断応力度は
です。これは、「ミーゼスの降伏条件式」から導かれたものです。
例えば、接合部のように複数の応力が作用する場合、どの応力が降伏又は破断の作用を引き起こしているのか、実は判断できません。単純に、一方向へ引張れば、部材に引張応力が作用することは明らかですが、複数の応力が作用すれば迷います。
そこで先人たちが実験を繰り返し、降伏条件をモデル化することで、経験的に降伏条件式を導きました。その1つがミーゼスの降伏条件式です。その他にはトレスカのモデルも有名ですが、せん断応力度を理論的に導くことのできる前者が好まれます。
さて、ミーゼスの降伏条件式は以下のように定義(式は2次元問題で考えましょう。)されています。
※(実はこの式は、ある部位の、せん断に起因する歪エネルギー密度が、降伏耐力に対応する値に達したとき、降伏が始まるという仮定をたて導出されています。もちろん、本来なら定義式を導出する必要がありますが、この章での主旨と異なるので、省きます。)
ここで、純せん断状態を考慮すれば、
です。よって、式を書きなおすと
ですね。よって、
となり、
です。これは、短期応力に対するせん断応力度なので、あとは1.5で除すことで長期応力に対する許容応力度へと変換します。
混同しやすい用語
トレスカの降伏条件式
ミーゼスと並ぶ降伏条件のモデル。
ミーゼスに対して、せん断応力度を理論的に導きにくく、設計規準ではミーゼス式が好まれる。
許容せん断応力度に関する重要ポイントを下表にまとめました。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 許容せん断応力度の式 | fs = F/√3(長期:×1/1.5) | ミーゼスの降伏条件式に基づく |
| ミーゼス条件式 | 多軸応力下の降伏判定に使用 | トレスカ式より設計規準で好まれる |
| 溶接部への適用 | 鋼材・溶接部ともに同じ式を適用 | 建築基準法で規定 |
今回は、許容せん断応力度とミーゼスの降伏条件式の関係を説明しました。少々、難解な問題ですが、許容せん断応力度の意味が少しは理解いただけたと思います。以上、今回の記事が参考になれば幸いです。
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
この記事の内容を○×クイズで確認する
この記事で学んだ内容は、無料の○×問題集でも確認できます。
意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
試験では、鋼材の許容せん断応力度がF/1.5×1/√3(長期)であることと、その根拠がミーゼスの降伏条件式である点が問われる。(一級建築士 頻出:鋼材の許容せん断応力度F/1.5×1/√3(長期)とミーゼスの降伏条件式が根拠であることが繰り返し出題)