現代建築のほとんどはラーメン構造という構造形式を採用しています。ラーメン構造は、柱と梁が接合される部分(仕口と言います)を一体化した構造です。
このとき問題になるのが、「柱と梁をどうすれば一体化できるか?」ということ。先に答えを言えば、上記の問題を解決する部材が「ダイアフラム」です。
今回は、そんなダイアフラムがなぜ必要か、さらにたった3つのダイアフラムの種類と特徴を説明します。
冒頭で説明したように、ダイアフラムは柱と梁を一体化するために必要な鋼板のことです。一般的なラーメン構造は、柱を角型鋼管、梁をH型鋼とします。
なぜかというと、角型鋼管は断面に方向性がありません。つまり、どの方向から地震力が作用しても断面性能に違いが無いのです。この性質は柱にとって好都合です。また角型鋼管は、H型鋼のような開放型断面に比べて断面性能も高い。そのため柱は角型鋼管が用いられます。
梁はH型鋼を用いますが、やはり梁として断面性能が高いこと、納まりが良く鋼材量が減るために用いられます。
さて、柱が角型鋼管で梁がH型鋼の場合、両者が接合される部分の拡大図を描くと下記のようになります。
そのまま柱に梁のフランジやウェブを溶接することも可能です。しかし、そのまま一体化しても力は上手に伝達されません。
なぜなら柱が中空なので、梁に力が作用すると柱が押しつぶされてしまうわけです。
そのため鋼管の内側、あるいは外側には、鋼管が潰れてしまわぬようダイアフラムを付けます。
ダイアフラムには3つの種類がある、と書きました。これは鋼管の内側か外側に付くのか、という違いで、柱と梁を一体化する、および中空の鋼管が潰れないためという目的は同じです。
ここではダイアフラムの3つの種類について説明します。
通しダイアフラムは、現在最も主流な方式です。納まりが簡単で明快な点が好まれています。下図をみてください。
角型鋼管ををぶつ切りにして、ダイアフラムを取り付けます。ダイアフラムと鋼管は突合せ溶接により一体化されます。さらに、ダイアフラムと梁のフランジを突合せ溶接で一体化します。
これが通しダイアフラムと呼ばれる形式です。ダイアフラムは厚い鋼板とし、梁フランジ厚の2サイズアップが原則です。
次に内ダイアフラムです。この形式は、鋼管の内側にダイアフラムを溶接する方法です。下図を見てください。
内ダイアフラム形式にすると、見た目はスッキリするのですが、ダイアフラムを鋼管内部に溶接するので少し面倒ですね。
外ダイアフラムアは、溶接が面倒なこと力の伝達が難しいなど、積極的に採用されない方法です。下図を見てください。
鋼管外側周囲とダイアフラムを一体化し、ダイアフラムと梁フランジを一体化する方式です。御覧の通り、ダイアフラムの断面積(オレンジの部分)は、先に説明した方式よりも少ないですね。
そのため、外ダイアフラムはダイアフラムが大きくて不格好な納まりです。
ここではダイアフラムの納まりで注意すべき点を2つまとめました。
梁に段差がある場合、ダイアフラムの納まりに注意が必要です。下図を見てください。
梁に段差がある場合、梁段差の距離Δtの大きさが重要です。一般的には100〜150mm以上無ければ内ダイアフラムの溶接ができないと言われています。要するに、中途半端な梁段差はダメ。段差をつけるなら極端につけるべきです。
このように鉄骨造では、納まりによって梁断面が左右されることもあります。
もう1つ注意したい点は、斜めの梁を受けるダイアフラムです。ダイアフラムの厚みは、梁フランジの2サイズアップと説明しました。一般的な納まりの場合、その通りですが斜め梁を受けるなら、少し様子が違います。下図を見てください。
梁が斜めで、ダイアフラムは水平の向きです。そうなると、梁フランジの板厚は見かけより大きくなります(ちくわを真っすぐ切るのと、斜めに切るのでは、長さが違いますよね?)。
そのためダイアフラムを余分に厚くしないと、梁フランジを受けきれないのです。
今回はダイアフラムの納まりや注意点を説明しました。今回の記事を読めばダイアフラムの概要は一通りマスターできると思います。
実は、構造計算で求められるダイアフラムの細かい計算もあるのですが、それはまたの機会に説明しましょう。