建築学生が学ぶ構造力学

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ひずみテンソルとは?3次元ひずみの行列表現と有限要素法への応用

この記事の要点

構造解析のFEMソフトで3次元の応力・ひずみ結果を見るとき、テンソル表記の意味が分かると、解析結果の読み取りが格段に楽になります。

剪断成分と直応力成分の意味を把握することが出発点です。

この記事では、ひずみテンソルの各成分の意味と、FEM解析での応用を解説します。

非線形項(変位勾配の2次の項)を無視した線形化ひずみテンソルは小変形理論(弾性力学・有限要素法)の基礎として広く用いられ、ラグランジュひずみの線形近似として得られる。

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ひずみテンソルを求める


まず、PQ間の長さに関して関係式をたててみましょう。前のページで、PQをdxiとおきました。よって、


PQ間の長さに関して関係式


です。同じくTR間も定義すると、


TR間の長さに関して関係式


となります。


ひずみの概念として、「変形した長さ÷もとの長さ」です。よって、まずは任意の物体に関する変形量を求めます。


クロネッカーのδを用いて下添え字をijと区別すると、以下のように式を整理できます。


任意の物体に関する変形量


また、以上の式を関連付けたので


任意の物体に関する変形量2


となります。擬標の扱いに慣れていない人は、急に添え字がkに替っていて戸惑うかもしれませんが、全く同じ式を変換しただけですね。良く見るとわかりますよ。


以上の式に関して次式を定義します。


任意の物体に関する変形量3


よって、ひずみの式は結局、


ひずみテンソル


です。これを「ひずみテンソル」といいます。

さて、変位ベクトルと位置ベクトルの関係は以下のように、


変位ベクトルと位置ベクトルの関係


ですから、変位した後の位置ベクトルは変位ベクトルと元の位置ベクトルによって表すことができます。


変位した後の位置ベクトルは変位ベクトルと元の位置ベクトルによって表す


よって、


クロネッカーのδと全く同じ式


さらに、以下の式はクロネッカーのδと全く同じ意味なので、



です。さて、以上を踏まえて歪テンソルの式をわかりやすく整理してみましょう。


歪テンソルの式をわかりやすく整理


ですね。また、テンソルの計算から


歪テンソルの式


ということがわかります。以上を整理すると、


歪テンソルの式(非線形の項はあり)


です。非線形の項は無視すると、


歪テンソルの式(非線形の項は無視)


となります。

混同しやすい用語

ラグランジュひずみと線形(微小変形)ひずみテンソル

ラグランジュひずみ(グリーン・ラグランジュひずみ)は変位勾配の線形項と非線形(2次)項の両方を含む有限変形に対応した正確なひずみ定義である。

線形ひずみテンソル(微小変形理論のひずみ)はラグランジュひずみの非線形項を無視した近似で、変位・変形が十分小さい場合(弾性力学・小変形FEM)に適用される。

ひずみテンソルεijとクロネッカーのデルタδij

クロネッカーのデルタδijはi=jのとき1、i≠jのとき0となる恒等テンソルで、変形前・変形後の位置ベクトルの関係式整理やひずみの式導出の中間段階でよく登場する補助テンソルである。

ひずみテンソルεijはi=jのとき垂直ひずみ(伸縮)を、i≠jのとき工学ひずみの1/2のせん断成分を表す物理量であり、δijとは意味・性質が異なる。

ひずみテンソルの計算例

条件
変位勾配 ∂u/∂x0.003
変位勾配 ∂v/∂y0.001
変位勾配 ∂u/∂y0.002
変位勾配 ∂v/∂x0.004

ひずみテンソル εij = (∂ui/∂xj + ∂uj/∂xi)/2 の各成分を求める:

εxx = ∂u/∂x = 0.003

εyy = ∂v/∂y = 0.001

εxy = (∂u/∂y + ∂v/∂x)/2 = (0.002 + 0.004)/2 = 0.003

答え:ひずみテンソル [εxx εxy; εxy εyy] = [0.003 0.003; 0.003 0.001](対称テンソル)

ひずみテンソルと工学的せん断ひずみの比較表

定義値の関係
ひずみテンソルεij(∂ui/∂xj + ∂uj/∂xi)/2対称テンソル(εij = εji)
工学的せん断ひずみγxy∂u/∂y + ∂v/∂xγxy = 2εxy(テンソルの2倍)
回転テンソルωij(∂ui/∂xj − ∂uj/∂xi)/2反対称テンソル(ωij = −ωji)

よくある誤解

一問一答

Q. ひずみテンソルの対角成分εxx, εyyは何を表すか?

A. 各方向の垂直ひずみ(伸び縮み)。

εxx = ∂u/∂x はx方向の線素の単位長さあたりの変化量。

Q. 工学的せん断ひずみγxyとテンソルせん断ひずみεxyの関係は?

A. γxy = 2εxy。

FEMの剛性マトリクス計算ではテンソル定義(εxy)を使い、材料試験の結果整理では工学的定義(γxy)を使うことが多い。

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ハナダユキヒロ

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務。2010年より「建築学生が学ぶ構造力学」を運営(16年以上)。著書「わかる構造力学」「わかる構造力学(改訂版)」(工学社)。

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