この記事の要点
構造力学で「せん断ひずみγxy」と書いていた値が、弾性力学のテンソル表記では「εxy=γxy/2」になって混乱した経験がある。
工学ひずみとひずみテンソルは同じ変形を表しているのに、係数が違う。
この記事では工学ひずみとひずみテンソルの定義の違い・せん断成分の1/2係数の意味・2次元問題での対応を解説する。
軸変形では工学ひずみとひずみテンソルの値は一致するが、せん断変形では2倍の差があるため、フックの法則の適用時に混乱しないよう両者の定義の違いを正確に把握しておく必要がある。
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
ひずみテンソルの工学的な意味を考えてみましょう。
ひずみテンソルの式は3次元ですが、簡単のために2次元の問題で考えます。下の図のように棒の変形を考えます。
例えば、σxの応力によってΔlだけ変形するとき変位は
です。以上のことから、テンソル表示を行っている変位u1を工学的に表してみましょう。長さや変位は1:1の関係で対応しているので、
ですね。今、x1軸方向の変位のみ考えているので、ひずみテンソルの式は
となります。一方、軸方向のひずみは「変形した長さ÷もとの長さ」ですので、上図より
です。以上のように、
同様の手順で、x2,x3方向について考えると、
となります。
図に示すような物体が純せん断を受けている状態の変形を考えます。
ブロックがせん断力τ12を受けて微小な角θだけせん断変形した場合を考えます。ひずみテンソルの式から、
ですね。また、材料力学では以下のように工学ひずみを考えました。
角度が微小と考えれば以上の関係が成り立ち、
よって、
同様に他の軸についても考えると、
です。
混同しやすい用語
工学ひずみ(せん断) vs ひずみテンソル(せん断)
工学せん断ひずみγxyは変形角の和(∂u/∂y+∂v/∂x)として定義され、実験や材料力学で広く使われる。
ひずみテンソルのせん断成分εxyに対してγxy/2であり、テンソルとして座標変換則に従うために係数1/2が必要となる点が異なる。
軸ひずみ vs せん断ひずみ
軸ひずみεxxは変位uのx方向偏微分(∂u/∂x)であり、工学ひずみとひずみテンソルで値が一致する。
せん断ひずみに対して工学表示とテンソル表示で2倍の差が生じるため、フックの法則適用時に注意が必要である。
棒材に引張力が作用して変形した場合の工学ひずみを計算してみましょう。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 元の長さ L? | 100 mm |
| 変形後の長さ L | 100.2 mm |
| 伸び ΔL | 0.2 mm |
工学ひずみ ε = ΔL/L? = 0.2/100 = 0.002(= 2000με = 0.2%)
ひずみテンソル成分 ε?? = ∂u?/∂x? = ΔL/L? = 0.002(軸変形の場合は工学ひずみと一致)
| 成分 | 工学的表記 | テンソル表記 |
|---|---|---|
| 軸ひずみ(x方向) | εx = ∂u/∂x | ε?? = ∂u?/∂x? |
| せん断ひずみ | γxy = ∂u/∂y + ∂v/∂x | ε?? = (1/2)(∂u?/∂x? + ∂u?/∂x?) |
| 関係 | γxy = 2ε??(せん断成分はテンソルの2倍) | |
Q1:元の長さ200mm の棒が201mmに伸びたとき、工学ひずみεは?
A1:ε = (201-200)/200 = 1/200 = 0.005(0.5%)
Q2:工学せん断ひずみ γxy = 0.004 のとき、ひずみテンソル成分 ε?? は?
A2:ε?? = γxy/2 = 0.004/2 = 0.002
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
工学ひずみとひずみテンソルは、軸変形とせん断変形でどう違いますか?
軸変形(垂直ひずみ)では工学ひずみとひずみテンソルの値は一致します(εxx=∂u/∂x)。一方せん断変形では差が生じ、工学せん断ひずみγxy=2εxy(テンソル成分の2倍)になります。
ひずみテンソルのせん断成分εxyに1/2の係数が付くのはなぜですか?
工学せん断ひずみγxy=∂u/∂y+∂v/∂xに対し、ひずみテンソルのせん断成分はεxy=γxy/2と定義されます。テンソルとして座標変換則に従うために、この係数1/2が必要となります。
工学せん断ひずみγxy=0.004のとき、ひずみテンソル成分εxyはいくつですか?
εxy=γxy/2=0.004/2=0.002です。軸ひずみは工学ひずみとテンソルで一致しますが、せん断成分はこのように2倍の差がある点に注意します。
