この記事の要点
応力テンソルの座標変換は変換行列(方向余弦)を用いて行われ、新しい座標系での応力成分を旧座標系の応力テンソルと方向余弦の積で求めることができる。
座標変換によって主応力面(せん断応力がゼロとなる面)を見つけることができ、主応力はその方向で作用する垂直応力の極値として定義される。
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ある直交座標系xiがθだけ回転しx'iの直交座標系となったときの座標変換について考えましょう。下図のように、x3の軸を起点としてθだけ回転させます。このとき、座標変換マトリクスは方向余弦より以下のように求めることができます(※誘導過程が知りたい人は当サイトの「座標変換について」をご覧ください)。

さて、元の座標系xiに応力テンソルが作用していたとします。この応力をx'iの直交座標系の成分に変換することを考えましょう。構造力学の基礎で取り扱ってきた、いわゆる「応力」は二次元の問題に縮退しているので、あまり気にならない問題でした。しかし、本質的に応力とはテンソルであるため、テンソルの座標変換をしっかりと理解しておく必要があります。
ベクトルや2階のテンソルの座標変換は以下のように定義されています。
ベクトル(1階のテンソル)の場合
のように変化するとき、viのことをベクトルという。
テンソル(2階のテンソル)の場合
のように変換されるとき、Tijのことを2階のテンソルといいます。例えば、2階のテンソルは「応力」であり、「歪」です。また、この2階のテンソルをさらに拡張したものが3階のテンソルや4階のテンソルです。4階のテンソルとは「弾性係数」に当たります。また、この定義を一般化すると、n階のテンソルの座標変換を表現することが出来ますね。
さて、xiの座標系がx'iにうつったときのテンソルの座標変換は次式のように
で表されます。この式を応力で考えると、
となりますね。一番右の座標変換マトリクスが元の行列の転置行列となっていますが、これは、T'ij で列の値であった「j」がQjnでは行の値となっているからです。以上のマトリクスを解くと、
ここで、l=cosθ, m=sinθとします。また、式が長くなるので、後は各自解いて整理してみてください。上記で求めた式を纏めます。
となります。2次元の式に纏めると、
混同しやすい用語
座標変換 vs テンソル変換
座標変換は座標軸の向きを変える操作であり、変換行列(方向余弦lij)を用いて新旧座標の関係を表す。
テンソル変換に対して応力テンソルは2階のテンソルであるため、変換行列を2回掛けて成分を求める(σ'ij = lik・ljm・σkm)点が特徴である。
主応力 vs 主せん断応力
主応力とは座標変換によりせん断応力成分がゼロになる特定の面(主応力面)に作用する垂直応力のことで、σ1、σ2、σ3で表される。
主せん断応力に対して主応力は垂直応力の極値であり、主応力面とは45°傾いた面に最大せん断応力が生じる。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 元の座標系でのσx | 100 MPa |
| 元の座標系でのσy | 20 MPa |
| 元の座標系でのτxy | 30 MPa |
| 回転角θ | 30° |
座標変換式: σx' = (σx+σy)/2 + (σx?σy)/2 × cos2θ + τxy × sin2θ
σx' = (100+20)/2 + (100?20)/2 × cos60° + 30 × sin60°
σx' = 60 + 40×0.5 + 30×0.866 = 60 + 20 + 25.98 ? 106 MPa
τx'y' = ?(σx?σy)/2 × sin2θ + τxy × cos2θ = ?40×0.866 + 30×0.5 ? ?19.6 MPa
答え:θ=30°の座標系で σx' ? 106MPa、τx'y' ? ?19.6MPa
| 項目 | 式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 回転後の法線応力σx' | (σx+σy)/2 + (σx?σy)/2・cos2θ + τxy・sin2θ | θによって変化する |
| 主応力σ1, σ2 | (σx+σy)/2 ± √[((σx?σy)/2)2 + τxy2] | τ=0となる特別な角度での応力 |
| 最大せん断応力τmax | √[((σx?σy)/2)2 + τxy2] | 主応力方向から45°ずれた面 |
Q. 主応力とは何か?
A. せん断応力がゼロになるような座標系(主応力方向)での法線応力。その方向での応力が最大・最小値(主応力σ1, σ2)となる。
Q. 平面応力状態での主応力の式は?
A. σ1, σ2 = (σx+σy)/2 ± √[((σx?σy)/2)2 + τxy2]。±の符号でそれぞれ最大・最小主応力が得られる。
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験では主応力・最大せん断応力の値と方向がよく問われ、モールの応力円を用いた解法が有効なため座標変換の概念をしっかり理解しておくとよい。
応力テンソルの変換式を丸暗記するのではなく、方向余弦の定義と二階テンソルの変換則をセットで押さえることで、異なる問題設定にも対応できるようになる。