この記事の要点
座標変換マトリクスは旧座標系から新座標系への変換を表す行列であり、方向余弦(各軸間のcos値)を成分として構成され、テンソル量の座標変換に利用される。
座標変換マトリクスは直交行列(逆行列=転置行列)という性質を持ち、この性質を利用することで応力・ひずみテンソルや剛性マトリクスの座標変換が効率的に行える。
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座標変換マトリクスについて理解しましょう。
下の図のように2つの右手系の直角座標系を考え、それぞれの基底ベクトルをe1, e2, e3とします。一方の座標系の軸をx1, x 2, x 3として定め、もう片方の座標系は角度をつけた座標系とし、この軸をx'1, x' 2, x' 3とします。
このとき、基底ベクトルの関係は以下のように示すことが出来ますね。
ei・ej=δij
e'i・e'j=δij
「・」は内積を表しています。ベクトルの内積は数学で習ったように、成分の足し合わせで示すことができます。i,j= 1,2,3ですから、よって
ei・ej =e1e1+ e1e2+ e1e3+ e2e2+ e2e1+ e2e3+e3e3+e3e1+e3e2=3
です。一方、
δij= δ1δ1+δ1δ2+δ1δ3+δ2δ2+δ2δ1+δ2δ3+δ3δ3+δ3δ1+δ3δ2=3
となり、上記に示した式の関係が成り立つわけです。
さて、座標系における任意の位置ベクトルuは、それぞれの成分xi, x'iと基底ベクトルによって表すことができます。
u= xjej=x'je'j
さらに基底ベクトルeiと内積をとります。
xj(ej・ei)=x'j(e'j・ei)
このとき、元の座標系に関する基底ベクトルと、回転したときの座標系に関する基底ベクトルの内積は以下のように
(e'j・ei)=Qji
と定義します。よって、
xjδij= x'j Qji
さらに、
xjδij = x1δ11+ x1δ21+x1δ31+x2δ12+x2δ22+x2δ32+x3δ13+x3δ23+x3δ33
= x1δ11+x2δ22+x3δ33=x1+x2+x3=xi
xi = x'j Qji
となります。i,jは擬標ですので式が整理しやすいように、Qji=Qijとします。そのためには、i=jとすれば良いですね。
xj = x'i Qij
同様の仮定で次式を求めます。
u= xjej= x'je'j
さらに基底ベクトルe'iと内積をとります。
xj (e'i・ej)= x'j(e'i・e'j)
このとき、元の座標系に関する基底ベクトルと、回転したときの座標系に関する基底ベクトルの内積は以下のように
(e'i・ej)=Qij
と定義します。
よって、
xj Qij = x'jδij
さらに、
x'jδij = x1δ11+ x1δ21+ x1δ31+ x2δ12+ x2δ22+ x2δ32+ x3δ13+ x3δ23+ x3δ33
= x1δ11+ x2δ22+x3δ33= x1+ x2+x3= x'i
xj Qij = x'i
となります。
以下の式を、それぞれQjiの形にしましょう。そのためには、Qjiに乗じている成分で偏微分する必要があります。
xj = x'i Qij
xj Qij = x'i
であり、この式を方向余弦と呼びます。方向余弦は、一般のベクトルでも同様の仮定で変換することが出来ます。
さて、ここで次のようなx3軸周りに角度θだけ回転した直角座標系を考えてみましょう。次の図から、
x1/d =cosθ
d = x1/cosθ
y/d=sinθ
y/( x1/cosθ)=sinθ
y= (sinθ/cosθ) x1
b= x2-y= x2-(sinθ/cosθ) x1= (x2cosθ-x1sinθ)/cosθ
x'2/b =cosθ
x'2 = bcosθ=x2cosθ-x1sinθ
a/b= a /{(x2cosθ-x1sinθ)/cosθ}=sinθ
a = sinθ(x2cosθ-x1sinθ)/cosθ
これで、x'1 , x'2を求めることが出来ました。さて、方向余弦の式から以下のように計算できます。
以上の式から具体的に成分をそれぞれ計算します。
これを分かりやすくマトリクス表示します。
以上のマトリクスをx3軸周りの「座標変換マトリクス」と言います。
混同しやすい用語
座標変換マトリクス vs 回転マトリクス
座標変換マトリクスは座標軸の向きを変える操作を表す行列で、方向余弦(lijニcosθij)を成分とし直交行列(LLT=I)の性質を持つ。
回転マトリクスとは本質的に同じものだが、「座標変換」は座標系を変える視点、「回転」はベクトルや物体を回す視点から見た表現の違いである。
方向余弦 vs 方向角
方向余弦lij=cos(xi軸とxj'軸のなす角)は座標変換マトリクスの成分であり、新旧座標軸間の幾何学的関係を直接表す。
方向角(θ)に対して方向余弦はcosθを直接使うため、三角関数の計算なしに座標変換式を行列形式で扱える利点がある。
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験では座標変換マトリクスの理論そのものより、主軸方向の応力(主応力)を求めるための概念的な理解が問われることが多い。
FEM解析では局所座標系から全体座標系への変換に座標変換マトリクスを繰り返し使うため、直交行列の性質(逆行列=転置行列)を覚えておくと計算が大幅に楽になる。