この記事の要点
ルート1:崩壊形に着目せず、柱のみに割増係数を掛けて許容応力度計算(標準せん断力係数Co=0.3に割増)
ルート2:柱梁耐力比Mc/Mg≧1.5を確認(軸力に応じて柱の全塑性モーメントを低減)
ルート3:柱(Mc)・梁(Mg)・パネル(Mp)の全塑性モーメントを算定し、梁崩壊形を確認
STKR材使用時はルート3でも必ず全体崩壊形を確保し、パネル崩壊形判定に用いてはならない
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柱梁接合部は地震エネルギーを吸収する重要な部分です。実際に計算すると分かるのですが、パネルの曲げ耐力は案外大きくばかにできません。ラーメン構造は、柱と梁をダイアフラムというプレートで一体化した構造で、地震力を効率よくエネルギー吸収するには、この「柱梁耐力比」、「梁崩壊形」というキーワードが大事になります。今回は、鉄骨造の計算ルート別、柱梁耐力比や崩壊形式の検討について説明します。
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ルート1の場合、接合部の種類と角型鋼管の種類に応じて、割増係数を別途設定する。
計算ルート1は、比較的小規模な建物に適用される計算手法です。ルート1では、標準せん断力係数Co=0.3に割増して許容応力度計算を行います。靱性に期待する設計は行わず、構造部材の強度を高めることで成り立ちます。
柱梁接合部でも同様の設計理念を持ち、崩壊形には着目しません。しかし、柱が破壊することは建物の崩壊に繋がることから、「柱のみ応力割増」を行います。
繰り返しになりますが、柱のみに割増係数を掛けるのは、柱の破壊が倒壊に直結すること、梁を割増すと梁崩壊を確保しづらくなるためです。
また割増係数は接合部形式と柱の材種で変わります。つまりSTKRかBCRかで係数は異なり、後者の方が割増は小さくなります。さらに、内ダイアフラム形式の割増係数が小さくなります。これは、内ダイアフラム形式の場合、柱が切れることなく、ヒンジ発生が少ないという理由からです。
そういう意味では外ダイアフラムの同様だが、外ダイアフラム形式は大きな変形が起きやすいため内ダイアフラムには含めません。
計算ルート2は2次設計を行いませんが、梁崩壊形を意識した柱梁接合部の検討が必要です。梁の全塑性モーメントMgが柱の全塑性モーメントMcより小さくなることを確認します。具体的には、
Mc/Mg≧1.5
となることを確認します。
Mc/Mgを柱梁耐力比と言います。これを1.5以上満足させるのです。
但し、柱は梁と違って軸力を受けています。軸力に応じて全塑性モーメントは低減させます。実際は、軸力は相対的なので、柱の断面積と強度による比率の軸力比に応じて柱の全塑性モーメントは低減する。
低減係数α=1-4n^2/3 軸力比 [n≦0.5のとき]
低減係数α=4(1-n)/3 軸力比 [n>0.5のとき]
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ルート3は1次設計と2次設計を行います。2次設計は、大地震時の地震力に対して崩壊しないことを目標に設計します。これは、部材の塑性化を利用してエネルギーを効率よく吸収しよう、とするもの。ラーメン構造は柱降伏より梁降伏の方が、地震力を吸収すると言われており、この梁降伏の崩壊形を確認して構造物を設計します。
崩壊形の確認は柱梁耐力比で行います。ルート2と同様ですが、1つ加わったのがパネルの耐力です。つまり3つの全塑性モーメントを算定します。
柱の全塑性モーメントMc
梁の全塑性モーメントMg
パネル部の全塑性モーメントMp
とします。次に1.5Mgと1.3Mpの小さい値を用いて、柱梁耐力比を確認し1以上であれば梁崩壊と判断できます。式は、
Mc/min(1.5Mg, 1.3Mp)
です。ただ建築基準法では、必ずしも梁崩壊を求めていません。柱崩壊でも耐力を満足すれば良いのです。
但し、STKR材を用いるとき、必ず全体崩壊形が確保されるように設計します。このとき、崩壊形の判定に接合部パネル部の崩壊形判定に用いてはいけません。また最下階の柱脚の地震時応力の割増で許容応力度計算を行います。
次回は実際に柱、梁、パネル耐力を算定し崩壊形を確認しましょう。
混同しやすい用語
梁崩壊形と柱崩壊形
地震時に梁が先に降伏する崩壊モードが梁崩壊形で、エネルギー吸収に有利である。柱崩壊形は柱が先に降伏する形式で倒壊リスクが高く、設計上避けるべき形式である。
全塑性モーメント
断面全体が降伏したときの最大曲げモーメントである。許容応力度設計の断面係数×降伏応力とは異なり、柱梁耐力比(Mc/Mg)の算定に用いる値である。
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
内ダイアフラム形式はヒンジ発生が少なく割増係数が小さくなります。ルート2とルート3の柱梁耐力比の式の違い(Mc/Mg≧1.5 vs Mc/min(1.5Mg, 1.3Mp)≧1)をしっかり区別して覚えましょう。