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杭の平均N値の問題点について

自分が疑問に思っていることは、他の人も疑問に思っている、と考えて良い。


しかし年月とともに、その疑問が偏った知識として蓄積され、誤った考えを生みます。今回は、僕が疑問や違和感を覚える構造のルールについて紹介します。


杭の平均N値は本当に上4d下1d??

「?」マークを2つも付けたのは、あえて。昔から不思議でしょうがなかったのです。社会人になって1年目からの疑問でした。


建築基準法では杭の平均N値の取り方を杭先端から上4d、下1dとしています。dは杭径を示しています。要は、杭先端から下側の地盤よりも上側のN値による影響を強く受けるのです。


これは直観的に受け入れられません。杭先端から地盤に伝わる圧力球根が、杭先端とは逆方向に影響しているのでしょうか?


本当に?


杭先端直下のN値を採用するなら理解できるのですが。


60年以上前の式を使う建築業界

もちろん上4d下1dの理論も、適当に決めたわけではありません。1951年、Meyerhofの論文で、杭先端に上載圧を加えた時、クサビ効果で杭側面まで破壊線が影響する、と発表したものです。


この論文では、上3.75d下1dの範囲に破壊線が及ぶ、とした結論で、建築基準法は今でもそれを踏襲しています。


しかし、この論文には問題点が多いことも分かりました。まず、土の体積変化を考慮していないこと。砂をある大きさの箱に入れます。その状態から箱をトントンと叩くと、前の体積より小さくなります。


つまり、Meyerhofの論文では体積変化が起こらないと仮定したゆえ、クサビ効果が杭側面まで及んだと考えられます。


今、Meyerhofの論理は、実験式とも合わず地盤工学会では明確に否定されています(参:http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)。


また、現在では埋め込み杭がほとんどですよね?打ち込み杭ならクサビ効果がハッキリ確認できそうですが、プレボーリングした孔に杭を入れるだけでクサビ効果?


疑問です。



圧倒的支持を受けるVesicの理論

その後、Vesicが新たな理論を発表します。その結果によると、明確なクサビ効果は現れず、圧力球根は下側に大きいことがわかりました。


実験との対応も良いことから、Vesicの理論は正しいだろうと圧倒的支持を得たのです。


上4d下1dではなく、下1〜3dで評価する。

結果、平均N値の取り方は下1〜3dで評価する方法が正しそうです。実は、土木系の基準(道路橋示方書、鉄道建築基準等)では、ほとんどが下側の影響を考慮します。


ではなぜ、建築だけ取り残されているのか?


建築では、建築基準法や行政確認など一般の施主への影響が大きいことに躊躇する傾向があるようです。一方、土木系の基準では各機関の内規の側面が強く、変更が行いやすいのです(参考:http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)。


このままでは建築だけ過去の論文を引張り出して設計をする、とても不合理な業界になってしまいます。


実際に僕も経験があります。杭頭補強筋の定着長さを、昔の規準を引張り出して「こうじゃないのですか?」と怒ってくるのです。


それは何十年も前の規準ですが、未だに活きているのですから問題です。僕が採用した最新の建築学会配筋指針によれば、L2定着で良いことになっています(最後は設計者の判断ですが)。


今回、この記事を書くにあたって、参考文献(http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)を参考にしました。昔から考えていた疑問が氷解し感謝しています。この論文が書かれたのが2000年。筆者が、上記の問題点を提示されてから17年経過。


2015年の黄色本を読むと、今でも「上4d下1d」の平均N値の取り方が明記されています。この業界の体質は、何も変わっていないようです。


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