この記事の要点
杭の平均N値は「上4d下1d」の範囲で平均したN値で、杭先端の地盤支持力算定に使われるが60年以上前の古い算定式に基づく問題点がある。Vesicの理論では下方向1〜3d評価が合理的とされており、従来の平均N値が実際の支持力を過大評価する可能性に注意が必要です。
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杭の平均N値杭の支持力は平均N値が大きく関係します。杭先端のN値を「先端N値」、先端値と他層のN値を平均したものを「平均N値」といいます。今回は、杭の平均N値の意味、計算法、問題点について説明します。
N値の意味、杭の種類は下記が参考になります。
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杭の支持力は平均N値が重要です。平均N値は、N値とは少し違います。WEBの仕様上書けませんが、記号で、Nの頭にバーを引きます(エヌバーと読む)。
杭の平均N値は、杭の先端N値と、先端に近い層のN値を平均した値です。平均N値の計算方法は建築基準法により規定されています。下図をみてください。
杭の平均N値は、
して計算します。dは杭径です。
例えば、杭径が300のとき、上に1.2m、下に0.3mの範囲にあるN値を平均した値が、平均N値です。計算法は後述します。
平均N値は、前述した考え方に基づき計算します。下図をみてください。先端N値が50、上側1.0mの位置ではN値が10です。先端以深はN値が60となります。杭径が300の平均N値を計算します。
杭径が300なので、上に1.2m、下に0.3mの範囲で平均N値を計算します。1.2mの層でN値が10です。下に0.3mの位置では、N値が計測されていません(N値は1.0mごとに計測する)。私なら、先端N値50を採用します。
よって平均N値は
です。
以上、杭の平均N値の意味と計算法を紹介しました。但し、建築基準法の上4d下1dは、問題があるという指摘もあります。
以降、杭の平均N値の問題点を紹介します。
自分が疑問に思っていることは、他の人も疑問に思っている、と考えて良い。
しかし年月とともに、その疑問が偏った知識として蓄積され、誤った考えを生みます。今回は、僕が疑問や違和感を覚える構造のルールについて紹介します。
「?」マークを2つも付けたのは、あえて。昔から不思議でしょうがなかったのです。社会人になって1年目からの疑問でした。
建築基準法では杭の平均N値の取り方を杭先端から上4d、下1dとしています。dは杭径を示しています。要は、杭先端から下側の地盤よりも上側のN値による影響を強く受けるのです。
これは直観的に受け入れられません。杭先端から地盤に伝わる圧力球根が、杭先端とは逆方向に影響しているのでしょうか?
本当に?
杭先端直下のN値を採用するなら理解できるのですが。
もちろん上4d下1dの理論も、適当に決めたわけではありません。1951年、Meyerhofの論文で、杭先端に上載圧を加えた時、クサビ効果で杭側面まで破壊線が影響する、と発表したものです。
この論文では、上3.75d下1dの範囲に破壊線が及ぶ、とした結論で、建築基準法は今でもそれを踏襲しています。
しかし、この論文には問題点が多いことも分かりました。まず、土の体積変化を考慮していないこと。砂をある大きさの箱に入れます。その状態から箱をトントンと叩くと、前の体積より小さくなります。
つまり、Meyerhofの論文では体積変化が起こらないと仮定したゆえ、クサビ効果が杭側面まで及んだと考えられます。
今、Meyerhofの論理は、実験式とも合わず地盤工学会では明確に否定されています(参:http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)。
また、現在では埋め込み杭がほとんどですよね?打ち込み杭ならクサビ効果がハッキリ確認できそうですが、プレボーリングした孔に杭を入れるだけでクサビ効果?
疑問です。
その後、Vesicが新たな理論を発表します。その結果によると、明確なクサビ効果は現れず、圧力球根は下側に大きいことがわかりました。
実験との対応も良いことから、Vesicの理論は正しいだろうと圧倒的支持を得たのです。
結果、平均N値の取り方は下1~3dで評価する方法が正しそうです。実は、土木系の基準(道路橋示方書、鉄道建築基準等)では、ほとんどが下側の影響を考慮します。
ではなぜ、建築だけ取り残されているのか?
建築では、建築基準法や行政確認など一般の施主への影響が大きいことに躊躇する傾向があるようです。一方、土木系の基準では各機関の内規の側面が強く、変更が行いやすいのです(参考:http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)。
このままでは建築だけ過去の論文を引張り出して設計をする、とても不合理な業界になってしまいます。
実際に僕も経験があります。杭頭補強筋の定着長さを、昔の規準を引張り出して「こうじゃないのですか?」と怒ってくるのです。
それは何十年も前の規準ですが、未だに活きているのですから問題です。僕が採用した最新の建築学会配筋指針によれば、L2定着で良いことになっています(最後は設計者の判断ですが)。
今回、この記事を書くにあたって、参考文献(http://www.japanpile.co.jp/ir/uploads/07_9.pdf)を参考にしました。昔から考えていた疑問が氷解し感謝しています。この論文が書かれたのが2000年。筆者が、上記の問題点を提示されてから17年経過。
2015年の黄色本を読むと、今でも「上4d下1d」の平均N値の取り方が明記されています。この業界の体質は、何も変わっていないようです。
混同しやすい用語
「先端N値」と「平均N値」
先端N値は杭先端位置のみのN値。平均N値は杭先端から上4d・下1dの範囲のN値を平均した値で、建築基準法の支持力計算に用いる(dは杭径)。
「打ち込み杭」と「埋め込み杭」
打ち込み杭は杭を地盤に打撃・振動で貫入する工法。埋め込み杭はプレボーリングなど地盤を掘削して杭を設置する工法で、現在は埋め込み杭が主流。平均N値の取り方(上4d下1d)は打ち込み杭時代の理論に基づいている。
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築基準法の平均N値の取り方(上4d下1d)は1951年のMeyerhofの論文に基づいており、現在は問題点も指摘されています。土木系基準では下側の影響を重視する評価が主流で、建築業界でも見直しが期待されます。