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水平地盤反力係数は、地震時における杭の設計で大切です。一級建築士の問題でも度々出題されますよね。
水平地盤反力係数を一言でいうなら「地震時水平方向の地盤の固さ(地盤のバネ)」です。
水平地盤反力係数を本当に理解するのは結構大変です。今回は、そんな水平地盤反力係数について説明します。
水平地盤反力係数は、孔内水平載荷試験により測定します。孔内水平載荷試験は下記が参考になります。
水平地盤反力係数を一言でいうなら「地震時水平方向の地盤の固さ(地盤のバネ)」です。この説明は間違っていないのですが、もう少し詳しく説明します。
杭は地盤の中に埋設する円形の柱です。下図をみてください。
柱や梁と違うのは、杭の周りには「地盤」があることです。地盤は、いわゆるクッション材の役割をします。
地震で杭が揺れたとき、地盤が無いよりもあった方が変形は小さくなります。
クッション材の役割を果たす地盤は、当然、「固い」「柔らかい」が層毎に違います。その地盤の「固い」「柔らかい」を表す値が、「地盤反力係数」なのです。
地盤の固さはN値で判断します。N値が大きい方が、水平地盤反力係数は大きくなります。※N値については下記が参考になります。
n値とは?1分でわかる意味、目安、求め方、地盤、n値40や50の地耐力
ただ、N値が大きければ水平地盤反力係数は大きくなるのか、というと必ずしもそうではありません。
下図をみてください。これは大きさの違う杭に、同じ力が作用した状態です(断面図です)。
図をみると杭径の大きい方が、地盤に接する範囲が多いです。
同じ力でも、杭径の大きな方が、地盤に与える影響が大きい(変位が大きい)ので地盤反力係数は小さくなります(相対的に柔らかい)。
逆に杭径の小さい方が、地盤に与える影響範囲が狭いので、水平地盤反力係数は大きくなります(相対的に大きい)。
上記はあくまでも「地盤の固さ」です。杭の固さではありません。杭の固さは、当然杭径の大きな方が固いです。つまり変形は小さくなります。
既に混乱している人もいるかもしれません。
「杭径が大きくなると変形は小さくなるが、地盤に与える影響が大きいので、地盤反力係数は小さくなり変形が大きくなる」
という禅問答のようなやり取りですよね。禅問答(答えが無いようなやり取り)とは、あながち間違いでもありません。
前述した水平地盤反力係数の計算は、収斂計算が必要だからです。こちらは後述します。
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水平地盤反力係数は下式で計算できます。
kho=α×ζ×Eo×B(-3/4)
ここでαは、粘性土α=60、砂質土α=80です。ζは群杭の影響による係数です。Eoは地盤の変形係数です。
Eo=700N(NはN値のこと)、Bは杭径をcmで表したときの無次元化数値です。60cmなら60です。
またkhoを基準水へ地盤反力係数と言いますが、後述する非線形性を考慮しなければ、この値が水平地盤反力係数と同義です。
上記は地盤や杭が線形と仮定したときの計算式です。B(-3/4)は、杭径が大きいほどkhoが小さい値となります。
これは前述した、「杭径が大きいほど水平地盤反力係数が小さくなる」という説明と一致します。
下図はB(-3/4)を縦軸に、Bを横軸にとったグラフです。
確かに杭径の大きな方が、B(-3/4)が小さい。すなわち水平地盤反力係数も小さくなります。
さて、現在では杭や地盤の非線形性を考慮した検討も普通に行います。下式をみてください。
0.0≦y≦0.1のとき kh=3.16×kho
0.1<yのとき kh=kho×y(-1/2)
杭の水平変位が0.1cm以下のとき、0.1以上になるときで計算式が違います。これを具体的にどうやって計算するのでしょうか。下記のリストにまとめました。
以上の面倒な計算をするわけです。当然手計算ではできません。
今回は水平地盤反力係数について説明しました。ややこしい、と思う方でも理解できるよう説明したつもりです。
水平地盤反力係数を一言でいうなら「地震時水平方向の地盤の固さ(地盤のバネ)」です。
特に理解できない理由のほとんどが「杭径が大きいのに、水平地盤反力係数が小さくなる」の部分だと思います。
地盤のこと、杭のこと、分けて考えるようにしましょう。下記も参考にしてください。
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