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鉄筋の定着長さとは、鉄筋がコンクリートから抜け出さないような「埋め込み長さ」のことです。
また、鉄筋がコンクリートから抜け出さないように埋め込むことを「定着」といいます。下図に鉄筋の定着と定着長さの一例を示します。
RC造で鉄筋は引張力を負担する重要な役割を果たしています。例えば、鉄筋1本をコンクリートの塊に突っ込んだ状態を考えてください。
次に鉄筋を引っ張ってみます。このとき、鉄筋には引張力が作用していますが、その引張力がコンクリート部へ伝達されるには、鉄筋とコンクリートが「定着」されている必要があるのです。
定着とは?1分でわかる意味、鉄筋、L2、建築、アンカーボルトとの関係
鉄筋の埋め込みが短い場合と長い場合、どちらの強度が強いでしょうか。明らかに後者だとわかるはずです。
このように、柱や梁部材でも鉄筋の定着はとても重要です。それは、鉄筋が「引張力を伝達する」という能力を発揮するための要因の1つなのです。
構造設計の実務では、定着長さは40dのように(dは鉄筋径)、鉄筋径がわかれば算定できるようになっています。
これは、鉄筋のftやコンクリートのFc、フック付きか否かで30dになったり、25dになったりします。
※鉄筋径は下記が参考になります。
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また、柱や大梁に対する定着と小梁に対する定着長さが違うなど、それなりに複雑です。そのまま暗記するのは結構面倒でとても覚えきれません。
ですから、定着長さの考え方だけ頭に入れておきましょう。
なぜ鉄筋の定着が必要かもっと簡単にいうと「異なる部材(たとえば柱と梁)を一体化させるため」です。
鉄筋コンクリートはコンクリートと鉄筋を組み合わせた材料です。各部材内部には鉄筋を配置しますが、
下図の"ダメな例"のように、各部材の鉄筋が各々の部材の範囲までしか無ければ、柱と梁は一体化されているとは言えません。
鉄筋には応力が生じています。柱に生じる応力を梁に伝達する(または梁から柱へ)ためには、鉄筋が異なる部材にしっかり「定着」して初めて一体化するのです。
下図のように、梁の鉄筋は柱へ、柱の鉄筋は梁へ、互いに定着させることにより一体化を図ります。
また、鉄筋をより定着しやすくするために鉄筋は「異形鉄筋(表面に凹凸やリブが付いた鉄筋)」を用います。
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さて、定着の種類は主に下記の2つがあります。また、直線定着には「フックなし」と「フックあり」の違いがあります。
1. 直線定着(フックなし、フックあり)
2. 折り曲げ定着
直線定着とは、鉄筋を直線に定着することです。より鉄筋の付着性を高めるために、定着させた鉄筋の先端にフックを付けることができます。
鉄筋の先端にフックを付けると、フックなしの場合と比べて鉄筋の定着長さを短くすることが可能です。
フックありの直線定着は、定着起点からフックの折り曲げ開始点までの長さです。フックありの定着長さに「フック部分は含めない」ので注意します。
上記の直線定着の場合、柱や大梁ではフックありでも20d~35dの定着長さが必要です。仮に鉄筋径が19mmの場合、定着長さは380mm~665mm必要になります。
この定着長さを部材断面内に直線定着しようと思っても、部材断面が小さく定着長さが確保できないケースが多くあります。
そこで「折り曲げ定着」を行います。折り曲げ定着は下図に示すように、鉄筋を折り曲げて定着する方法です。
折り曲げ定着は大梁から柱への定着、スラブから小梁の定着などで用いる一般的な定着方法です。
定着とは?1分でわかる意味、鉄筋、L2、建築、アンカーボルトとの関係
鉄筋の定着長さは、鉄筋の材質、コンクリートの設計基準強度Fc、フックの有無、鉄筋径により決定します。
鉄筋の定着長さの一覧は下図の通りです。
下図のように、一言で「定着長さ」といっても種類があり、それなりに複雑で直線定着の場合L1、L2、L3とL1h、L2h、L3hの6通り、折り曲げ定着の場合はLa、Lbの2通りあります。
なお、鉄筋の先端にフックを付ける場合は「h」の記号が付きます。
鉄筋の定着長さ
折り曲げ定着の投影定着長さ
1.La : 梁主筋の柱内折曲げ定着の投影定着長さ 基礎梁、片持梁、片持スラブ含む
2.Lb : 小梁、スラブの上端筋の梁内折曲げ定着の投影定着長さ
上表の通り、鉄筋の定着長さと鉄筋の材質、設計基準強度Fcには下記の共通点があります。
① 鉄筋の定着長さは、コンクリートの設計基準強度Fcが大きいほど「短く」なる
② 鉄筋の定着長さは、鉄筋の材質が高く(高強度に)なるほど「長く」なる
①はFcが大きくなるとコンクリートの付着強度が高くなることが理由です。Fcを大きくすると付着性が高まるため定着長さを短くできます。
なお、鉄筋の定着の始点(起点)は、部材と部材の境界(仕口面)と考えます。
それでは定着長さL1、L2、L3、La、Lbの意味を解説します。
定着長さL1およびL1hは、後述するL2、L2h、L3、L3h以外の直線定着の長さ及びフックあり定着の長さです。
L2、L2hは割裂破壊のおそれないの無い箇所への定着長さ、L3は小梁および床版の下端筋の定着長さと定義されます。L1は継手部の長さでもありますが、L2、L3に該当しない場合はL1とします。
勘違いしやすいですが、L1は必ず継手部の長さになる訳では無く、定着長さとしてL1をとることもあります。
定着長さL2およびL2hは、割裂破壊のおそれないの無い箇所への定着長さです。
定着長さL3およびL3hは、小梁およびスラブの下端筋の直線定着の長さで、基礎耐圧スラブおよびこれを受ける小梁を除きます。
折り曲げ定着の考え方を下記に示します。
・折り曲げた全長でL1またはL2を確保すること
・直線部の定着長さはLa(ただし、梁せいの3/4倍以上)またはLbを確保すること
・折り曲げ部は適切な余長を確保すること
このときLaは梁主筋の柱内折り曲げ定着の投影定着長さ(基礎梁、片持ち梁および片持ちスラブを含む)、
Lbを小梁およびスラブの上端筋の梁内折り曲げ定着の投影定着長さとします(片持ち小梁および片持ちスラブを除く)。La、Lbは下記の通りです。
La、Lbの考え方、全長の取り方、余長の部分を下図に示します。
鉄筋の短期引張強度をftとします。つまり、鉄筋にはこれ以上の応力は入りようがありません(そのときは鉄筋が破断している)。
ですから、ft×at分の力をコンクリートに伝達できれば良いのです。
ではどうやって鉄筋からコンクリートへ力を伝達するのか?この抵抗力として働くのが「付着力」です。※付着の意味は下記も参考になります。
付着とは?1分でわかる意味、読み方、付着強度、定着との違い、建築との関係、付着割裂破壊
まず、鉄筋で伝達可能な力をFと考えます。Fは次のように
F=ft×π×D2/4
です。ftは鉄筋の短期引張強度、Dが鉄筋の直径です。
次に、上記に抵抗する付着力を算定します。付着力をRとすれば、
R=fa×π×D×L
です。気づいたかもしれませんが、Lが鉄筋の定着長さに該当します。両者を等式で結べば、
F=R
ft×π×D2/4=fa×π×D×L
L=(ft×D)/4fa
です。Lを定着長さといいます。
上式から明らかなように、コンクリートと鉄筋の強度が定着長さに関係していることが分かりました。しかし現在、最新の基準では上式を変形した新式で決まります。
定着長さの算定方法は先程説明した通りです。しかし、最新の研究では定着長さは別の式が提案されています。それが、
L=(S×α×ft×D)/10fa
です。新しい式では、分母が10となっています。またαやSという係数が追加されました。
αは横補強筋に関する補正係数。Sは構造部材によって異なる修正係数です。ちなみに、直線定着とフック付き定着で値が異なります。
正直言って、計算式に加わった係数の意味は専門家しか知りえませんが、今までの考え方は変わっていません。
これまで説明した定着長さは、あくまで直線定着です。直線定着とは鉄筋をまっすぐコンクリートに埋め込むこと。
しかし、先端にフックをつけて定着する場合もあります。当然フックをつけた方が付着力は高くなりそうです。
また、フックの角度には様々な種類があり、建築基準法あるいは鉄筋コンクリート造配筋指針で規定されています。フックの詳細な内容は下記の記事が参考になります。
鉄筋コンクリート造配筋指針は、下記が参考になります。
鉄筋コンクリート造配筋指針とは?1分でわかる意味、最新版、目次、かぶり
以前は、フックをつけることで、フック部分で鉄筋強度の1/3を伝達できる、と言われていました。
要するに残りの2ft/3を付着力で伝達するわけです。コレを踏襲するなら次式が得られます。
L=(ft×2/3×D)/4fa=(ft×D)/6fa
フックをつけることで定着長さが6~7割くらいになりました。
実は、RC規準の新式によればフック付きの修正係数は0.7倍するのです。どうやら、その根拠は今も変わっていないようですね。
今回は定着長さと、フック付き定着長さについて説明しました。鉄筋の定着長さとは、鉄筋がコンクリートから抜け出さないような「埋め込み長さ」のことです。
また、鉄筋がコンクリートから抜け出さないように埋め込むことを「定着」といいます。
一度理論を理解すれば、なぜ定着長さが鉄筋径や強度で変わるのかわかって頂けたと思います。下記も参考になります。
定着とは?1分でわかる意味、鉄筋、L2、建築、アンカーボルトとの関係
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