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鉄筋コンクリート造の壁やスラブに開口を設けるとき、必ず開口補強筋が必要です。特に耐震壁に開口を設けるときは、計算により開口補強筋の径や本数が決まります。
今回は、そんな開口補強筋の計算方法と、定着長さについて説明します。
開口部、開口補強材の意味は下記が参考になります。
下図をみてください。開口補強筋とは、開口脇に設ける斜め筋、縦筋、横筋のことです。
開口補強筋には2つの目的があります。1つは開口隅部に入りやすいひび割れの防止。2つめは、耐震壁に作用するせん断力の伝達です。
当然ですが、開口部は力の伝達が行えません。そのため、開口部周りに応力が集中します。また鉄筋コンクリートは、温度により収縮・膨張を繰り返します。
この温度応力が開口部周りに作用するため、ひび割れが発生する原因となります。
ただ温度応力は、地震時応力に比べて小さいです。ひび割れ防止程度なら、開口補強筋も少なくて済むでしょう。※温度応力は下記が参考になります。
温度応力とは?1分でわかる意味、計算、例題、線膨張係数との関係
開口補強筋の計算が必要なのは、耐震壁に開口が空く場合です。計算方法を後述しました。※耐震壁は下記が参考になります。
耐震壁ってなに?すぐに分かる耐震壁の意味と役割、耐力壁との違い
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開口補強筋の必要断面積は、開口により伝達できない斜張力や、開口に生ずる曲げモーメントを元に計算します。
下図は開口のある耐震壁で、水平力(せん断力)Qが作用しています。
さて、耐震壁にせん断力が作用すると菱形に変形します。つまり、斜め方向の力が作用するのと同じことです。
斜張力Tは、開口が無ければ2つのTが釣合い、伝達可能でした。よって、この伝達できない力Tを、開口補強筋により伝えます。
Tは、力の成分の関係から下式となります。
この式は単純に、水平方向の力Qを、斜め方向の力T成分に置き換えただけです。水平方向の壁長さがl、斜め方向の開口長さは(ho+lo)/√2ですから、その比率でTが算出できます。
隅角部に作用する斜張力は、前式の半分の値ですから、
です。
T'に見合う開口補強筋を、開口隅角部に配置します。T'は斜張力ですから、同様の方向に配置した開口補強筋が、より効率的に力を負担します。
斜張力に対して、斜筋だけが有効ではありません。T'を鉛直・水平成分に分解できるように、縦筋と横筋に負担させます。
ただし、T'が斜張力に対して縦筋、横筋は鉛直・水平の鉄筋なので、1/√2の性能しか発揮できません。
以上より、開口補強筋は
を満足するよう設定します。Adは斜め筋、Av、Ahは縦筋と横筋です。また、今回は計算式の説明を省略しますが、開口により生じる付加曲げモーメントも開口補強筋で処理します。
付加曲げモーメントは、開口高さ、開口幅分の壁が変形するためです。
例えば鉛直方向の応力は下式で求められます。
Mは曲げモーメント、Qは設計用せん断力、hoは開口高さです。これは、開口高さ分の柱で反曲点高さが0.5である仮定に基づいています。
上記のMに対して、必要な開口補強筋量を計算します。開口高さ分の柱に曲げが作用していると考えれば、柱せいは上図の「L」です。Lに対して、鉛直方向力Tv分を偶力置換すれば許容曲げモーメントは、下記となります。
M<Maが満足すれば良いのです。Tvは、補強筋の断面積×鉄筋強度で、
です。縦方向の力に対して、縦方向筋が効くのは当然ですが、斜め方向筋もベクトル成分だけ力を負担します。
上記の計算は、開口幅に対しても同様です。
開口補強筋の定着長さは、斜筋、縦筋、横筋の全て、開口から「L1」が基本です。
L1は鉄筋の強度や、設計基準強度で変わります。例えば40d(dは鉄筋の呼び径)以上となるでしょう。
※定着、設計基準強度の意味は下記が参考になります。
定着とは?1分でわかる意味、鉄筋、L2、建築、アンカーボルトとの関係
設計基準強度と品質基準強度の違いと、5分で分かるそれぞれの意味
今回は、開口補強筋の計算方法について考え方を説明しました。実は、そんなに難しい内容ではありません。
ごく単純な理論をもとに、必要鉄筋料の計算が行えます。開口補強筋には、斜め筋が効率的だと覚えておきましょう。
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