この記事の要点
耐震壁とは地震力(水平力)を負担する壁のことで、RC造では「耐力壁」と同義に扱われることが多いが、鉄筋コンクリート構造計算基準では耐震壁・非構造壁・雑壁と明確に区別される。
耐震壁は建物の剛性と耐力を高める重要な構造要素で、配置バランスが悪いと偏心が生じ耐震性能が低下するため、平面計画の段階から均等配置を意識する必要がある。
この記事では、耐震壁とは何か、耐力壁とどう違うのか、EW記号はどのような意味を持つのかを整理します。
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耐震壁という言葉は、一度でも聞いたことがあると思います。耐震壁は「地震力を負担する壁のこと」です。似た用語で耐力壁という言葉もあります。
では耐震壁はどんな意味、特徴、役割があるのか。耐震壁と耐力壁はどのような違いがあるのか。今回は耐震壁について説明します。
難しく考える必要はありません。耐震壁の意味は1つだけ。耐震壁は、
です。これを聞くと、建築の専門家出ない人は不思議に思うかもしれません。
「え?建物の壁って全部が地震に耐えるよう造られているんじゃないの?」と。違います。例えばマンションを例にしましょう。部屋の中にはいくつもの壁があります。
リビングと書斎、寝室を遮る壁。これらは耐震壁ではなく、「雑壁又は間仕切壁」といいます。
雑壁は、耐震壁にはならない(つまり地震力を負担できない)壁です。雑壁には下記の種類があります。
このように、耐震壁にならない雑壁は、梁や柱の一部分に取りついている壁です。前述した雑壁は、開口の脇に設ける壁であり、地震に耐えられません。
※雑壁の詳細、開口の意味は下記が参考になります。
下図を見てください。これはマンション南側面の模式図です。マンションの南面は日当たりを良くするために、大きく窓が開いています。
壁に窓が空いた、残りが鉄筋コンクリート造の壁です。赤字で明記しているように、これらをまとめて雑壁といいます。何となく地震力を負担できなさそう、と思いますよね。
また間仕切壁も耐震壁にはなりません。間仕切壁は、部屋と部屋とを区切るための壁です。
日本でも間仕切壁として、「障子」が使われましたが、それと同じです。間仕切壁に強度は一切なく、斧やハンマーで叩いてしまえば、壊れてしまうほど脆い壁です。
また木造住宅の場合でも、部屋や外壁の全てが耐震壁とは限りません。
木造の場合、耐震壁と雑壁、間仕切壁の違いが分かりにくいですが、耐震壁として地震力を負担する壁は一部でしょう。
※雑壁、間仕切壁、垂れ壁の意味は下記をご覧ください。
垂れ壁とは?役割・防煙区画への使い方と外壁・腰壁・袖壁との違い
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次に耐震壁の特徴と、役割を説明します。まず耐震壁の役割は、「地震力を負担すること」です。
前述したように、地震力を負担するためには壁に大きな開口が空いてはダメです。無開口であるか、小さな開口が空いている場合に限り、耐震壁と認められます。
下図を見てください。
耐震壁は、上図のように開口が無い壁のことです。あるいは小さな開口が空いている壁です。
開口の大きさには規定があり、壁に対して開講の大きさが4割を超えると耐震壁になりません。
以上のように、耐震壁の特徴を纏めると下記のとおりです。
上記2点が、耐震壁の大きな特徴です。開口が大きいと耐震壁になりません。耐震壁になるか判定する指標として、開口周比があります。下記が参考になります。
耐震壁と開口の関係は下記をご覧ください。
耐震壁と開口の関係は?1分でわかる意味、位置、低減率、柱際の開口
では耐震壁は、どう見分けるのでしょうか。まず、前述したように窓やドアの開口が大きく空いている壁は耐震壁ではありません。
マンションでいえば、自分の部屋と隣の部屋とを仕切っている壁。これは耐震壁である可能性が高いです。なぜなら、開口が一切ないからです。
また手でコンコンと叩いた感触が、あまり響かず石を叩いたような音が跳ね返ってきたら鉄筋コンクリート造の壁です。
つまり間仕切壁ではなく、鉄筋コンクリート造の強度がある壁なのです。
前述したように、木造住宅の耐震壁を見分けるのは難しいですが、図面があれば簡単にわかります。
設計図では、耐震壁と、その他の壁を記号で明確に分ける場合が多いからです。耐震壁の場合、下記の記号を用います。
EW〇
EWとは「Earth quake Wall」を略した記号で、耐震壁を意味します。〇の中には壁厚を表すことが多いです。厚さ150ならEW15という書き方ですね。その他の壁は単に、
W〇
とします。もちろん、このような記載方法だけとは限りませんが、耐震壁とその他の壁は明確に分けています。
最後に耐震壁と耐力壁の違いを説明します。インターネットの情報では、耐震壁は耐力壁の一種である、という説明が散見されます。しかし、これは誤りです。結論ですが、
耐力壁=耐震壁
です。どちらも同じ言葉として使います。
まず、建築基準法上、「耐震壁」という言葉は使われていません。木造でも、鉄筋コンクリート造でも「耐力壁」と明記されています。
建築基準法上、耐力壁という言葉の定義は特に無くて、配筋や壁厚などが示されているのみです。木造も同様で、耐力壁の仕様(釘、格子壁、土壁、ブレース、壁倍率など)が示されています。
ただし、具体的な定義はありませんが、耐力壁の仕様や耐力壁の耐力の計算式を読めば、耐力壁とは「地震力を負担する壁」であることは明らかです。
これは「壁量計算」に関連した話ですが、また別の機会に説明します。
では耐震壁という言葉は何なのか。私が調べる限り、耐震壁という言葉は建築基準法に一切でてきません。
その代り、「鉄筋コンクリート構造 計算基準・同解説」では「耐力壁」という言葉が排されて、「耐震壁」に統一されて使われています。
同本では、耐震壁のことを「地震力を負担する壁」として評価し、耐力の計算式や壁量の計算式が提示されています。
以上のように、耐震壁と耐力壁で意味は全く同じことなのです。少なくとも、建築業界では混同して使っている人がほとんどですし、間違いではありません。
ネット上の説明では、「耐力壁は耐震壁および構造的に寄与している全ての壁」という説明が散見されます。
しかし、「構造的に寄与する~」とはどういう意味か、いまいちハッキリしません。
例えば、前述した雑壁も、それ自体は地震力を負担しませんが、柱を固くする効果があり、構造計算ではしっかり考慮します。
よって構造的に寄与します。では、「雑壁=耐力壁か」といわれると疑問が残ります。雑壁はあくまでも雑壁であって、耐力壁とは線引きをすべきかと思います。
その点から、建築基準法は曖昧な表現だと言えますが、鉄筋コンクリート構造計算基準では、「耐震壁」「非構造壁」「雑壁」というように、明確な用語の分類がされており、言葉として理解しやすいでしょう。
少し長くなりましたが、「耐力壁=耐震壁」なんだなぁと覚えてください。さらに前述した理由より、個人的には「耐震壁」の方が明確な意味のように感じます。
混同しやすい用語
耐震壁
地震力などの水平力を主に負担するRC造の壁で、鉄筋コンクリート構造計算基準では構造的に寄与する壁と定義される。
雑壁に対して、耐震壁は構造設計で明示的に水平力負担要素として計算に組み込む壁であり、開口の有無や配置が耐震性能に直接影響する。
雑壁(ざつかべ)
構造設計上は水平力を負担しない非構造の壁として扱う壁。
実際には剛性に影響を与えることがあり、耐震スリットで分離することもある。
耐震壁に対して、雑壁は設計上の非構造部材だが実際には剛性に影響するため、耐震スリットで柱から切り離す処理が必要になる場合がある。
耐震壁の特徴と関連用語を整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 耐震壁(=耐力壁) | 地震力(水平力)を負担する壁 | 無開口または小開口(開口周比4割以下) |
| 雑壁 | 腰壁・垂れ壁・袖壁 | 水平力を負担しないが剛性に影響 |
| 記号(EW) | Earth quake Wallの略 | EW15=壁厚150mm |
今回は、耐震壁について説明しました。耐震壁は、地震力を負担する壁であること、耐震壁と耐力壁の違いが分かって頂けたと思います。
また、似た用語で連層耐震壁があります。マンションなどで採用される耐震壁です。下記も併せて学習しましょう。
耐震壁と開口の関係は?1分でわかる意味、位置、低減率、柱際の開口
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意味を読んで終わりにせず、実際に理解できているかチェックしてみましょう。

試験での問われ方|管理人の一言
建築士試験では耐震壁と耐力壁の関係、連層耐震壁の特徴、開口の耐力低減率などが出題されます。
「耐震壁≒耐力壁」という概念的な近さと、雑壁との違い(構造計算に組み込むかどうか)を整理して覚えましょう。