この記事の要点
マトリクス変位法(トラス編 1/3)では、部材剛性マトリクスの定義と座標変換の考え方を解説する。各部材を局所座標系で定式化するのが基本ステップ。
トラスの各部材は軸力のみを伝達するため、部材剛性マトリクスは2×2または4×4の行列で表される。この考え方が全体解析の出発点。
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この数十年でコンピューターの計算速度は格段に上がりました。
昔は、入力を行って計算を終えるのに1日かかっていた計算機ですが、今では数分いや数十秒で答えが出てきます。
コンピューターで、n次の不静定構造物が劇的に解けるようになった背景には数学的なテクニックも大きく関係しています。それがマトリクス変位法です。
手計算で行うと、ただ面倒なだけの計算なのですが、計算方法が機械的でマシンとの相性が良いのです。
ここではマトリクス変位法を勉強しますが、その前に『部材力と材端力の違い』を説明しました。まずは、これを読んでから次に進みましょう。
さて、部材力と材端力の違いがわかったところで、いよいよ変位法で最も重要となる、剛性マトリクスを求めてみましょう。
下図のように、部材が変形したとします。
よって、部材の変位は以下の式で表します。
また、材端力のつり合いは、
です。b点を基準にしてフックの法則を考えましょう。分からない人はリンクを参照してください。フックの法則から、力と変位の関係は
でした。よって、
ですね。さらに、材端力のつり合い関係から
です。
として、マトリクス形式で書いてみましょう。まず、式を整理すると
ですので、
となります。この剛性kで構成されるマトリクスを剛性マトリクスと呼んでいます。
今回、考えた部材は部材座標系と全体座標系が一致しているため、角度がありませんでした。
しかし、一般的には、部材に角度θが存在し、その傾きを考慮した方程式をたてる必要があります。
さらに、x軸方向の自由度しか考慮していませんでしたので、もっと一般的な部材(角度が存在し、自由度2)に関して剛性マトリクスを求めてみましょう。
混同しやすい用語
変位法(剛性法)
節点変位を未知数として解く方法。剛性マトリクス[K]を用いて[K]{u}={f}を解く。多自由度系の構造解析に広く使われる。
力法(柔軟性法)
節点力(反力)を未知数として解く方法。柔軟性マトリクス[F]を用いる。変位法と力法は双対の関係にある。
部材剛性マトリクス(局所座標系)
個々の部材の両端での力と変位の関係を行列で表したもの。トラス部材では軸力のみ考慮し、2節点×2方向=4×4行列になる。
変換マトリクス([T])
部材座標系(局所)から全体座標系(大域)へ剛性マトリクスを変換するための行列。傾きθが含まれ、[T]ᵀ[k][T]で全体剛性に変換する。
| 条件 | 値 |
|---|---|
| 部材の断面積 | A |
| ヤング係数 | E |
| 部材長さ | L(x軸方向の部材、θ=0°) |
| 自由度 | 各節点2方向(x, y) |
x軸方向(θ=0°)のトラス部材の部材剛性マトリクス[k](局所座標)は:
[k] = (EA/L)×[ 1 −1 ; −1 1 ](2節点×軸方向1自由度 → 2×2行列)
傾きθがある場合は変換マトリクス[T]を用いて、全体座標系の剛性マトリクスは [T]ᵀ[k][T] で求める。
答え:[k] = (EA/L)×[1 −1; −1 1](x軸方向トラス部材の局所剛性マトリクス)
| 項目 | 変位法(剛性法) | 力法(柔軟性法) |
|---|---|---|
| 未知数 | 節点変位{u} | 節点力・余剰反力 |
| 基本式 | [K]{u} = {f} | [F]{f} = {u} |
| 行列 | 剛性マトリクス[K] | 柔軟性マトリクス[F] |
| コンピュータ適性 | 高い(FEMの標準手法) | 不静定次数が大きいと複雑 |
Q. x軸方向のトラス部材の部材剛性マトリクスの大きさは?
A. 2節点×1自由度(軸方向のみ)= 2×2行列。2次元トラス部材(x,y方向各2自由度)では4×4行列になる。
Q. マトリクス変位法で傾いた部材を扱うとき何が必要か?
A. 変換マトリクス[T]が必要。局所座標系での剛性[k]を[T]ᵀ[k][T]で全体座標系に変換してから組み立てる。
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試験での問われ方|管理人の一言
マトリクス変位法はFEMの基礎。一級建築士試験の応用分野では出題頻度は低いが、不静定構造の理解を深めるうえで重要。まず「部材剛性マトリクスとは何か」を理解してから3回の記事を通じて手順を追おう。