この記事の要点
溝形鋼(みぞがたこう)の断面二次モーメントは、強軸方向(Ix)と弱軸方向(Iy)で大きく異なります。
この差を理解することが、溝形鋼を梁や母屋として使うときの設計の基本です。
溝形鋼は断面が非対称なため、単体では曲げ耐力に方向性があります。
2本を背中合わせ(背合せ)にして使うと、断面積や強軸方向のIxはおおむね2本分として考えられます。一方、弱軸方向のIyは、2本の配置間隔による並行軸定理の影響を受けます。
この記事では、溝形鋼の断面性能、断面二次モーメントIx・Iy、断面係数Zx・Zy、背中合わせ材の考え方を整理します。
溝形鋼の断面二次モーメントを下図に示します。
代表的な溝形鋼の断面性能を整理すると下表のようになります。断面二次モーメントは Ix・Iy、断面係数は Zx・Zy で確認します。
| 寸法 A×B | 断面積 cm2 | 単位重量 kg/m | Ix cm4 | Iy cm4 | Zx cm3 | Zy cm3 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 75×40 | 8.818 | 6.92 | 75.9 | 12.4 | 20.2 | 4.54 |
| 100×50 | 11.92 | 9.36 | 189 | 26.9 | 37.8 | 7.82 |
| 125×65 | 17.11 | 13.4 | 424 | 61.8 | 67.8 | 13.4 |
| 150×75 | 23.71 | 18.6 | 861 | 117 | 115 | 22.4 |
| 180×75 | 27.20 | 21.4 | 1380 | 131 | 153 | 24.3 |
上表の数値は代表的な断面性能です。実際の設計では、使用する鋼材メーカーや規格表の値を確認してください。
また、溝形鋼の断面二次モーメントの大まかな値は下記の計算式で算定できます。
ただし注意点として、上式で算定した溝形鋼の断面二次モーメントは、実際の溝形鋼の値(前述の表に示した値)とは異なります。
これは、実際の溝形鋼には曲面部分がある一方で、上図の溝形断面は全て長方形で構成されているからです。
要するに、実際の溝形鋼と計算で用いた断面では「断面形状がやや異なる」のです。
断面二次モーメントの公式、計算方法は下記が参考になります。
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溝形鋼の断面は非対称かつH形鋼と比べて断面性能が低いので、下図のように背中合わせにして用いることも多いです。
たとえば、溝形鋼をブレース材として用いるとき背中合わせにします。
溝形鋼を背中合わせにすると、断面積は2本分になります。また、強軸方向の断面二次モーメント Ix も、基本的には単体の約2倍として考えられます。
一方で、弱軸方向の Iy は単純に2倍とは限りません。2本の溝形鋼の重心位置が離れるため、並行軸定理による A×d2 の影響が加わります。
つまり、背中合わせ材では「何でも2倍」と考えるのではなく、どの軸まわりの断面性能を見るのかを分けて考えることが大切です。
混同しやすい用語
断面二次半径
断面二次モーメントを断面積で割った平方根の値(i=√(I/A))。
断面二次モーメントとは異なり、座屈計算で使う細長比の算定に用いる。
| 方向 | 計算方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 強軸方向(x軸:ウェブ平行方向) | 大矩形 − 欠け部分の小矩形(2つ) | Ixが大きい(曲げに強い方向) |
| 弱軸方向(y軸:ウェブ垂直方向) | フランジ2枚 + ウェブの断面二次モーメントの和 | Iyが小さい(曲げに弱い方向) |
| 背中合わせの場合(2本組) | Ixは2倍、IyはΣ(A×d2)の並行軸定理を使用 | Iyが単体より大幅に増加 |
Q. 溝形鋼(外形100×65mm、ウェブ厚6mm、フランジ厚8mm)の強軸方向Ixを求めよ
A. 全体I = 65×1003/12 ≒ 5.42×106 mm4。
空洞部は、片側幅=(65−6)/2≒29.5mm、高さ=100−8×2=84mmとして計算します。
Ixは、全体の断面二次モーメントから空洞部の断面二次モーメントを差し引いて求めます。
Q. 溝形鋼を2本背中合わせに使うメリットは何か?
A. 弱軸(y軸)方向の断面二次モーメントIyが大幅に増加し、弱軸曲げへの抵抗力が向上する。断面形状が対称になり、ねじりにも強くなる
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試験での問われ方|管理人の一言
試験では、断面二次モーメントの計算手順(大きな長方形から小さな長方形を引く)と、強軸・弱軸の値の大小関係が問われやすい。(一級建築士 頻出:溝形鋼断面二次モーメントの計算手順(大きな長方形から小さな長方形を引く)と強軸・弱軸の大小関係が繰り返し出題)