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溝形鋼の特徴と重量溝形鋼と軽量溝形鋼について

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溝 形 鋼という言葉は一般の方には聞き馴染みがないかもしれません。溝形鋼は下図に示す形の鉄骨部材を言います。

この溝形鋼は構造的に不利な部分もありますが、施工性や納まりが良い接合部を造りやすいので多く使われています。今回は、溝形鋼に注目してその特徴や耐震性について説明しましょう。

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記事を書いた人

ハナダユキヒロ/建築学生が学ぶ「構造力学」

難解な構造力学、建築構造の用語を分かりやすく解説する専門家。高等専門学校在学中から建築学生が学ぶ「構造力学」を運営。その後、国立大学大学院⇒組織設計事務所⇒弊サイト運営に従事している。

著書:「わかる構造力学/工学社」、「わかる構造力学 改訂版/工学社」

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溝形鋼の構造的な特徴

溝形鋼の特徴は、なんといっても独特の形状です。コの字の形状をしています。実は、溝形鋼は構造的に非常に不利な特性があります。難しく言えば、せん断中心が重心位置とズレているということですが、要するに『偏心している』ということです。では、どう偏心しているのでしょうか?


溝形鋼はご覧のように、片方向にコの字をしています。つまり荷重を作用させる位置に注意しないと偏心曲げが作用するのです。

例えばこのように、

荷重が作用したなら簡単に右へ転びそうですし、部材の中心に荷重を作用させても偏心しそうです。このように、溝形鋼に荷重をかける場合注意する必要があります。但し、偏心しているから不安定な部材か?と問われるとそうでもありません。偏心しても良いように設計すれば他の部材と同じように使えます。


しかし、断面性能はH鋼や鋼管に比べて小さいですからスパンが飛んでいる箇所や柱には使えません。

意匠的な特徴

実は、溝形鋼は意匠的なデザインのために構造部材として用いられることもあります。その理由は、『刃が見えること』です。刃とは、溝形鋼のフランジを言います。

フランジの刃を見せることで、フランジの線が強調されシャープな印象を与えることができるからです。そのため、化粧材としても利用されます。

重量溝形鋼と軽量溝形鋼(リップ溝形鋼)の違い

実は、溝形鋼にも2種類あります。これがややこしくて、プロの建築士も間違えている人がいるくらいです。実話ですが、一級建築士をもって数十年キャリアのある建築士が溝形鋼とリップ溝形鋼を間違えていました。


さて、これまで紹介してきた溝形鋼ですが、単に溝形鋼と言う場合、『重量溝形鋼』と言います。これは先ほどから特徴を紹介しました。ではリップ溝形鋼とは何か?こんな形をした溝形鋼のことです。

違いに気づきましたか?そう先端に『唇』が付いたような形をしています。だから『リップ(唇)』なのです。絵がわかりづらいですが、リップ溝形鋼は厚みが2.3、3.2mmと薄い材料です。ですから、軽量溝形鋼とも呼ばれます。


これだけ薄い材料ですから、断面性能は著しく低下します。そのため、構造的な部材で使われることは一切ありません。例えば、壁の下地材や天井下地材として使われます。一方で、構造図や構造計算の第三者チェック審査(適合性判定、確認申請)が無い、小さいアパートや住宅では軽量溝形鋼が使われています。


この安全性は各住宅メーカーが検証していると思うのですが、個人的に構造設計者の私が判断すると『本当に大丈夫かなあ』と思います。あくまで個人的な意見ですが、きちんと構造計算しているかもしれませんし。

まとめ

今回は、溝形鋼について説明しました。溝形鋼は形が非対称なので荷重のかけ方で偏心しやすい部材です。また、溝形鋼には2種類あって軽量溝形鋼と重量溝形鋼があります。特に断らない場合は、溝形鋼=重量溝形鋼でしょう。両者の違いは理解しておきましょうね。

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