この記事の要点
耐震スリットとは、RC造建物の柱際・梁上・梁下などに設ける緩衝材(切り込み)で、雑壁が柱と一体化することで生じる短柱・ねじれを防止する目的で設ける。
構造スリットには完全スリット(柱を雑壁から完全に切り離す)と部分スリット(梁上・梁下のみ切り離す)の2種類があり、設計意図に応じて使い分ける。
この記事では、耐震スリットとは何か、構造スリットとどう違うのか、完全スリットと部分スリットはどう使い分けるのかを整理します。
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耐震スリットは、柱際、梁上、梁下などに設ける緩衝材です。主要な構造部材と、袖壁など(雑壁)を切り離す目的があります。
鉄筋コンクリート造の雑壁は、柱や梁に悪影響を及ぼすからです。※建築物の構造図を見たことがある方は当たり前かもしれません。
RC造の多くは「耐震スリット」が入っています。今回は、耐震スリットの意味、目的、構造スリットとの違い、目地幅、振れ止め筋について説明します。
※構造図は下記が参考になります。
耐震スリットとは、鉄筋コンクリート造の壁の柱端(柱際)、あるいは梁上、梁下などに設ける緩衝材です。
昔の建物では、スリットを設けていませんでしたが、過去に起きた地震被害により、耐震スリットが必要だと判断されたのです。
※柱、梁は下記が参考になります。
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下図が耐震スリットです。このように、鉄筋コンクリートの柱際に設けて、壁と柱又は梁とを切り離します。
「切り離したら危なそう」と思われるかもしれません。しかし、そう単純な話ではありません。
これは前述したように、「雑壁が柱や梁に悪影響を及ぼす」からです。
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耐震スリットを設ける目的は、悪影響を及ぼす雑壁(袖壁、垂れ壁、腰壁)を、柱または梁から切り離すことです。
RC造の建物に耐震スリットを設けることは、1981年に新耐震設計法が施行されて以降です。
当時は、耐震スリットを設けないRC造の建物が設計されてきましたが、
大地震時に設計者が予測していなかった破壊や、腰壁及び垂壁が取り付く柱でせん断破壊が多く起きたのです。
※せん断破壊は下記が参考になります。
これにより、腰壁や垂壁、袖壁のような雑壁も「きちんと柱や梁の断面に評価するべきだ」という認識が広がりました。
しかし、形のまま雑壁を評価して計算すると、ある箇所に応力が集中すること、柱の長さが短くなるために、せん断破壊が起きやすくなります。
なぜ、雑壁が取り付くことで応力が集中するのかというと、部材の剛性が関係しています。
部材の剛性は、材料定数Eと断面形状によって決まります。下図をみてください。
正方形の柱と、正方形の柱+壁(雑壁)のどちらが、固そうですか?X方向では、後者の方が、明らかに断面二次モーメントが大きくなります。
※断面二次モーメント、剛性の意味は下記が参考になります。
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雑壁が取り付くことで、柱長さが短くなり、せん断破壊が起きやすくなります。
下図をみてください。柱に袖壁が付くと、柱の長さは、壁で拘束されている距離と考えられます。
壁で拘束される分、柱の短くなったのです。拘束された部分は、柱は変形できません。
柱が変形できる長さを、「可とう(かとう)長さ」といいます。可とう長さが短い柱を、「短柱」といいます
柱が短くなると、剛性が大きくなります。剛性が大きくなると、そこに力が集中します。
地震が起きると、袖壁で拘束された柱に力が集中し、せん断破壊という脆性破壊(粘りの無い破壊、避けるべき破壊形式)が起きます。
雑壁は、RC造の建物にとって面倒な存在です。いっそのこと全て耐震壁とできればいいのですが、
意匠上の理由から、必ず開口ができるため、そうはいきません。前置きが長くなりましたが、ここで重要となるのが「耐震スリット」です。
耐震スリットの意味は下図のように柱際に設け、「柱と壁が繋がっていない状態にする」ことにあります。構造的に言えば「柱の剛性を大きくしないため」です。
上述のように、雑壁が取り付くことで発生した面倒な剛性の関係が、耐震スリットを設けることで全て解消できます。
以上、現在のRC造の建物では、ほとんどスリットを設けた建物として設計されています。また、開口が空かない壁は耐震壁となるため、スリットを設ける必要はありません。
※開口、耐震壁の意味は下記が参考になります。
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耐震スリットと構造スリットの違い、ですが実は全く同じ意味です。
構造的に必要だから、「構造スリット」という言い方もありますし、耐震上必要だから「耐震スリット」とも言います。
耐震スリットは所定の目地幅が必要です。スリット幅ともいいます。
特に鉛直方向の目地幅は、スリット壁が変形して、柱に衝突しないよう所定の変形角に対する幅を設けます。下記に一例を整理しました。
・鉛直スリットの目地幅 壁高さの1/100など
・水平スリットの目地幅 30mmなど
なお、目地幅については、2015年版建築物の構造関係技術基準解説書p.693-694に明記あります。
ここまで読んで、「スリットで雑壁と柱を切り離したら、フラフラして危ないのでは?」と感じた方がみえるでしょう。
実は、耐震スリットは完全に柱や梁と切り離すのではなく、「振れ止め筋」で留まっています。スリットで切り離した壁が、地震で倒れないようにするためです。
振れ止め筋はD10@400が一般的ですが、計算で本数を求めます。スリット壁に、境界条件、地震力を考慮して求めます。
※簡単に言うと、スラブの計算ですね。スリット部はピン接合とするなど。
計算法は、jscaの鉄筋コンクリート造建築物における構造スリット設計指針で分かりやすく説明しています。
構造スリット設計指針とは?RC造スリットの種類・設計基準と実務での使い方
混同しやすい用語
完全スリット
柱の両側(柱際)に縦スリットを入れ、雑壁を柱から完全に切り離す工法で、雑壁が柱の剛性に影響しない。
部分スリットに対して、完全スリットは柱の短柱化を確実に防止できるが、壁の面外耐力が低下するため振れ止め筋が必要。
部分スリット
梁上または梁下のみに横スリットを入れ、雑壁を梁から部分的に切り離す工法。
完全スリットに対して、部分スリットは雑壁の剛性を一部利用できるが、柱への拘束が残るため短柱化リスクを完全には解消できない。
耐震スリットを整理した表を示します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 目的 | 雑壁と柱・梁を切り離し、短柱化を防ぐ | 偏心率改善にも効果 |
| 完全スリット | 柱・梁から完全に切り離す(水平・垂直ともに) | 地震時変形に追従 |
| 部分スリット | 柱のみ、または梁のみを切り離す | 耐力壁残存の場合 |
今回は、耐震スリットについて説明しました。耐震スリットは、柱際、梁上、梁下などに設ける緩衝材です。
RC造は、雑壁により、突然バランスの悪い建物になるのです。そのバランスの悪さを解消するのが耐震スリットです。
その他にも、増し打ちやパラペットは、剛性が急激に高くなる要因です。下記が参考になります。
増し打ちとは?意味・打増しコンクリート・納まり・詳細図の描き方を解説
パラペットとは?設ける理由・高さの基準と陸屋根・防水層との関係
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