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部分溶け込み溶接は、母材に開先を「部分的に」とり溶け込み溶接する方法です。通常、完全溶け込み溶接が一般的ですが、部材の製作上、どうしても部分溶け込み溶接になる箇所があります。今回は、部分溶け込み溶接の強度計算や、のど厚、開先の考え方、隅肉溶接との違いについて説明します。
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部分溶け込み溶接は、部分的に開先を取り溶け込み溶接する方法です。完全溶け込み溶接が、母材の板厚全面を溶接する一方で、部分溶け込み溶接は「部分的にしか溶接しない」点がポイントです。
下図は、部分溶け込み溶接の一例です。片面は溶接無し、もう片面を溶け込み溶接します。
また、中央部は溶接無しで両面を溶け込み溶接する方法もあります。
部分溶け込み溶接の注意点は、下記の2つです。
・曲げモーメントが作用する箇所には使えない
・引張力が作用する箇所には使えない
こちらは後述します。
溶接が交錯する接合部では、完全溶け込み溶接ができない場合があります。過去、私が設計した物件でも、部分溶け込み溶接にできないか、という話がありました。
ただ、上図をみてわかるように完全溶け込み溶接と部分溶け込み溶接では、強度に大きな差があります。期待していた性能を満足しないため、完全溶け込み溶接から部分溶け込み溶接への置き換えは不可になるケースが多いでしょう。
部分溶け込み溶接は、部分的に溶接するので完全溶け込み溶接に比べ強度が落ちます。下図を例に耐力の計算をしましょう。
軸方向の耐力は下式で計算します。
Na=a×Fy
Naは軸方向耐力、aは上図に示す値(有効のど厚)、Fyは母材の降伏強度です。上式は降伏耐力ですが、引張強度を代入すれば引張耐力です。
せん断耐力は下式です。
Qa=a×Fy/√3
Qaは溶接部の耐力、aは有効のど厚、Fyは母材の降伏強度です。
式自体は簡単ですが、溶接部が部分的なのでaの取り方に注意してください。なお、両面タイプの部分溶け込み溶接は、両側の溶け込み深さを足した値を有効のど厚にしてよいです。
a=a1+a2
さて、部分溶け込み溶接の注意点を詳しく説明します。下図をみてください。
赤部分が溶接部、それ以外は溶接無しです。この板に曲げモーメントが作用すると、どうなるでしょうか。下図のように、溶接無しの箇所がパカッと開くでしょう(引張力の伝達不可)。当然、力を伝達することはできません。
逆に曲げモーメントが逆回りに作用します。
溶接部は引張力を伝達し、溶接無い箇所も鋼板の面と面が接触して、圧縮力を伝達します。このときは、一応部分溶け込み溶接が使えます。ただ、個人的には使うべきでないと思います。
下図の場合でも、引張力が作用する場合も部分溶け込み溶接は使えません。理由は前述した通りで、引張力を伝達できないためです。
両面に部分溶け込み溶接をする場合、これは曲げモーメントが作用する部材にも使えます。
部分溶け込み溶接は、隅肉溶接と同様の使い方をするのが簡単です。下手に曲げモーメントや引張力が作用する箇所に使うと、後で困ります。
部分溶け込み溶接の記号は、各社さまざまです。JISでは、「部分溶け込み溶接」という分類の記号はありません。
開先深さを指定した溶け込み溶接と考えて、完全溶け込み溶接記号の横に、開先深さを特記します。例えば下図のように、
とするなら、開先深さが9mmの溶け込み溶接(部分溶け込み溶接)です。溶接記号は下記が参考になります。
部分溶け込み溶接は隅肉溶接と似ています。曲げモーメントや引張力を負担できないからです。
但し、部分溶け込み溶接は「両面タイプの部分溶け込み溶接」にすれば、耐力は落ちますが曲げモーメント、引張力を負担できます。隅肉溶接との大きな違いです。また、のど厚の考え方が違います。
部分溶け込み溶接は、開先深さ=有効のど厚です。隅肉溶接は、脚長×0.707がのど厚になります。※隅肉溶接、のど厚については下記の記事が参考になります。
部分溶け込み溶接の開先は、完全溶け込み溶接と変わりません。下図のように、開先深さを指定するかどうか注意します。
今回は部分溶け込み溶接について説明しました。部分溶け込み溶接の強度計算、のど厚の考え方が理解頂けたと思います。注意が必要な溶接方法ですが、万が一使うことになったとき、今回の内容を頭の片隅に入れて頂ければと思います。
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