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構造計算ルート1は「建物に十分な耐力を確保し、その代わり、靭性(粘り強さ)は期待しない設計法」です。比較的小規模の建築物に採用されます。また、計算ルート1は構造計算ルートの中で最も簡単な計算です。なお、鉄骨造については計算ルート1-1と1-2に分かれます。
具体的にどのような建物が構造計算ルート1に該当するか整理しました。
・鉄筋コンクリート造(RC造):建物高さが20m以下、かつ、各階の壁量・柱量の確保(Σ2.5αAw+Σ0.7αAc≧ZWAiを満たすこと)、設計用せん断力の割り増し。
・鉄骨造(S造):鉄骨造の場合、計算ルート1のさらに細かい区分として「計算ルート1-1」と「計算ルート1-2」があります。各計算ルートは階数、高さ、軒高、スパン、延べ面積により下記の建物が対象となります。
・計算ルート1-1 ⇒ 階数3以下、高さ13m以下、軒高9m以下、スパン6m以下、延べ面積500平米以下。
・計算ルート1-2 ⇒ 階数2以下、高さ13m以下、軒高9m以下、スパン12m以下、延べ面積500平米以下(平屋建ての場合3000平米以下)
なお、構造計算ルートの意味は、下記が参考になります。
計算ルートは下記の書籍に丁寧にまとめられています。構造設計をする人の必需品です。
構造計算ルート1の考え方は、
・建物に十分な耐力を確保し、その代わり、靭性(粘り強さ)は期待しない設計法
です。地震に対する建物の設計の考え方は主に2つあります。1つは構造計算ルート1のように、建物の耐力を十分に高める一方で、靭性は高めないまま地震力に抵抗する考え方です。建物の耐力を大きくすれば大きな地震力にも抵抗できますが、地震力が耐力を超えると建物の耐力は急激に低下します。
2つめは、建物に粘り強さを持たせて"地震力をいなす"ような考え方です。建物の粘り強さを高めると、地震力により建物はよく変形し、地震の力を受け流します。"粘り強い"ということは、建物が変形しても耐力が急激に低下しないことです。建物に粘り強さを持たせる設計の考え方が「構造計算ルート3」です。
前述した、構造計算ルート1、計算ルート3の考え方の概念図を下図に示します。縦軸は応力、横軸はひずみとします。Bが計算ルート1の建物、Aが計算ルート3の建物です。Aの建物は耐力がそこまで大きく無い代わりに、建物の変形が大きくなっても中々壊れません。一方、Bの建物は耐力はとても大きい代わりに、建物は変形できず、すぐに壊れてしまいます。
さて、構造計算ルート1では、建物に十分な耐力を持たせるために、
・鉄筋コンクリート造 ⇒ 必要な壁量、柱量を確保すること。耐力壁を増やす、柱断面を大きくする
・鉄骨造 ⇒ 標準せん断力係数Co=0.3(通常の1.5倍に割り増し)した地震力に対して設計すること。ブレース構造の場合、保有耐力接合を行うこと
等が求められます。構造計算ルート1の場合、鉄筋コンクリート造、鉄骨造ともに、建物に十分な耐力を確保するため、柱、梁、壁などの断面は大きくなる傾向にあります。鉄骨造の構造計算ルートの詳細は下記が参考になります。
構造計算ルート1-1、1-2の違いを下記に示します。なお、計算ルート1-1、1-2は鉄骨造の構造計算ルートです。
構造計算ルート1-1 ⇒ 建物に作用する地震力を通常の1.5倍に割り増して(ベースシェアー係数Coを0.3とする。通常は0.2)、許容応力度計算を行う。割増しした地震力に耐えられるよう設計することで、建物は固く強くなる。筋かい端部・接合部の破断防止、冷間成形角形鋼管柱の応力割増しが必要。
構造計算ルート1-1 ⇒ 計算ルート1-1よりも制約が増える。ベースシェアーは0.3m偏心率を15/100以下にすること。つまり、計算ルート1-2の設計では、あまり構造的にバランスの悪い、偏った建物を扱うことができない。筋かい端部・接合部の破断防止、冷間成形角形鋼管柱の応力割増し、局部座屈などの防止、柱脚部の破断防止などの計算が必要。
今回は構造計算ルート1について説明しました。構造計算ルート1は「建物に十分な耐力を確保し、その代わり、靭性(粘り強さ)は期待しない設計法」です。比較的小規模の建築物に採用されます。また、計算ルート1は構造計算ルートの中で最も簡単な計算です。なお、鉄骨造については計算ルート1-1と1-2に分かれます。構造計算ルートの意味、計算ルート2の詳細など、下記も参考になります。
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