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スラブは、鉄筋コンクリート造の床または屋根で人や物の重さを支え、地震等の力に抵抗する構造部材です。
私達実務者はほぼ毎日「スラブ」という用語を使います。それだけ当たり前の存在で、かつ、重要な構造部材で、私も幾度となくスラブを設計してきました。
一方で、建築業界に馴染みの無い方は「スラブ」と聞いても良く分からないでしょう。
そこで今回は、私の構造設計の経験を元に、一般の方にもわかりやすく建築用語のスラブを徹底解説します。
「スラブとは何か?」その特徴として絶対に覚えて頂きたいことが2つあります。
下図をみてください。第一に理解すべきは「スラブは水平方向に配置された平らな板状の構造部材」ということです。
板状のため、厚みに対して幅や長さが大きく、平らで水平に配置するので人が歩いたり、物を置くための床(床部材)として用います。
このような板状の部材を「平板(へいばん)、床板(しょうばん)」ともいいます。
元々、スラブは外来語です。英語の、「slab」に由来します。和訳すると平板という意味になります。
構造部材とは「建物の重さ、地震などの外力に抵抗する部材」のことです。
つまり、スラブは内装の仕上がりをよくする類の物ではなく「外力に抵抗すること、人や物の重さを支えるために必要」なのです。
ちなみに、このスラブを90度回転させて配置、すなわち、鉛直方向に配置した板状の構造部材を「壁」といいます。
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余談ですが、建築物を構成する構造部材は「どの方向に配置するか」と「板状または棒状か」で、構造的な役割や特徴、名称が変わります。
第二に理解することは、スラブは鉄筋コンクリート製の構造部材であることです。
スラブは鉄筋コンクリート製のため、コンクリートの内側に異形鉄筋が格子状に配置されます。
なお、下図のように鉄筋を2段で配筋したものを「ダブルクロス、ダブル配筋」といいます。
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鉄筋コンクリート部材は、圧縮力に強いコンクリートと引張力に強い鉄筋を組み合わせた材料です。
スラブに重さが作用すると、スラブを曲げようとする力(曲げモーメント)がスラブ断面内に生じます。
曲げモーメントはスラブを圧縮したり引張ったりします。
このとき、スラブを圧縮する力に対してはコンクリートが抵抗し、スラブを引張る力に対しては鉄筋が抵抗するのです。
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以上の2点を理解すれば「スラブの意味、特徴」としてはバッチリです。さらに、前述したスラブの特徴が理由となり、スラブには下記のメリットがあります。
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スラブは遮音性に優れています。では、なぜスラブの遮音性は高いのでしょうか。理由は下記の2つです。
まずは遮音性の定義を概論しましょう。遮音性とは「音を遮る性質」のことです。
よって、遮音性に優れるほど「音を通しづらい」ことを意味しますので、遮音性の高い部材に囲まれた部屋は「静かである」といえます。
一般に遮音性は「入射音-透過音」の値が大きいほど「遮音性に優れている」と判断できます。
たとえば、ある床に100dbの音が入射して、床を通じて透過した音の大きさが50dbのとき、
100db-50db=50db
となり、50dbが床により遮音された音(透過損失)の大きさと判断できます。
ある材料の遮音性能(透過損失)は下式等により算定できます。
logのカッコ内の値が大きいほど透過損失は大きくなるので、上式より、材料の面密度(kg/m2)が大きいほど、遮音性能は大きくなります。
なお、面密度=密度×板厚で計算します。
下図のように、スラブは板厚分しっかり鉄筋コンクリートが詰まっていること、
鉄筋コンクリートの密度は比較的大きい(2.4g/cm3)ことから、面密度も大きい値となり、すなわち、スラブは遮音性に優れているのです。
鉄筋コンクリート製以外の床の場合、上図のように、色々な部材を組合せて床を構成します。
このとき、部材と部材の間には隙間ができるので吸音材を入れて音を吸収しやすくしますが、
前述したように、遮音性能を高めるためには「質量の大きい材料を用いた方が有利」であるため、スラブの方が遮音性は優れています。
また、面密度を大きくするためには、スラブの厚みを大きくすればよいです。
よって、遮音性の高い分譲マンションの場合、賃貸マンションと比べてスラブ厚は大きくすることも多いです。
例えば一般的な建物のスラブの厚を150mmとするならば、分譲マンションでは180~250mm、さらに厚みを大きくします。スラブ厚は下記が参考になります。
スラブ厚とは?1分でわかる意味、規準、かぶり厚、調べ方、マンション
スラブには下記の種類があります。屋根スラブ、床スラブは、スラブを用いる位置による区分、片持ちスラブとフラットスラブ、二重スラブは構造上の区分です。
それでは詳細に解説します。
屋根スラブとは屋根につかうスラブです。鉄筋コンクリート造では屋根をスラブとします。
なお、鉄骨造は屋根を折板やALC版にしますが、遮音や防水などを考慮してスラブとすることも多いです。
床スラブは、床につかうスラブです。屋根スラブ、床スラブ共に構造的には本質的に同じ構造部材ですが、
屋根、床のどこに配置するかで名称が変わります。下図に屋根スラブと床スラブを示します。
屋根スラブと床スラブの詳細は下記が参考になります。
屋根スラブとは?1分でわかる意味、厚さ、配筋、補強筋との関係
片持ちスラブ、フラットスラブ、二重スラブは構造的に特徴のあるスラブです。違いは見た目で明らかです。片持ちスラブは下図の通りです。
一般的なスラブは、その四辺は梁と一体化しています。
片持ちスラブの場合、一辺(一端)のみが梁と一体化しており、残りの辺はどこにも繋がっていません(自由となる)。
そのため、片持ちスラブは一般的なスラブと比べて、応力やたわみが大きくなります。片持ちスラブの詳細は下記が参考になります。
片持ちスラブとは?長さと厚さの関係、設計方法と計算、変形増大係数は?
フラットスラブは「柱のみと一体化」されたスラブです。
フラットスラブってなに?フラットスラブのメリットとデメリット
二重スラブは、スラブの下にもう1つスラブを設けたものです。スラブを二重にすることで、スラブとスラブの間に空間が生まれます。
この空間を利用して、配管ピット(配管を通す空間)、消火水槽などを設置します。
二重スラブとは?1分でわかる意味、読み方、基礎、水槽、ピット
土間スラブ、土間コンクリートスラブは誤った用語です。誤った用語の割にネット上では散見されることが多いです。
これは土間コンクリートと混同していると思われます。もし、「土間スラブ、土間コンクリートスラブ」と書かれている資料があるのなら、それは間違いだなと思ってください。
なぜ誤りかというと、前述したように「スラブ」は構造部材であることを意味します。
一方で、土間コンクリートは「非構造部材」のため、土間コンクリートスラブという用語自体が矛盾しているのです。
さて、土間コンクリートは、見た目は構造部材に似ていますが、変形や応力が生じることを考えていません。「特に構造計算しない(構造計算の必要がない)」部材です。
下図をみてください。左側が土間コンクリート、右側がスラブです。
土間コンクリートは、沈下の恐れが無い地盤(良い地盤)で採用します。
地盤の沈下が無ければ、土間コンクリートの上に人や物が載っても、土間コンクリート自体に影響無いです。
土間コンクリート下の地盤が、人や物を支えるからです。そのため、土間コンクリートは構造部材と同等の耐力を必要としません。
一方、沈下しやすい地盤に土間コンクリートを置くと、実際に沈下した場合、土間コンクリートが浮いた状態になります。
この上に人や物が載ると、「土間コンクリート自体の耐力」が無いので重さを支えられません。
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スラブは一般に「梁と一体化する構造」とします。このときスラブの四辺のうち少なくとも一辺は梁と一体化することで構造的に成立します。
ただし、構造的に安定させるにはスラブの四辺を梁と一体化する必要があり、一般的に、通常の床スラブ、屋根スラブは下図のような構造とする部分が多いです。
今回はスラブについて説明しました。スラブは、鉄筋コンクリート造の床または屋根で人や物の重さを支え、地震等の力に抵抗する構造部材です。
その他、スラブの設計、配筋、耐荷重などより詳細が知りたい方は下記もご覧ください。
コンクリートスラブの耐荷重は?1分でわかる意味、計算方法、10cmの耐荷重、考え方、土間スラブとの関係
スラブ配筋とは?1分でわかる意味、定着、端部、計算と主筋、配力筋、間隔
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