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津波荷重の算定方法を、例題を通して確認する

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東日本大震災が起きて7年経ちますが、まだ私たちの記憶・脳裏に焼き付いている災害の1つが津波です。


他の地震と違って特筆すべきは、なんといっても津波による被害でしょう。過去に、同規模の地震はありましたが、これほどまでに大きな津波はなかったのです。


しかも被害のほとんどが津波によるもので、その破壊力に構造設計者は虚無感を覚えました。


さて、それから数年経って今では津波避難ビルとか、津波タワーの設計を行うようになりました。津波荷重に対する国の指針もでています。


そこで今回は、地震より巨大な津波荷重を算定してみましょう。

津波荷重の特徴

地震力が建物の自重に起因するものなら、津波荷重は建物の幅が関係しています。それは風荷重に近いものがあります。


ですから、軽い鉄骨造が、津波にとって格好の餌食になるわけです(自重が軽い鉄骨造では、地震力が小さいので部材が細くなりがち、しかし津波荷重は自重に無関係)。

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記事を書いた人

ハナダユキヒロ/建築学生が学ぶ「構造力学」

難解な構造力学、建築構造の用語を分かりやすく解説する専門家。高等専門学校在学中から建築学生が学ぶ「構造力学」を運営。その後、国立大学大学院⇒組織設計事務所⇒弊サイト運営に従事している。

著書:「わかる構造力学/工学社」、「わかる構造力学 改訂版/工学社」

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津波荷重の設定で重要な2つの係数

津波荷重を算定するためには2つの係数が必要です。


1つは、「水深係数α」。これは、想定する津波高さを余分に見込むための係数です。通常2~3倍とします。今回は、3倍を想定します。


次に、「設計用浸水深」です。これは、想定する津波高さで、各自治体や地方の決めがあるので確認しましょう。ここでは、h=4.5mとします。

津波荷重の算定

いよいよ津波荷重を算定します。まずα=3.0倍、h=4.5mより、設計用津波高さ=3.0×4.5=13.5mです。


要は13.5mの津波がくる、と考えるのです。


次に単位体積重量=1.0t/m3、重力加速度=9.81です。これより、津波荷重をSI単位系に直すと、


w=1.0(t/m3)×9.81(m/s2)=10kN/m3


です。


津波荷重の分布形は三角形と仮定します。つまり、下図のように示すことができます。今回は、この津波荷重が3層のラーメン構造物に作用すると考えましょう。

三角形分布の荷重なので、最大値135kN/㎡(13.5m×10)に対して比率で各位置の津波荷重を算定できます。各層の津波荷重は階高の半分~半分までの荷重ですね。あとは、各層に対して、台形荷重を算出すればよいのです。


例えば、屋根レベルの津波荷重は、


(45+60)/2×3.0/2=78.75kN/m


です。同様の要領で各層の津波荷重を算定すると、


3F (60+90)/2×3.0+78.75=304kN/m


2F (90+120)/2×3.0+304=619kN/m


基礎 (120+135)/2×3.0+619=1002kN/m

となります。あとは、建物の幅(津波の受圧幅)をかけることで津波荷重を算定できます。よって、建物の幅が長い建物は不利と言えます。しかも、鉄骨造のように軽ければ、抵抗する重量も小さいので、倒れてしまいます。

まとめ

今回は、津波荷重の算定を行いました。


実際には、避難ビルの1階をピロティにして波力を逃がすとか、上階は外壁をALCにして波力を逃がす設計が行われます。


この低減は80%まで認められていますから、状況に応じて荷重を設定していきたいですね。


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