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すべり係数とは?すべり係数と摩擦係数の違い、すべり耐力とすべり試験

この記事の要点

すべり係数は高力ボルト摩擦接合で用いる係数で、基本値は0.45

すべり係数と摩擦係数は異なる概念で、すべり係数は実験(すべり試験)で求める

摩擦面の処理方法(ブラスト処理など)によってすべり係数が変わる

この記事では、すべり係数とは何か、摩擦係数とどう違うのか、すべり耐力はどう求めるのかを整理します。

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すべり係数は、高力ボルト接合を行う上で大切な値です。

仮に、すべり係数の値が極端に小さいと、接合部はすぐに壊れます。

よって、すべり係数の値は建築基準法などで規定されます。

今回は、そんなすべり係数の意味、摩擦係数との違い、すべり耐力、すべり試験について説明します。


※高力ボルトについては、下記が参考になります。

高力ボルトとは?読み方・種類(F10T・S10T)・規格・摩擦接合の特徴

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すべり係数とは?

すべり係数は、摩擦面(接合面)の「すべりにくさ」を表す値です。すべり耐力の計算式中に含まれるμの値です。下式をみてください。これが、すべり耐力を求める式です。


Rs=μ×N×m


Rsはすべり耐力、μは接合面のすべり係数、Nは初期導入張力、mは摩擦面の数です。


すべり係数は、設計上


μ=0.45以上


の値を確保する必要があります。


なぜ、すべり係数が大切なのか。それは、高力ボルト接合が、摩擦接合により力を伝達するからです。摩擦接合は、摩擦抵抗力(すべり耐力)により外力に抵抗する接合方法です。摩擦接合については下記が参考になります。

摩擦接合と支圧接合の違い


また、摩擦抵抗力ですが厳密な用語は「すべり耐力」です。すべり耐力については後述します。


上式より、すべり係数が大きいほど、すべり耐力も高くなります。すべり係数とは、接合面のすべりにくさを表す値でした。頭の中でイメージして欲しいのですが、表面がツルツル、ザラザラでは、どちらの接合面のμが大きいと思いますか?


答えは、ザラザラした接合面です。よって、すべり耐力を高めるために、接合面はザラザラにします。鋼材は元々ツルツルしています。これをザラザラにする行為を「摩擦面処理」といいます。摩擦面処理の詳細は下記をご覧ください。

摩擦面処理とは?種類・すべり係数・高力ボルト摩擦接合の重要ポイント


すべり係数は0.45以上必要ですが、これを満足するために様々な摩擦面処理の方法があります。

すべり係数と摩擦面処理

摩擦面処理には、下記の方法があります。それぞれの摩擦面処理とすべり係数の関係を示しました。


・赤さび  μ=0.45以上

・ブラスト処理  μ=0.45以上

・溶融亜鉛メッキ上のブラスト処理  μ=0.40以上

・黒皮(摩擦面処理しない)  μ=0.23以上


上記より、一般的に行われる処理方法は、赤さびとブラスト処理です。

溶融亜鉛メッキ上からブラスト処理も可能ですが、すべり係数を満足しません。

よって接合面は、不めっき処理にします。

黒皮は、処理しない状態です。

処理しないと2倍以上もすべり係数が小さいですね。


※ブラスト処理、溶融亜鉛メッキの意味は、下記が参考になります。

ブラスト処理とは?種類・表面粗さの基準と鉄骨防錆・塗装前処理への適用

溶融亜鉛メッキとは?すぐに分かる特徴や規格、溶融亜鉛メッキボルト

すべり係数と摩擦係数の違い

力学的には、すべり係数と摩擦係数は同じ意味です。では、なぜ違う用語でしょうか。


実際の高力ボルト接合部は、接合面がすべり際に鋼板が変形するため、実際の値より小さくなります(鋼板の変形により、ボルト張力が抜ける)。


μ=Rs/N


ですから、すべり耐力Rsが違えば、μの値も変わります(m=1とする)。摩擦係数が理論的な値ですが、μは計算により算定されます。若干、意味合いが異なる訳です。よって物理的な意味の摩擦係数と分けるため、すべり係数が定義されています。


※高力ボルト接合の詳細は、下記をご覧ください。

高力ボルトとは?読み方・種類(F10T・S10T)・規格・摩擦接合の特徴

すべり係数とすべり耐力の関係

すべり係数とすべり耐力は、下式の関係でした。


Rs=μ×N


以上より、すべり耐力は、すべり係数と初期導入張力の積で計算します。すべり係数が大きいほど、すべり耐力も大きくなります。


下図をみてください。これは、高力ボルト接合を示しています。


摩擦接合


外力がすべり耐力より小さい間は、線形的に荷重と変形は増加します。


接合部の荷重変位関係


その後、外力がある値を超えた時、接合面が滑ります。接合面が滑ると、ボルト孔にあたり孔壁とボルト軸の支圧により耐力が増加します。接合面が滑ったときの値を、すべり耐力といいます。


摩擦接合は、すべった後の耐力を考慮しませんが、下図のように耐力は上昇します。


荷重変位関係

すべり係数試験とは

前述したように、すべり係数は理論的な値ではなくて、接合面のすべり耐力と初期導入張力の比率です。すべり係数試験は、実際にすべり係数を実験により確認しますが、考え方は下記の通りです。


・摩擦接合した試験体の引張試験を行う

・引張試験により得られたすべり耐力を確認

・すべり耐力と初期導入張力の比率から、すべり係数を計算


以上の流れで、実験方法や試験体の大きさ、想定するすべり係数など、こと細かに設定されています。

混同しやすい用語

すべり係数と摩擦係数の違いに注意しましょう。

摩擦係数は物体間の摩擦力を表す一般的な物理量ですが、すべり係数は高力ボルト接合専用の係数で、接合面の処理状態や実験値をもとに定められます。

試験での問われ方|管理人の一言

すべり係数0.45という数値は試験頻出です。

摩擦面の処理(ブラスト処理・赤錆処理など)によって値が変わる点も重要です。

「なぜ0.45なのか」という考え方も理解しておくと応用が効きます。(一級建築士 頻出:すべり係数0.45(赤さびや所定ブラスト処理後)が繰り返し出題)

すべり係数と摩擦面処理の関係を整理した表を示します。

摩擦面処理の方法すべり係数μ備考
赤さび0.45以上一般的な方法
ブラスト処理0.45以上一般的な方法
黒皮(処理なし)0.23以上基準値未満

まとめ

今回は、すべり係数について説明しました。

すべり係数の意味が分かって頂けたと思います。

すべり係数と摩擦係数の違いを理解しましょう。

すべり係数は0.45が基本です。

また、すべり係数を確保するための摩擦面処理の方法も、併せて理解したいですね。

下記が参考になります。

摩擦面処理とは?種類・すべり係数・高力ボルト摩擦接合の重要ポイント

ブラスト処理とは?種類・表面粗さの基準と鉄骨防錆・塗装前処理への適用

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理解度チェック

Q.

すべり係数とは何で、設計上必要な値はいくつですか?

答えを見る

摩擦面(接合面)の「すべりにくさ」を表す値で、すべり耐力Rs=μ×N×m(μはすべり係数、Nは初期導入張力、mは摩擦面の数)のμにあたります。高力ボルト摩擦接合で用い、設計上はμ=0.45以上を確保する必要があります。

Q.

すべり係数と摩擦係数の違いは?

答えを見る

力学的には同じ意味ですが、実際の接合部では接合面がすべる際に鋼板が変形してボルト張力が抜けるため、実際の値が理論値より小さくなります。すべり係数はμ=Rs/Nのように計算で算定される値で、理論的な摩擦係数と区別して定義されています。摩擦面処理(赤さび・ブラスト処理で0.45以上、黒皮で0.23以上)によって値が変わります。

ハナダユキヒロ

この記事を書いた人

ハナダユキヒロミツメラボ

設計事務所に7年勤務。

2010年より「建築学生が学ぶ構造力学」を運営(16年以上)。

著書「わかる構造力学」「わかる構造力学(改訂版)」(工学社)。

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