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支圧接合と摩擦接合の違いを説明できるでしょうか。鉄骨造では、主要な部材の接合部は高力ボルトしか用いることができません。高力ボルトは、摩擦接合と呼ばれる接合方法を用います。一方、仕上げ材などの構造的に重要でない部材は、中ボルトを用いており、これは支圧接合で留めます。
高力ボルト、中ボルトは下記が参考になります。
中ボルトとは?1分でわかる意味、規格、強度区分、戻り止め、高力ボルト
支圧接合と摩擦接合では、力の伝達メカニズムが全く異なります。そこで今回は、支圧接合と摩擦接合の違いを説明します。
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高力ボルト摩擦接合は下図のように力を伝達します。ボルトにトルクを導入(締め付ける)とボルトに軸力Tが伝わり、その反力Tと板の摩擦係数μをかけたものが摩擦抵抗力Tμです。
すべり係数(摩擦係数)の意味は、下記が参考になります。
すべり係数とは?すべり係数と摩擦係数の違い、すべり耐力とすべり試験
例えば壁に本を、手で押さえつけます。手で押さえていれば、落ちませんよね。このとき、手から壁に向かって抑える力が作用しています。この力が、上記で説明した軸力です。軸力が大きいほど、摩擦抵抗力は大きくなります。
また、μは摩擦係数といって、表面の粗さで決められています。高力ボルトを接合する部材は、摩擦係数が確保できるように、適切な処理を行うのです(ブラスト処理といいます)。
要するに、表面がツルツルした場合と、ザラザラした場合では当然、後者の方が抵抗力が大きくなるはずです。ブラスト処理は下記が参考になります。
ブラスト処理とは?1分でわかる意味、表面粗さ、目的、種類と方法
これを摩擦係数μとして、数値化しています。摩擦接合の場合、μ=0.45以上が必要です。
以上のように、接触面全体で力を伝達するので、ボルト孔欠損による破断は少ないとされています。下図は高力ボルト接合の模式図です。
次に、摩擦接合を行った接合部の荷重変位関係をみてください。このように、最大耐力まで接合部の耐力は上昇します。摩擦接合は、その後摩擦面が滑って、支圧接合に移行します。
但し、接合部の設計では支圧耐力は考慮せず、あくまでも摩擦耐力のみでボルト本数等決定されます。
前述した摩擦接合には、下記の利点があります。
・ボルト孔周辺の摩擦力で力を伝達するため、ボルト孔欠損による破断は生じにくい。
・ボルト、ナット、ワッシャーは適切なボルト張力が得られるように製品管理されているので、安定した強度を得る。
・ボルト軸にせん断力、支圧力が作用しないためボルト張力は変化せず疲労強度が高い。
・外力に対して滑りが生じにくく、接合部の剛性が高い。
以上のように、摩擦接合は多くの利点がある接合方法です。また、高力ボルトは安定した張力を得られる製品管理がされています。このことから、多くの建物で接合部に用いられています。
主要な部材の接合部は高力ボルトを用いることが法律で義務付けられています。しかし、仕上げ材の受け部材(例えば胴縁など)は中ボルトを使います。ここでは中ボルトを用いた場合について考えてみましょう。
中ボルト、胴縁の設計については、下記が参考になります。
中ボルトとは?1分でわかる意味、規格、強度区分、戻り止め、高力ボルト
普通ボルトは高力ボルトに比べて、締付力も小さく、力の伝達も摩擦→支圧という2段階の挙動を示します。
まず、普通ボルトを用いた場合でも、トルクを導入しているので接触面に摩擦力が生じます。これは
摩擦接合の原理と同様のものです。しかし、締め付け力が弱いために、摩擦面が滑ります。すると、ボルト孔にボルト軸が引っ掛かります。以上の現象を図で確認します、下の平面図を見てください。
以上の現象を荷重変位関係で考えます。
図のように摩擦力で耐力が上昇し、その後、支圧力で耐力が上昇するのです。
今回は、支圧接合と摩擦接合の違いについて説明しました。2つの留め方で、力の伝達メカニズムが違うことを理解しましょう。また、前述したようなボルト接合は「ピン接合」といいます。ピン接合も重要な用語ですから、理解しておきたいですね。下記が参考になります。
また、引張接合という接合方法もあります。下記が参考になります。
引張接合とは?1分でわかる意味、強度と離間耐力、計算、てこ反力
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