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剛性率は
建物の高さ方向(鉛直方向)の剛性(かたさ)のバランス(偏り)を表す値
です。剛性率は建築基準法施行令82条の6第二号イに規定されています。
剛性率は、"建物の平均的な剛性"に対して各階の剛性(かたさ)が平均値と同等か、大きいか、あるいは、小さいか表しており、すなわち、各階の「かたさ」を相対的に評価した値です。言い換えるなら「剛性率は、各階の相対的な変形のしやすさを表す値」ともいえます。
たとえば上図の場合、真ん中の階には耐力壁が無いですね。このとき、真ん中の階は他階と比べて相対的に柔らく(剛性が低い)、剛性率が小さいことを意味します。
勘違いしてはいけない点が、剛性率は「建物の立面的なかたさを"相対的"に評価」している点です。下図のように、全ての階に壁が無い場合、建物としての剛性は低いのですが、全ての階で剛性は同じくらいなので、立面的にかたさのバランスがよく、剛性率は高く、1程度になるでしょう。
後述しますが、剛性率の求め方は「各階のかたさ÷建物の平均的なかたさ」です。つまり、各階のかたさが建物の平均的なかたさに近づくほど「その階は、かたさの偏りがない(建物の平均的なかたさと同じくらい)」と判断できます。
また、ある階のかたさが建物の平均的なかたさより大きい場合「その階は相対的にかたい」と判断でき、逆に、ある階のかたさが建物の平均的なかたさに比べて "非常に小さい"場合、「その階は相対的に柔らかい階」といえます。
なお、平屋建てのように1階のみの建物では、そもそも相対的に比較する他階が無いので、常に剛性率=1となります。剛性率は立面的な剛性のバランスを評価する値なので、平屋建ての建物の場合、"そもそも剛性率を評価する必要は無い"とも言えます。
剛性率の記号はRsで表します。「剛性率=各階のかたさ÷建物の平均的なかたさ」で計算できるので、剛性率Rsが1と同等、1超、1未満の場合で、下記のことが言えます。
・剛性率Rs=1の階:その階は建物の平均的なかたさと同じくらい
・剛性率Rs<1(Rsが1より小さい)の階:その階は建物の平均的なかたさよりも"柔らかい"。建物全体からみて変形しやすい(変形が小さい)階
・剛性率Rs>1(Rsが1より大きい)の階:その階は建物の平均的なかたさよりも"かたい"。建物全体からみて変形しにくい(変形が大きい)階
その他、剛性率に関して、H19国住指1335号では下記が規定されています。
・不整形な建築物について、剛床過程が成り立つ場合、層間変位を剛心一で計算することができる。
・剛床仮定が成り立たない場合には、立体解析等の方法に基づき行い、層せん断力の作用位置である重心位置の層間変位を用いることができる。
前述した剛性率の知識を元に、5階建ての建物の耐震性について考えます。下図をみてください。5階建ての建物があります。地震が起きると揺れますが、均一に揺れるとは限りません。階毎に剛性(固さ)が異なるからです(つまり平屋建てなら剛性率は関係ありません。1階しかないからです)。
剛性率のイメージを付けて頂くために、もう2つほど例を示しましょう。下図をみてください。1階に耐震壁があります。耐震壁はラーメン構造と比べると、圧倒的に固く(剛性が高い)変形が小さい部材ですよね。その他はラーメン構造です。この建物が地震で揺れると何が起きるでしょうか。
上図の建物に地震が起きると、1階は変形しませんが他階が普通よりも大きく変形します。これを鞭振り現象とも言います。鞭は先端が柔らかいほど、速く振れます。例にした建物は、階の固さを相対的に見た時、1階に比べて他階がとても柔らかくなっていますね。そのため、鞭のように上階は良く揺れるのです。
もう1つ例を示します。これは、2階以外が耐震壁で、2階はラーメン構造の場合です。地震時、この建物に何が起きるでしょうか。
上図の場合、地震が起きると2階の変形が大きくなります。2階以外は、耐震壁のため揺れは小さいですよね。柔らかい2階に変形が集中すると、当然、作用する応力も大きくなるので、被害が大きくなります。
以上のように、いくら耐震壁を設けていても階毎に固さが違えば、揺れも異なります。さらに柔らかい層は、変形が集中します。よって、階毎の固さはなるべく均等であるべきです。剛性率とは、前述している「階毎の固さ」を表した値です。例えば、2番目の例図でいえば、
・1、3、4、5回の剛性率 1.0
・2階の剛性率 0.5
といった数値で表します。実際の剛性率は、1以上の値になることもありますし、0.5よりも小さいこともあります(もちろん0.5という値は前述した理由より許されません)。
ただ上記をみれば、なんとなく2階が柔らかそうだなと理解して頂けると思います。
前述したように、剛性率は階毎で均一な値になることが望ましいです。もちろん、全て同じ値は難しいので、建築基準法では下記の基準が設けられています。
剛性率=0.6以上を満足すること(満足しない場合は、建物の耐力を割増すこと)
0.6という数値は、これまでの地震被害から得られた知見、研究結果により定められました。各階で、剛性率0.6を満足していれば、「とりあえずバランスの良い建物」と建築基準法では判断しています。
また、剛性率が0.6を下回ったとしても、下回ったことによる割増係数を考慮した必要保有水平耐力を、建物の耐力(保有水平耐力)が満足していればOKです。必要保有水平耐力と保有水平耐力を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
必要保有水平耐力の算定方法と意味がわかる、たった3つのポイント
剛性率Rsの計算方法を下記に示します。
rs:各階の層間編計画の逆数
rsバー:rsの相加平均
具体例として、2階建ての建物の剛性率を計算します。各階の層間変位δ1、δ2、階高をh1、h2とすれば、層間変形角r1、r2は
です。上記の逆数は
です。上記の相加平均は
より、剛性率は
になります。
剛性率と偏心率の違いを下記に示します。
・剛性率 ⇒ 建物の立面的な剛性のバランス(かたさの偏り)を表す値
・偏心率 ⇒ 建物の平面的な剛性のバランス(かたさの偏り)を表す値
今回は、剛性率について説明しました。剛性率は建物の立面的な剛性のバランスを表す値です。剛性率は、建物の平均的な剛性に対して各階の剛性(かたさ)が平均値と同等か、大きい、あるいは、小さいか表しており、すなわち、各階の「かたさ」を相対的に評価した値です。言い換えるなら「剛性率は、各階の相対的な変形のしやすさを表す値」ともいえます。剛性、層間層間変形角の詳細は下記が参考になります。
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