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剛性率とは、建物の高さ方向の剛性(かたさ)のバランス(偏り)を表す指標です。各階の剛性率の大小は、各階の変形のしやすさ(柔らかさ)を表しており
と判断できます。
上図のように、剛性率の小さい階では変形が大きく、その分、被害も大きくなります。そのため、剛性率の値は極端に小さくならないよう
とする制限があります。
今回は剛性率の意味、計算方法、偏心率との違い等について説明します。偏心率の詳細は下記が参考になります。
剛性率は
です。
各階の剛性率の大小は、各階の変形のしやすさを表しており
となります。
剛性率に関する重要項目を下記に整理しました。
上記について詳しく解説します。
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剛性率の意味を詳しく解説します。
剛性率は、"建物の平均的な剛性"に対して各階の剛性(かたさ)が平均値と同等か、大きいか、あるいは、小さいか表しています。
すなわち、各階の「かたさ」を相対的に評価した値です。
言い換えるなら
ともいえます。
たとえば上図の建物では、真ん中の階には耐力壁が無いですね。このとき、真ん中の階は他階と比べて相対的に柔らく(剛性が低い)、剛性率が小さいことを意味します。
勘違いしてはいけない点は
ことです。
下図のように、全ての階に壁が無い場合、建物としての剛性は低いのですが、全ての階で剛性は同じくらいなので、立面的にかたさのバランスがよく、剛性率は高く(1程度)なるでしょう。
剛性率の記号はRsで表します。
で計算できるので、剛性率Rsが1と同等、1超、1未満の意味するところは、下記のように整理できます。
その他、剛性率に関して、H19国住指1335号では下記が規定されています。
後述しますが、剛性率の求め方は「各階のかたさ÷建物の平均的なかたさ」です。
つまり
と判断できます。また
といえます。
なお、平屋建てのように1階のみの建物では、そもそも相対的に比較する他階が無いので、常に剛性率=1となります。
剛性率は立面的な剛性のバランスを評価する値なので、平屋建ての建物の場合、"そもそも剛性率を評価する必要は無い"とも言えます。
剛性率の知識があれば、建物の高さ方向の耐震性の理解が深まります。
下図をみてください。5階建ての建物があります。地震が起きると揺れますが、均一に揺れるとは限りません。
階毎に剛性(固さ)が異なるからです(つまり平屋建てなら剛性率は関係ありません。1階しかないからです)。
剛性率のイメージを付けて頂くために、もう2つほど例を示しましょう。
下図をみてください。1階に耐震壁があります。耐震壁はラーメン構造と比べると、圧倒的に固く(剛性が高い)変形が小さい部材ですよね。
その他はラーメン構造です。この建物が地震で揺れると何が起きるでしょうか。
上図の建物に地震が起きると、1階は変形しませんが他階が普通よりも大きく変形します。
これを鞭振り現象とも言います。鞭は先端が柔らかいほど、速く振れます。
例にした建物は、階の固さを相対的に見た時、1階に比べて他階がとても柔らかくなっていますね。そのため、鞭のように上階は良く揺れるのです。
もう1つ例を示します。これは、2階以外が耐震壁で、2階はラーメン構造の場合です。地震時、この建物に何が起きるでしょうか。
上図の場合、地震が起きると2階の変形が大きくなります。2階以外は、耐震壁のため揺れは小さいですよね。柔らかい2階に変形が集中すると、当然、作用する応力も大きくなるので、被害が大きくなります。
以上のように、いくら耐震壁を設けていても階毎に固さが違えば、揺れも異なります。さらに柔らかい層は、変形が集中します。
よって、階毎の固さはなるべく均等であるべきです。剛性率とは、前述している「階毎の固さ」を表した値です。
例えば、下図の建物の剛性率でいえば、
といった数値で表します。
実際の剛性率は、1以上の値になることもありますし、0.5よりも小さいこともあります(もちろん0.5という値は前述した理由より許されません)。
ただ上記をみれば、なんとなく2階が柔らかそうだなと理解して頂けると思います。
前述したように、剛性率は階毎で均一な値になることが望ましいです。もちろん、全て同じ値は難しいので、建築基準法では下記の基準が設けられています。
0.6という数値は、これまでの地震被害から得られた知見、研究結果により定められました。
各階で、剛性率0.6を満足していれば、「とりあえずバランスの良い建物」と建築基準法では判断しています。
また、剛性率が0.6を下回ったとしても、下回ったことによる割増係数を考慮した必要保有水平耐力を、建物の耐力(保有水平耐力)が満足していればOKです。
必要保有水平耐力と保有水平耐力を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
必要保有水平耐力の算定方法と意味がわかる、たった3つのポイント
剛性率Rsの計算方法は建築基準法施行令82条の6第二号イに明記されています。
剛性率Rsの計算方法を下記に示します。
rs:各階の層間編計画の逆数
rsバー:rsの相加平均
具体例として、2階建ての建物の剛性率を計算します。各階の層間変位δ1、δ2、階高をh1、h2とすれば、層間変形角r1、r2は
です。上記の逆数は
です。上記の相加平均は
より、剛性率は
になります。
剛性率と偏心率の違いを下記に示します。
・剛性率 ⇒ 建物の立面的な剛性のバランス(かたさの偏り)を表す値
・偏心率 ⇒ 建物の平面的な剛性のバランス(かたさの偏り)を表す値
今回は、剛性率について説明しました。剛性率は建物の立面的な剛性のバランスを表す値です。
剛性率は、建物の平均的な剛性に対して各階の剛性(かたさ)が平均値と同等か、大きい、あるいは、小さいか表しています。
つまり、各階の「かたさ」を相対的に評価した値です。言い換えるなら「剛性率は、各階の相対的な変形のしやすさを表す値」ともいえます。
剛性、層間層間変形角の詳細は下記が参考になります。
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